その25 てまみとく

 検索結果……おてまみ


 知らない人間からすればなんぞやですが、お手紙のことです。昔の少女漫画で使われていた表現で、「○○先生にはげましのおてまみを!」なんて書かれていたんだとか。いわゆる死語ですね(死語が死語というネタも死語になりつつあります)。

 ピンと来ていない方に説明しますと『彼ぴっぴ』とかと同じです。数年経つと誰も使いません。

 少女漫画のあらすじを三本書くのは辛いので、原意のお手紙もお題に含みますね。ご容赦を……。


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 A案 かなたちゃんからのおてまみ

 私は少女漫画を描いて生活している。ありがたいことにファンレターなんかを頂くこともあるのだけど、今日担当さんから受け取った中に一通、不思議な手紙が混ざっていた。

 泥のような汚れがついてしまっている便せんで、切手すら貼られていない。しかしよく見ればワンピースを着た女の子のイラストが描かれており、汚れる前はとても可愛らしいデザインの物だったようだ。表には私のペンネームと“おてまみ”なんて懐かしい文字が踊っている。裏返すと下の方にひらがなで『かなた』と書かれていた。

 だいたい作家に対する攻撃的な内容の物を弾くために、ファンレターなどは担当さんが事前に読んでくれるのだが、この手紙は封すら切られていない。もしかするとチェック作業中に見落としてしまったのだろうか。

 書かれているのは私のペンネームであるし、私宛てであることは間違いないだろう。編集部の方々も面白い人たちだが、こんなイタズラはしない。

 私はなぜだかこの手紙がひどく気になって、中を読むことにした。


 B案 宇宙ポスト

 趣味の山登りの最中、変なポストを見かけた。

 懐かしのデザインで、色は真っ黒。ただし近づいてみればカラフルな粒の柄が着いており、たとえるのなら宇宙のようだ。

 しかし他にも変なところがある。それはコイツが山の中、それも登山道ですらない雑木林の中にポツンと立ちつくしていること。私が気分で道を外れ、この険しい坂を上っていなければ出会えなかっただろう。

 こんな場所に手紙を投函しに来る人間などいないのではなかろうか。オブジェにしては作者名も題名も書いていないし……。

 じろりと見渡してみれば、頭の横に一丁前に回収時刻表が貼ってある。時計を見ればちょうどそろそろ昼の回収時間だ。

 うむ、これは待ってみるのも一興だろう。疲れるからといって来なかった女房には、この笑い話を土産にしようか。


 C案 カレコン!

 私、めぐみは普通の女子高生! ……いや、普通より下かな?

 もう高校二年生なのに彼氏ができたこともないし、運動部だから肌も髪も日に焼けちゃってる。ここまではまだ良いんだけど、親の見栄で上流階級の学校に入れられて……ここじゃあ“普通”の敷居が高すぎるよ!

 せめて目立たないようにって隠れて生活してたんだけど、くじ引きで男子ミスコン、通称“カレコン”の審査委員長に選ばれちゃった!?

 この高校でトップを取るってことは上流階級で大きなアドバンテージになるらしくて、翌日から学校中のイケメンたちが私にアピールし始める。もちろん女の子たちからは冷たい視線が……。

 しかも受賞者と付き合わなきゃいけないらしい! 私の学校生活どうなっちゃうのー!?



 以上、三本です。

 少女漫画を読んだことはあるんですが……難しいですね。

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