Day10 📖【若菜下】吹き荒れる嵐

 おはようございます。お盆休みが終わり今日からお仕事という方も多いでしょうか。お疲れ様です。ん? 「方違え」? 「物忌み」? やってみます? やっちゃいます? グッドラック! 見事成功された方いらっしゃいましたらお知らせくださいね。学生の皆さんもそろそろ夏休みカウントダウンでしょうか。平成最後の夏を満喫してくださいね。 

 さて、今日も源ちゃんツアー2へのご参加ありがとうございます。今回のトリップで長い長い【若菜上】【若菜下】が完結します。

 朱雀院が出家して、女三宮が源氏に嫁いできて、源氏は朧月夜とも復縁して、紫の上は心底傷つきます。女三宮と結婚したかった夕霧の友人柏木は何年も女三宮に片想いしています。紫の上は出家をして源氏の元を離れたいと願うようになりますが源氏はそれを認めてくれません。


 朱雀院の出家という「一滴の雫」がずいぶんと広がってきました。では出かけましょうか。


 さっ! 元気に『源氏物語』に行こっ!


 

 ✈︎✈︎✈︎

第三十五帖【若菜下】

源氏 47歳 紫の上 39歳

女三宮 21歳

明石の御方 38歳 明石女御 19歳

夕霧 26歳 柏木 30歳



【超訳】源氏物語 episode35-3 吹き荒れる嵐の六条院     若菜下

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881684388/episodes/1177354054885620658


―― 柏木の暴走 ――

 柏木は女三宮と結婚できなかったかわりに朱雀院の娘の女二宮と結婚するの。女二宮は女三宮とは違うお母さんで身分の高くない更衣(女御の下の位)だったのね。けれどもやっぱり女三宮を忘れられなくていまだに小侍従に仲を取り持って欲しいって頼んでいるみたいなの。


「知ってる? 今頃になって朱雀院さまは女三宮さまが幸せじゃないらしいから僕と結婚した女二宮さまの方がよかったって言ってるんだよ」

 なんて愚痴を柏木は小侍従にこぼすの。

「今はまあまあのご身分ですけれど、あの頃はとても女三宮さまにつりあわなかったでしょうに」

 小侍従は冷静に受け答えるの。

「もう昔のことはいいよ。それより今六条院は(紫の上さまたちが二条院に移っていて)人が少ないだろ? このチャンスに僕の気持ちだけでも女三宮さまに伝えさせてくれない?」

 柏木はそんなことまで言ってきたの。


 小侍従は冗談じゃないと最初は断ったんだけど、あんまりにも柏木がしつこくて、小侍従も少し考えなしだったから、人の少ない日に女三宮と会わせてあげることにしちゃうのよ。

 絶対に失礼なことをしないで告白をするだけって約束を小侍従としたのに、いざ女三宮と対面すると柏木は舞い上がっちゃうの。女三宮は最初は源氏が来たのかと思うんだけど、その男が時々手紙ラブレターを送ってくる柏木だってわかって怖くなってしまうの。ずっと好きだったとか今でも諦められないとかくどくどと柏木は女三宮に自分の気持ちを伝えるの。女三宮は身分が高いから気位が高いだろうって想像してたんだけど、あまりに可憐で美しかったから柏木は欲望を抑えられなくなっちゃってそのまま一線を越えてしまうのよ。

 猫を女三宮に手渡す夢を見た柏木は、目を覚ますとあのときの猫のおかげで姿を見ることができたと女三宮に話すの。女三宮は姿を見られてしまうという自分の失態ミスのせいでこんなことになったと落ち込むの。これからどうやって源氏に会ったらいいの? って恐ろしくなって泣いてしまうの。


 柏木が女三宮を抱きあげて寝室から出てきて、夜が明けてくるのを眺めるの。


~ おきて行く 空も知られぬ 明けぐれに いづくの露の かかる袖なり ~ 

(目覚めて帰る先もわからない明け暮れだけれど、どうしてだか泣けるんだ)


