Day20 🔖言わずにはいられない。
I can't stop loving you.愛さずにはいられない。
Can't Help Falling In Love You.エルビスプレスリーの名曲にもありました。
今回は言わずにはいられない。これが黙っていられますか。におちゃん、あんたによ。
皆さまーー、ハリセンお持ちになりましたかーー!
それっ! 『源氏物語』に行くよっ!
✈︎✈︎✈︎
【別冊】源氏物語 topics44 コンプレックスの果ての略奪
https://kakuyomu.jp/works/1177354054881765812/episodes/1177354054887498387
第52帖
この源氏物語の登場人物にはなにかしら「欠けて」いるものがあります。
それは親だったり、報われない想いだったり、身分だったりもするけれど、皆その欠けているものを埋めようと恋人やパートナーに愛や癒しを求め、与え、支え合って生きていこうとします。
源氏は亡くした母の面影を求めて禁忌を犯しました。その後も成就することのない想いを埋め合わせようと生涯愛を求め続けました。
紫の上は実父や実家から認められず源氏に庇護されました。
明石の御方には身分が低いというコンプレックスがありました。
夕霧や雲居の雁は幼少時に両親がそばにおらずお互いに依存して成長しました。
皆、悲しみや辛さを抱えていました。
薫にも自分が誰の子なのかわからない闇がありました。
実父が柏木だとわかってからは自分が禁断の恋の罪の子だという
対して匂宮です。
父は今上帝、母は中宮。
申し分のない身分に華やかな容姿、抜きんでた才能、誰もが憧れる人気者。
なにもかも恵まれている匂宮には
望めば全てが手に入ったでしょう。叶わないことはなかったでしょう。
そんな匂宮の唯一と言っていいコンプレックスが薫です。
自分の方が身分は上だし、容姿だって教養だって負けていないはず。
それでも薫のことが気になって仕方がありません。
自分にはない知的でクールな性格
誰もが一目置いていて近づきがたい
それに薫は匂宮と対抗する気がないだけに匂宮としては焦ります。争っていないのに負けている感がします。
薫は特に一番を目指しているわけでもなく誰とも争うつもりもありません。
匂宮のことも友人と思っているし、そもそも匂宮は血筋のいい皇族で誰の子かわからない自分とは違うし、容姿も才能も敵わないと思っています。
その薫は生まれつきいい香りが漂うので匂宮は対抗心で人工的に香を焚き染めます。
薫には負けたくない。
すべてにおいて。
匂宮の本心でしょうね。
匂宮の惚れっぽい性格は源氏と同じだと前にも書きました。
ただ陰のある源氏に比べると匂宮は単にカルい男子に見えてしまいます。
誰からも認められたい
誰よりも注目を集めたい
何事も一番でいたい
薫へのライバル意識がそうさせるのでしょうか
そんな薫が匿っている姫君がいるらしい
どうやら中の君も事情は知っているようだ
この前
中の君と薫の仲も疑わしい
俺だけがのけものじゃないか
薫のオンナ、んなこと知ったことか
薫が浮舟を匿った宇治に突然匂宮は乗り込みます。
薫からの横盗り愛だろうが、周囲に説明ができない行動だろうがお構いなし。
浮舟を宇治川の対岸の小屋に連れ出しての密会デート。
今までにも略奪愛エピソードはありました。
源氏と藤壺女御との恋
柏木と女三宮の恋
源氏にも柏木にもそれぞれ相手の
ですからどんなに想っていても奪いたくても奪えないというジレンマがありましたし、禁断の関係ゆえにその後それらの恋は成就しませんでした。
匂宮は浮舟と関係を持ったあとも罪悪感がないどころか我がモノにしようとします。
「薫より俺の方がいいだろ? 俺が迎えに行くから待ってろ」
「薫とは会うなよ? 寝るなよ?」
浮舟を牽制して薫から正面切って奪おうとします。
元々オンナ好きという性格だけに、匂宮が浮舟本人をどこまで愛していたのかも疑問です。薫の恋人だから欲しかったんじゃないの? と思えるのです。
男として負けているような気がする薫の恋人が薫よりも自分になびけば薫に勝てるんじゃないか。
浮舟がオレを選べば薫に勝ったことになるんじゃないか。
妻である中の君ですら薫を信頼しているのは面白くない。
悟りきって澄ましている薫から
