Day14 🔖父と子 Part1

 皆さまこんにちは。源ちゃんツアー2へようこそ。ツアーへの参加だけでなくご感想をお聞かせくださる皆さま、本当にありがとうございます。源ちゃんや柏木への苦言や女性陣への同情、それから紫式部センセイや物語への考察などどれもとても参考になります。吹き出してしまうほど笑ったり、「そうよ、そうなのよっ」と思わず指さしてしまったり、うーむと口に手を当てて唸ったりとどのコメントも本当に嬉しいものです。皆さまとの双方向のやりとりをしながら出かける源氏トリップ、なんと楽しいことでしょう。皆さまおひとりおひとりの視点からの源氏物語、コメント欄もお楽しみくださいね。もちろん静かにツアーに参加してくださる方も大歓迎ですよ。

 今日はエッセイ回です。【超訳】源氏物語「episode37 親友が遺した想い 鈴虫」に寄せるエッセイです。

 親友の柏木が亡くなったあと、夕霧は遺言通り未亡人となった女二宮を見舞ってあげています。そこで柏木の遺品の横笛を受け取ります。「この笛は子孫に残したいんだ」柏木は夕霧の夢枕でそう話します。え? 子孫? お前子供いないじゃん。え? まさか? うそだろ? いやマジ? そうなのか? そういうことなのか? 夕霧は動揺しながらも真相を突き止めようとします。


 さて、夕霧と源氏の心理合戦へのトリップです。昨日までの超絶重ったるい気分から切り替えましょうね。では参りますよ。



 それっ『源氏物語』に行こっ!


 

 ✈︎✈︎✈︎

【別冊】源氏物語 topics30 親子で心理合戦!?

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054881765812/episodes/1177354054885901210


 源氏と夕霧はれっきとした親子です。冷泉帝とは違って、こちらは最初の正室葵の上が産んだ息子。誰がどう見たって父親と息子です。

 若いうちに勉強して実力をつけるようにと、本当だったらもう少し高い官位で出仕就職できる夕霧にわざわざ低い官位を授けたのも源氏の教育方針です。意外と教育パパです。


 そして夕霧が一途に雲居の雁を想っていてなかなか他の縁談にも目もくれないので、『恋の伝道師』源氏パパがあれやこれやと恋愛講座をたれたのが第三十二帖【梅枝うめがえ】でした。【別冊】のエッセイでも書きました。(topics22 恋愛講座? 源氏の結婚観??)


 それより以前にも恋愛がらみで源氏と夕霧は話をしています。そのときは玉鬘についてでした。


「ホントのとこ、玉鬘さんのこと父ちゃんどう思ってんの?」

「(内心ドキドキ)どうって、別に。娘じゃん?」


「ホントに? 尚侍にして父ちゃんのアイジンにもしようって思ってない?」

「な、な、なんだよ。ソレ(やべぇ! バレてる!!)」


 夕霧は源氏と玉鬘がハグしているところを覗き見しちゃってます。玉鬘とは血がつながっていないとわかった夕霧も玉鬘を口説いてみようとしましたがあえなく玉砕。腹立ちまぎれに源氏を牽制しようとしたのかもしれません。

 感情で動くパパ源氏に対して理路整然と考える息子夕霧。心理合戦では夕霧の方が有利かな?


 今回の【横笛】でもまた親子の心理合戦が行われました。

 夕霧は亡き友人柏木の遺言が気になっています。柏木と女三宮に何かあったのか。何かあったから源氏が柏木のことを怒っているのか。

 源氏は夕霧が柏木の未亡人の女二宮のことをどう思っているのか気になります。


「女二宮とはどうなってんの?」

 源氏が夕霧を追求します。

「どうにもなってないよ。柏木の遺言で様子を見に行ってるだけだし」

 夕霧はしれっと追及をかわします。女二宮のことをもう友達の未亡人としてでなく、恋しい人と想っているけれど、まだパパには本心を明かしません。


「未亡人相手にマチガイ起こすなよ」

「そんなわけないし」

 いつの時代でも親の忠告は子供にとってはうっとおしいものですよね。それならそっちはどうなんだよ、と夕霧が反撃に出ます。


「柏木がさ、この横笛を子孫に伝えたいって」

 今度は源氏がうろたえます。

(い? 夕霧、お前知ってんの?!)