~ あけぐれの 空にうき身は 消えななん 夢なりけりと 見てもやむべく ~

(明け暮れの空に消えてしまいたいわ。夢だったと思いたいから)


 女三宮の声の美しさに気持ちだけは身体から離れてここに残ってしまいそうだなんて柏木は思いながら帰っていくの。


 家に帰ってから柏木はエライことをしてしまったと部屋に引きこもるの。源氏にバレたらどんな目に遭うのか想像するだけで恐ろしくなってしまうのよね。


 女三宮の様子がヘンだと聞いた源氏は、女三宮のいる六条院にも行くの。自分が紫の上にかかりきりだから女三宮の機嫌が悪いんだろうって思うのよね。それでもやっぱり紫の上の看病の方が優先だからすぐに二条院に帰っちゃうのね。

 一方の柏木はあの夜以来ますます女三宮のことを想っているの。おまけに同じ姉妹でもなんで落ち葉みたいに劣っているひとと結婚したんだろうってヒドイ歌を詠むの。(この歌が所以で女二宮は落ち葉の宮と呼ばれるの)妻の女二宮のことをほったらかしだったから、女二宮も愛されなくてツライ思いをしているのよね。



―― 紫の上の病の原因 ――

 源氏が女三宮のところにいるときに、紫の上が亡くなったって突然二条院から使いが来るの。源氏はもちろん紫の上のもとへ急行するの。周りの女房たちが泣きわめいているんだけど、源氏は紫の上の死を信じないでお坊さんたちに加持祈祷をさせると、物の怪がそこにいた女の子に憑りついて、紫の上は息を吹き返すの。

 物の怪の正体は六条御息所だったの。まだ成仏できないで彷徨っていたら、このまえの琴の演奏会(女楽おんながく)の夜に源氏に悪口を言われたこと(才色兼備だけれど息苦しい)に腹を立てて紫の上に憑りついていたんですって。



―― 女三宮の妊娠 ――

 一方で柏木はいけないこととはわかりつつも女三宮のところを訪ねては逢瀬を重ねているの。そうしているうちに女三宮が懐妊してしまうの。結婚して7~8年経っていて今頃? って源氏は不思議なんだけど、具合の悪そうな女三宮の看病もしてあげるのね。

 そうして源氏が女三宮の傍にいると、当然柏木は女三宮に逢えないので嫉妬に狂って手紙を女三宮に送るの。その手紙を女三宮がきちんと隠しておかなかったから源氏に読まれちゃうのよ。


 これで女三宮の懐妊の真相を知ってしまった源氏なんだけど、もちろんふたりを許すことなんてできないの。でも考えてみれば自分も女院との許されない恋をしているでしょう? ひょっとしたらお父さんの桐壺院は真実を知っていて知らないフリをしていたんじゃ? って考えたりして、昔犯した罪に対するこれが罰なのかって震えるのよね。


 女三宮は源氏に知られてしまったことでお父さんの朱雀院にまで伝わったらどうしたらいいの? と心を乱すの。

 相変わらず柏木は女三宮に逢いたいって小侍従に言ってくるからこの前の手紙で源氏にバレたって知らせるの。もちろん柏木は凍り付いたわね。動揺した柏木は体調を崩してしまって宮中職場にも行かないの。これで自分の一生はダメになるかもしれない、なんてことをしてしまったんだって自分を恨むの。


 源氏は直接言葉では女三宮のことを責めないで、表向きは夫婦の体裁をつくろっているけれど、もちろん今までどおりには女三宮に接することができないの。女三宮が頼りないからこんなことになったんだって思っているの。