匂宮のコンプレックスがゆえの略奪だったのかなと思えてならないのです。
けれども匂宮の直情的な行動が悲劇を生んでしまいました。
匂宮も薫も浮舟を失いました。
正気を失った匂宮は仮病を装って家に引き籠ります。
薫は表面上は平静を装っていましたが匂宮の前で初めて涙を流しました。
その薫の涙を見て匂宮は動揺しました。己が引き起こしたのは恐ろしいほどの悲劇だったと気づいたでしょうか。
またもや叶わなかった薫の恋
対抗心が引き起こした匂宮の略奪
ふたりの想いに引き裂かれた浮舟
千年前の小説で描かれた三角関係は哀しい結末になってしまいました。
大長編源氏物語も残すところ2巻です。
この恋のその後が語られます。
いよいよフィナーレが近づいています。
世界最古の物語の最終回をご一緒に。
どうかお付き合いくださいね。
第52帖【蜻蛉】がらみのエッセイはもう1つあります。言わずにはいられないこの案件……。
◇◇◇
【別冊】源氏物語 topics45 一筆申し上げます。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054881765812/episodes/1177354054887565638
第52帖
第三部の宇治十帖も終盤に入ってきて激動の展開になってきましたね。ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
匂宮が薫の恋人である浮舟との浮気で引き起こした三角関係が哀しい展開になってしまいました。
浮舟は薫とは違うタイプの匂宮にも惹かれてしまいます。けれども薫に申し訳なくて匂宮を選ぶこともできません。
匂宮は強引に我が物にしようとしてきます。
匂宮と浮舟の関係を知った薫はふたりを会わせないようにします。
匂宮と薫、ふたりからのアプローチに心を引き裂かれた浮舟は死を選んでしまいました。
一筆申し上げます。
におちゃん、何がしたかったの?
大切にしている
中の君は若君も産んでくれたよ?
政略結婚だった正室の六の君のことも素敵な女性だって言ってたでしょう?
はたから見ればこれ以上ないくらいに恵まれているのに一体何を求めているの?
匂宮の唯一のコンプレックスである薫への対抗心が引き起こした略奪愛事件じゃないかと前エピソードで書きました。
それに薫が自分の妻の中の君のことを気に入っているのも匂宮は面白くありません。ふたりは浮気してるんじゃないかとさえ疑っています。
「どうせ俺が死んだらすぐに心変わりするんだろ? 薫と結婚できるもんな」
そんなイヤミなことを中の君に言ってしまいます。しかもこのセリフを言ったのは浮舟と浮気して帰ってきたとき。心変わりして浮気してきたのアンタだろーが! 自分が浮気性だから人も同じように浮気っぽいって疑うのでしょうか。一体どの口が言うのよ。
宇治川の小島での密会デートのときは浮舟に
「薫とはどんなデートしてんの?」
と牽制して、薫の正室は身分の高い人だよ、なんて話を聞かせます。宮中での詩会で雰囲気たっぷりに薫が宇治の橋姫のこと(暗に浮舟のこと)を歌に詠んだことはもちろん話しません。分が悪いもんね。
「薫とは寝るなよ?」
いっぱしにヤキモチ焼いているけど、横盗りしてるのアンタだからね? よく浮舟ちゃんにそんな嫌みが言えたもんだわ。
薫は正式な結婚ではないものの、家を用意して恋人として迎えるつもりだけれど、匂宮はそうするつもりもないようなことも思ってるの。
愛人にして匿ってもいいけど、姉さんの女一の宮のところに浮舟を女房として置いておいて逢いたくなったら遊びに行くのもアリだよな、なんて考えたりもするの。(匂宮にはそういうセフレが多数あり)
ほらね、本気だ、運命だなんて盛り上がっているくせに責任をとるつもりはないのよ。
そのくせ嫉妬深くて
「俺が来るまで薫と
なんてことを言ってくるの。だから後から来て無理矢理男女の関係に持ち込んだのはアンタでしょうに……。それでいて薫と会うなってどういうこと? そもそも男子が女子に逢いに通ってくるのに女子側が男子の来訪を断れるわけないでしょうに。
薫のモノを
「絶対に迎えに行く」
これだって浮舟への愛情から言ってる? 薫の大切にしているものをとりあげたいだけじゃない? 薫のモノを隠してしまいたいだけじゃない? 一生浮舟のことを愛そうとか大事にしようとか思った?
