chapter18 「標準原価計算-シングルプランとパーシャルプラン-」

※前回のchapterのあらすじ


 友だちのピンチヒッターで工場のバイトをした私は、そこでの出来事をお姉と話していて、その工場が「標準原価計算」によって原価管理をしているのではなかろうか、という結論に至った。


 そして、戸山先生の工業簿記の授業で「パーシャルプラン」という言葉が出てきて、それについてお姉に聞こうと思った矢先に玄関のチャイムが鳴って、話は一時中断となっていたのだった。


「ただいま~」


「パパ~おかえりなさい!!」


「父さん!随分帰りが早いみたいだけど、今日って「飲み会」とかじゃなかったっけ!?」


「いや~それが、幹事が飲み会の予約を失敗しちゃってね…いつもは事前予約の特別プランで飲み食いしているから、かなり安く宴会ができるらしいんだが、その事前予約を幹事がし忘れて「席と料理は確保できるけど、料金は『シングルプラン』、つまりお一人様で来た時と同じ料金になるって言われたらしくてな…」


「その、特別プランとシングルプランで、料金はどの位違ってくるの?」


「それが、同じ料理・同じ時間で二千円違うらしいんだ…」


「なるほどね。確かにそれだけ違えば「中止」にもなるわね…」


「まぁ、そういう訳で早く帰ってきた、という訳さ。」


「それにしても、あの飲み屋の「シングルプラン」という言葉を目にしたり耳にしたり、口にしたりするたび、学生時代に勉強した「工業簿記」を思い出すよ…」


「えっ!?もしや、「パーシャルプラン」とも関係があったりして…」


「父さんの記憶が正しければ、シングルプランもパーシャルプランも、工業簿記の「標準原価計算」で採用されるプランのことだったような…」


「父さん…相変わらず記憶力抜群ね♪」


「当たっていたか♪」


「「シングルプラン」では、材料・労務費・製造間接費(経費)を仕掛品勘定に振り替える際、「標準原価カード」に記入された原価を、生産した個数分振り替えるの。」


「さっき(chapter17)話していた「目標カード」のことだよね~」


「そして、実際にかかった原価は材料・労務費・製造間接費(経費)のそれぞれに集約され、「材料消費価格差異」「賃率差異」「製造間接費配賦差異」を計上するの。」


「一方、「パーシャルプラン」の場合、材料・労務費・製造間接費(経費)から、仕掛品には「実際原価」を振り替えるの。」


「えっ!?それだと「○○差異」が発生しないじゃん!!」


「ところが、パーシャルプランの場合、「仕掛品」の借方(左側)には月初仕掛品原価と実際原価が集約されて、貸方(右側)には、製品に振り替えた標準原価と月末仕掛品原価が集約されることになる。」


「つまりは、パーシャルプランの場合は「仕掛品」勘定で差異が発生する、という訳ね!」


「シングルプランの場合に、各原価要素毎に差異が発生したのは、貸借(左右)で「実際」と「標準」が記載されたから、なんだね!で、パーシャルプランの場合は、それが「仕掛品」でしか行われないから、差異は仕掛品でしか発生しない、という訳か!!」


「そういうことよ♪」


”ピンポーン…”


「どうやら母さんが帰って来たみたいだ!」


「早く母さんに夕食を作ってもらおう!」


「そうだね!」


「でもでも!今日の夕食、パパの分まで、ママ買ってきてないかも…」


「仮に買ってきていたとしても、予定よりも多く食材を消費することになるだろうから…」


「私の夕食分は「材料消費価格差異」の不利差異、という訳だな…」


「…」


「パパ…自分で言わなくても…」



chapter19 に続く

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