【命の価値】と方程式

「命の価値はみんな同じかな?」

ええ、命の価値はみな同じ。誰の命も同じ価値を持っているわ。

「本当にそうかな?例えば死刑される殺人犯と殺人犯に殺された被害者の命は同じ価値かな?」

うーん。同じ価値だからこそ死刑でバランスが取れるんじゃないかしら。

「じゃあ何人も殺した殺人犯とその被害者たちの命の価値の天秤はどうなる?例えば『4人殺せば死刑』だなんて言われるわけだけど」

4人の命と1人の命が釣り合ってる…?あれ?帽子屋の言ってることはおかしくないかしら。だって、それじゃあ…。

「命の価値がみな平等だとして仮に価値をaと置いてみよう。4人殺しと死刑1人。4a̠=aを満たすaの解はゼロさ。命はみな平等に価値がない」

そんな…。命に価値がないなんてことあるはずがないわ。

命はとても尊いものなんだから。

「ふむ。アリスは命に価値があると思っているんだね」

当り前じゃない。

「じゃあa≠0もちゃんと定義しておこうか」

それでいいわ。

「ふむだとすると面倒なことになるなあ。a≠0で4a=a。これを満たすaは解なしだ」

命の価値に答えはないの?

「少なくともアリスが『命の価値が平等』か『命に価値がある』のどちらかの仮定を捨てない限りはね」

つまりどちらかが間違ってるってことなのかしら?

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