あなたの直情的な行動は下心丸出しの「恋」かもしれないけれど、真心(間心)の「愛」ではないでしょ?
この上ない身分に恵まれた容姿に才能
誰だってアナタを認めているし憧れて慕ってる
何が不満なの?
「薫が一番で匂宮は二番」
誰かにそんな風に言われた?
アナタが勝手に思い込んでいるだけでしょう?
匂う兵部卿宮に薫の大将
並びたつ宮中の華
才能豊かで魅力ある公達
クールな薫に華やかな匂宮
充分評価されてるよ。何が不満なの?
役職や給料に身長など
数字で比べることができて順位をつけられるものもあるけれど
人としての素晴らしさやその人の魅力を測るものさしなんてないでしょう?
その測れないものでも優位に立っている証明がほしいの?
その証明のために浮舟を利用したの?
恋人の薫よりも自分を選べば自分の方が薫よりも上だって満足したかったの?
仮に浮舟がアナタになびいたからって誰にそれ自慢するの?
達成感は得られるの?
薫に勝利宣言でもしたいの?
それで気は済むの?
アナタの嫉妬心や対抗心がとてつもない悲劇を生みだしたことになるわよね。
アナタ自身も傷ついたでしょうに。
でもね。
あのふたりの傷は計り知れない。
自分のことしか見えていないだろうけれど
ふたりのこと想いやってごらん?
アナタの親友
初恋の姫に死に別れ
ようやく見つけた彼女と幸せになるはずだったのに
アナタが「千年先まで愛するよ」と口説いた彼女
悩んで苦しんで身を投げて
恋も
愛も
もののあはれも
生きる喜びも
大切な人たちも
手放した
誰の所為だと思う?
そんなにまで欲しかった?
欲しかったのは浮舟じゃなくて
薫への優越感でしょ?
恋人を亡くして涙を流す薫を見て
アナタが得たものって何?
におちゃん
アナタもっと幸せになれるはずよ
すぐ近くにある幸せに気づいて
大切なものを失くす前に気づいてね
大好きなおばあさまから譲られた二条院
その自宅で一緒に暮らしている大切な人
豊かで穏やかな日々の暮らし
紫の上おばあさまや源氏おじいさまに顔向けできないようなことをしないで
匂宮クン、あなたの幸せを祈ります。
あなたも周りの人を幸せにしてあげてください。
パートナーや大切な人の幸せを自身の幸せと感じられるようになってください。
人を護り
人を許し
人を認め
人に与え
人を愛し
人から愛されるように
かしこ
✈︎✈︎✈︎
ふうっ、お疲れ様でした。え? 疲れたのはワタシじゃないかって? 一番吠えていたのはワタシでしたか? すみません。またもや感情的になりすぎましたね。でも、皆さまも若干息が上がっていらっしゃいませんか? 使い古したハリセン、回収しますね。こちらでごみの日に出しておきます。はい? ハリセンの追加発注ですか? そうですね。平安時代ですからね、どのお店にオーダーしたらいいのでしょう? 和紙を入手して夜なべして作成しますか?
もうね、どうしたらいいのでしょうね。いや、もう、どうしようもないのですけれどね。そんなワタシたちの怒りをよそにド阿呆におちゃんはオンナ遊び再開ですってよ。もう一度ハリセンで叩きに行きますか?
ささやかながらホテル六条院カクテルバー『源』にて「におちゃん残念会」でも開きましょうか。いらっしゃるかどうかわかりませんが、におちゃん擁護派もお越しいただいて構いません。大ディベート大会になっちゃいますか?
でも、六条院にはにおちゃんの正室六の君ちゃんもいるのでこっそりね。夕霧くんも女二宮さんのところにいるかもしれませんからね。ひっそりと集まりましょうか。もうワタシたちったら、どこのおばかさんのために気を遣っているのでしょうね。
はあ、皆様お好きなドリンクをご注文なさいましたか? カクテル、ビール、焼酎、ワイン、もちろんノンアルコールもございますよ。未成年の方はお酒はダメですよ。
さあ、明日は【超訳】の続きです。いよいよ『源氏物語』も残すところ2巻です。
明日も『源氏物語』に行こう! ねっ!
『
✨明日の予定
Day21 📖恋の川の流れ着く先
集合時間:悠久の時
集合場所:人生の海
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