第27話「捕縛の結界」

 レストルームではユナがねぱたの帰りを待っていた。

 

 「大丈夫なのかなあ…」

 

 過去との対面と言うのはリスポンのリスクとして初めて知る事だ。

 

 ユナは真っ先に以前にザジが言ってたあの台詞が思い浮かんだ!

 

 「三回リスポンしてアホになって帰ってきたんだよ!」

 

 これを思い出したユナは真っ青な面持ちで慌てふためく。

 

 

 「どどどうしよう!、ねぱたさんの知力のマイナス値がカンストしたら一体どうなるんですか?!」

 

 慌てるユナ、唐突に扉を開けて其処に表れた者の声はこう答えた!

 

 「そう…サルになるんじゃよ…」

 

 その言葉にユナの神速の突っ込みが翔る。

 

 「なんでやねえええん!ってザジ君!何てことを言うの!」

 

 声の主はザジだった、ガールズプラモデルでフォッカー(犬ロボ)を抱えて表れていたのだ。

 

 「回復するからお邪魔するよ、とにかく俺らコテンパンにやられちゃってさ」

 

 「あれ?ザジ君は騎士のボディに変わってたんじゃなかったっけ?」

 

 ザジは今はガールズプラモデルに入ってる、ユナは先程の帰還には立ち会ってなかったので不思議に見ていた。

 

 「ああ、実はダルマになるまでボコボコにされちゃってさ」

 

 「ええええ!それは無事で済むんですか?!」

 

 心配するのも当たり前だ、ねぱたはボディの破損がそのまま霊体のダメージになっていた。

 

 ザジもダメージがかなり確認されているが平然としている。

 

 その質問にフォッカーが答える。

 

 「コイツお得意の尻尾切りだ、事前にボディに霊力を割いて霊体の当たりを小さくするらしい」

 

 フォッカーの言葉にザジも返す。

 

 「フォッカーだってドローンから霊体を分離して付属の犬霊にしがみついてるじゃないか」

 

 その言葉にユナははっと思い出す。

 

 「まるでマトリョーシカのボディじゃないですか…」

 

 そのユナの返答にフォッカーもザジに問いかけた。

 

 「そうだなザジ、そこまで行くとノーマルの枠を超えてるな、新たなボディタイプを申請するか?」

 

 「いやいいよ、ねぱた姉さんが火力特化で回避技術あんまり持ってないだけなんだから」

 

 ザジの返答にユナは質問を重ねる。

 

 「それってどういう?」

 

 「特撮ヒーローのフィギアだからね、特撮ヒーローは腕足砕けたら大ケガでしょ?」

 

 ザジがねぱたのダメージの原因を解説する。

 

 「姉さんはきっと特撮とかに思い入れの強いんだよ、威力も半端無い技が多いしさ…あれがダメならこれをって感じで次々必殺技を繰り出せる」

 

 「その代わりダメージのフィードバックも激しいんだ、思い入れかもしれないがデメリットの誓約みたいなモノだと思うよ」

 

 その回答にユナが言葉を返す。

 

 「つまりザジ君はロボットアニメ的なダメージ感覚で、ねぱたさんは特撮的なダメージ感覚なんだ」

 

 「そうとも言う、だけどボディのフィードバックが完全に無い訳じゃないよ、実際今俺の霊体は見掛けは無事っぽく見えるけど…」

 

 ザジはその場で霊体の姿を見せる。

 

 「この通り胸から下の霊体は形だけでボロボロさ」

 

 ザジの霊体は霊力の漏れは無いが、胸から下が赤黒く変色している。

 

 「「全然駄目じゃ無い!尻尾切り仕切れてないよ!早く治さないと!」」

 

 ユナは急に心配になってしょうがないようだ。

 

 「俺も見掛けはこんなだけど犬霊にしがみつきすぎて、犬になっていくワン」

 

 時を同じくしてフォッカーの霊体に犬の耳が生えていた。

 

 「侵食されてるううううう!はよ分離して!」

 

 こうしてザジとフォッカーの回復作業が始まった。

 

 フォッカーは重傷の為にオリジナルのボディとの融合が必要だが、ザジはレストルームの霊力だけで回復可能のようだ。

 

 「もうこれも使う事もないかなあ」

 

 ザジはフォッカーが持ってきたチェインガンの弾を見て言う。

 

 

 だが事態はザジの想像を絶する勢いで急変していた。

 

 「キャンパーの外はどうなんだろうな?もうアイツから逃げ切ったかな?」

 

 暫くして突然キャンパーに衝撃の揺れが襲いかかる。

 

 

 「うわ!」

 

 「きゃあ!」

 

 ザジとユナの驚きの声の後、カンチョウの救難の一声が木霊する。

 

 「「誰か動ける者はいないか!居たらデッキに上がって来てくれ!」」

 

 その声に応じてザジとユナが急いでエレベーターでキャンパーの屋根のデッキに上がると、情況に騒然とした。

 

 

 「何だよ、これは!」

 

 廃村の大通りの道路を走って居た筈のキャンパーだったが、ザジとユナの見た光景は一面に広がる草原だったのである。

 

 「道路から離れたの?ってかここ何処だよ!」

 

 ザジが困惑していた。

 

 「不味いぞ!奴の結界みたいなものに捕まった!」

 

 運転室ではラマーとパルドがGPSを頼りに運転し、見えない道路を何とか走って居た。

 

 「ザジ君!急いでエレベーターに乗って体を変えたまえ!」

 

 「わかった!アイツは何処なんだ!」

 

 カンチョウのブロックトイ人形ボディが場所を示す。

 

 「あれを見たまえ」

 

 其処には巨大霊体がキャンパーのファントムバリアにしがみつく姿があった!

 

 「うわああ!キャンパーが引っ張られてる!」

 

 ユナの驚きに巨大霊体が反応する!

 

 「埴輪ノ末裔!絶対ニ逃ガサヌ!」

 

 「マツロワヌ御霊ノ貴様ラモ、″クニノ″中ニ放リコンデヤル!」

 

 

 カンチョウがその言葉に反応する。

 

 「ザジ君との会話は聞かせてもらってたけど、あなたの体の中の天国ってのは居ごごち悪そうだからお断りするよ」

 

 カンチョウの言葉に巨大霊体が反応する。

 

 「ホザケ!ウヌラハ我等に取リ込マレルダケノ迷イ霊ニ過ギヌノダ!」

 

 

 ユナはその声にはっと気が付く。

 

 「我等?ってこんなのまだ居るの?!」

 

 ユナの質問は巨大霊体に届く。

 

 「ソウダソノ通リダ、埴輪ノ末裔ヨ!我等ハ天ニ上ル為ニ魂ヲ食ラウ!」

 

 

 「我々以外ニモ幾ツカ存在スルダロウ!」

 

 「ダガ我ガ一番ニ上ルノダ!外ノ″根ノクニ″ヨリモ早ク飛ブ!」

 

 そう言うと巨大霊体はキャンパーのバリアに覆い被さる様にしがみついて、バリアに圧力をかけ始めた!

 

 「不味い!我々6人の備蓄霊力でのバリアは、あんな何十人も食ってる相手にそう長く持たないぞ!」

 

 キャンパーのバリアの一部が崩壊すると、巨大霊体の顔がゆっくり覗きこんできた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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