「そういえば、柏木つながりだけど、父ちゃんに悪いことしたって言ってたよ」

「え……?」

(やっぱ、知ってんのな!!)

「なっ、なな、なんのことだろな。さっぱりわかんないけどな」


 そしらぬフリをするしかない源氏はそのまま話題をすりかえました。柏木が子孫に伝えたいと夕霧に夢で託した横笛は、こじつけまがいの言い訳で源氏が引き取りました。もうこの笛を源氏が受け取った時点で、柏木の罪が疑惑から確信に変わっていますよね。


 恋愛スペシャリストの源氏パパが固真面目息子の夕霧くんに「浮気はすんなよ」とアドバイスをしてやろうと思ったら、「そっちはどうなんよ?」と切り返されてしまいました。

 しかも絶対知られてはならない「禁断の恋」ネタ。源氏と夕霧の心理合戦はまたもや夕霧の勝ち、かしら?

 こと恋愛ネタならツッコミどころ満載のお父さんですもんね。それにしても自分の色恋沙汰を棚に上げて息子の女性モンダイに対しては口うるさい源氏くんです。


 やっぱり教育パパなの?


「マチガイ起こすなよ?」

 少し笑えませんか? ダメか、笑っちゃ。

 ね、ね、おとーさん、ご子息に説教たれる前にご自分の胸に手を当ててみて? その昔マチガイを起こしたのはダレ?


「浮気はすんなよ」

 いったいどの口が言ってんのかしらね? やっぱり笑えませんか? 

 あ、あなたはいつでも「本気」でしたわね。


 ね、紫の上さま。

 ご主人ったらこんなことおっしゃってますけれど。

 ごめんなさい。笑っている場合ではありませんね。

 

 誰かがガツンっと言ってやらないと……。


 えっと……、何を言えばいいのかな?

 誰の件? 

 どのエピソード?

 

 源氏くん、今は紫の上さまをフォローしてあげて。

 心をこめてそばについてあげていて。

 懺悔は紫の上さまにね。

 あるでしょう? 星の数ほどの懺悔。海よりも深い後悔。





 ✈︎✈︎✈︎

 お疲れ様でした。源ちゃんと夕霧くんの親子エッセイでした。見た目はそっくりの親子ですが、性格などの内面は好対照です。惚れっぽく恋まみれのパパに一途で純愛路線の息子くん。でも夕霧くんは父親として源ちゃんを尊敬しているし、源ちゃんも息子を認めています。意外といい親子関係だと思います。源ちゃんにこんな風に探りを入れたりツッコミができるのも夕霧くんだけだと思います。


 ただ、純愛路線、雲居の雁ちゃんオンリーラブの夕霧くんですが少し雲行きが怪しくなってきました。そう、柏木の未亡人女二宮さんのことが気になりだしています。夕霧くん28歳になりました。雁ちゃんと結婚してから10年経ち、多くの子どもにも恵まれています。10代の少年時代にあんなに切ない恋をして見事に想いを実らせたのに、結婚して10年も経っちゃうと雁ちゃんとの生活もフツーになっちゃうのでしょうか。一緒にいるのが当たり前になっちゃうのでしょうか。「また出かけるの?」「こっちは育児でタイヘンなのよ」そんな風に言ってくる雁ちゃんより友達の未亡人サンのことが気になっちゃうのでしょうか。うぅぅぅぅん。


 明日はまた別の「父と子」についてのエッセイです。源ちゃんと「もうひとりの息子」についてのお話です。おわかりになりますよね? あちらも源ちゃんとそっくりのイケメン息子さん。 



 明日も『源氏物語』に行こう! ねっ!


『源氏ツアー』Day14に来てくださり、どうもありがとうございます。


 ✨明日の予定

 Day15 父と子 Part2

 集合時間:できれば満月の夜

 集合場所:満月の見える場所


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