―― 朧月夜の出家 ――

 いまだに源氏は朧月夜に惹かれていたけれど、今回の件で朧月夜の惚れっぽい性格も少しイヤに思えてきてたのね。

 そんな朧月夜が出家をしたの。さすがに源氏は動揺して手紙を送るの。


 源氏は紫の上にもこのことを伝えるの。今では親しくつきあえる女友達は朧月夜と朝顔の君だけだったのに尼になっちゃったよと残念がるの。



―― 朱雀院のお祝い ――

 朱雀院のお祝いパーティー(御賀)は源氏一族のゴタゴタ続き(紫の上の病気、女三宮の妊娠)で延び延びになってたから、柏木と女二宮が先に朱雀院にお祝いに行くの。源氏は相変わらず女三宮に冷たい態度でついついイヤミを言ってしまうんだけど、朱雀院のお祝いをようやく12月に行うことにするの。そんな華やかなパーティーの準備に芸事の才能がある柏木がいないのは彼が体調を崩しているからだって世間は考えるんだけど、夕霧だけはもしや過ちを犯したんじゃないかって見当をつけるの。それでもまさかそのことが源氏にバレていることまでは想像しなかったんだけれどね。


 六条院での御賀の準備が忙しくなってくるの。すると二条院で療養していた紫の上も音楽が聴きたくて戻ってくるの。明石の女御もまたお産で帰省してきているの。リハーサルの日には玉鬘もやってきたの。

 源氏はこのリハーサルに柏木に来て欲しいし、いないと周りがヘンに思うだろうから仕方なく柏木を招くんだけど、柏木は体調不良を理由に断ってくるの。

 けれども柏木のお父さん(元頭中将)が強く勧めるので我慢してやってくるの。源氏は表面上は素知らぬフリをして子供達の舞のアドバイスをしてほしいなんて話しかけるんだけど、柏木は動揺してしまうの。それでも控えめながらも行き届いた受け答えに源氏は感心したのよね。柏木も気を取り直して合奏や舞のアドバイスをしてあげたの。

 それから源氏は酔いに任せて柏木にちらっと嫌みを言うの。すると冷たい眼光に射貫かれた柏木はうろたえてしまってパーティーの途中で帰ってしまうの。そしてその後は寝たきりになってしまっちゃうの。


 そんな中、朱雀院の御賀本番を行ったの。皆が柏木を心配しているのに少し気はひけたんだけど、日程が延び延びになっていたので決行したの。一体女三宮は柏木が重病というこの状況をどう思っているんだろうなって源氏は考えるの。

 


~ おきて行く 空も知られぬ 明けぐれに いづくの露の かかる袖なり ~ 

柏木が女三宮に贈った後朝の歌


~ あけぐれの 空にうき身は 消えななん 夢なりけりと 見てもやむべく ~

女三宮の返歌



第三十五帖 若菜下(三)




 ✈︎✈︎✈︎

 長めのトリップお疲れ様でした。大丈夫でしたか?怒涛の展開の【若菜下】を箇条書きにしておきますね。


・女三宮のことが諦められない柏木

・冷泉帝が退位して東宮が即位、明石の女御の皇子が春宮に

・絶望する紫の上とカタチだけ夫婦の源氏と女三宮

・六条院での女子演奏会

・紫の上が出家を願い出るけれど、源氏が断固拒否

・紫の上が倒れる。源氏はつきっきりで看病

・柏木が女二宮と結婚

・柏木が女三宮と密通

・紫の上が息を引き取るが一命をとりとめる

・女三宮が懐妊

・源氏がふたりの密通を知ってイヤミ攻撃

・源氏にバレてしまったことで柏木が寝込む



 柏木の恋狂いに女三宮の懐妊、朧月夜の出家、そして源氏が知る女三宮の不貞の事実。

 朱雀院の出家から始まった【若菜】上下は怒涛の展開でしたね。一滴の雫から広がっていく水紋。水面は波たち嵐を巻き起こしてしまいました。まだまだ大きく展開していきます。


 明日は【若菜下】を受けてのエッセイです。源氏物語に時折みられる法則(?)についてお話します。ボヤキ、ではないです。たぶん。


 明日も『源氏物語』に出かけましょうね。ぜひ。


第2弾源氏物語ツアー源ちゃんツアーseason2』Day10に来てくださり、どうもありがとうございます。


 ✨明日の予定

 Day11 略奪愛

 集合時間:二度と戻れない時間

 集合場所:とりかえしのつかない場所


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