Day8  📖【若菜下】波立つ水面

 今日も『第2弾源ちゃんツアー』へのご参加ありがとうございます。

 前回の超訳第三十四帖【若菜上】での波乱怒涛の展開の続き第三十五帖【若菜下】です。


 源氏が朱雀院の娘の女三宮と結婚し、元カノの朧月夜とも復縁して、紫の上を傷つけました。女三宮と結婚したかった柏木はまだ彼女のことを諦められません。

 それから源氏の息子夕霧が出てきますが、彼は結婚前に一度だけ紫の上の姿を見たことがあり、その美しさに感動して人知れず憧れています。憧れているだけで行動には移していませんけれどね。


 ではでは今日も、『源氏物語』に行こっ!


 

 ✈︎✈︎✈︎

第三十五帖【若菜下】

源氏 41~47歳 紫の上 33~39歳

女三宮 15~21歳

明石の御方 32~38歳 明石女御 13~19歳

夕霧 20~26歳 柏木 25~30歳



【超訳】源氏物語 episode35-1 六条院の人びと        若菜下

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881684388/episodes/1177354054885604593


―― 柏木の恋の病 ――

 女三宮の女房の小侍従からの返事(「しょせん高嶺の花よ」)は本当にそのとおりなんだけど、ヒドイ言われようだと柏木は思うの。もうあんな薄情な女房経由じゃなくて、なんとかして女三宮本人に直接告りたいって思い始めるの。

「大丈夫だよな。ヤバいことにはならないよな?」

 夕霧はひとりハラハラ心配しているの。


 そんな柏木は、御簾を巻き上げて女三宮の姿を見せてくれた猫だけでも手に入れたいと思ってツテをたどってなんとかあのときの猫を自分のものにしたの。突然猫とばっかり戯れている柏木の様子に周りの女房達が不審がるのよね。


~ 恋ひわぶる 人の形見と 手ならせば なれよ何とて 鳴くなるらん ~

(恋しい人のかわりに可愛がっているのに、どういうつもりで「にょうにょう寝よう、寝よう」なんておまえは鳴くの?)


 そんなことを言いながら猫を懐に入れて妄想にふけっているのよね。




―― 冷泉帝の退位 ――

 そして4年ほどの年月が流れて冷泉帝が譲位するの。このとき冷泉帝が28歳、源氏が46歳。帝に即位してから18年が経っていたの。帝には帝位を譲る男の子がいなかったのでこれからは気楽に愛する人たちと暮らしたいっておっしゃるの。源氏は冷泉帝に跡継ぎ(男の子)が産まれなかったことを残念に思うの。冷泉帝が藤壺の宮との罪の子であるってヒミツはバレなかったけれど、えにしは繋がらない運命だったんだなってひとりでひっそり感慨にふけったんですって。

 そして冷泉帝の退位によって東宮さまが即位して明石女御の子が次の東宮になるの。太政大臣(元内大臣)も引退して、髭黒が右大臣に、夕霧が大納言に、柏木は中納言に昇進するの。



―― 源氏一族 住吉ツアー ――

 源氏は明石入道の宿願がすべて達成されたので住吉詣でに出かけることにするの。明石の女御や紫の上に明石の御方や明石尼君(明石の御方のお母さん)も一緒に連れていくの。



―― 紫の上の苦悩と六条院の人びと ――

 源氏は表向き女三宮を大事には扱っているけれど、どうしたって紫の上のことが愛おしくてたまらないの。


 でも源氏も朱雀院や帝への義理もあるので、女三宮のところで過ごさなきゃいけなくなってくるの。紫の上は源氏のいない時間を明石女御が産んだ内親王(女一の宮)を預かって気を紛らわせているのよね。


 紫の上も明石の御方も孫の世話をしているのが花散里は羨ましくなったみたいで、夕霧と藤典侍の子供を預かって育てているの。源氏自身は子供が少なかったんだけど、いつのまにか孫はたくさんできていたのよね。

 玉鬘も32歳になっていて立派な右大臣夫人なの。六条院にも遊びに来て紫の上とも仲良くしているんですって。




~ 恋ひわぶる 人の形見と 手ならせば なれよ何とて 鳴くなるらん ~

柏木が女三宮の猫を手に入れて詠んだ歌




第三十五帖 若菜下(一)


◇◇◇

【超訳】源氏物語 episode35-2 春の演奏会とある願い     若菜下

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881684388/episodes/1177354054885620637


―― 六条院での女性コンサート ――

 朱雀院は死ぬ前にもう一度女三宮に会いたいって思っているの。それを聞いた源氏は朱雀院が50歳になるので、お祝いパーティー(御賀)をしてあげようと思いつくの。

「琴の名手の源氏に嫁いだんだから、女三宮の琴もずいぶんうまくなったんだろうなぁ。聞いてみたいなぁ」

 朱雀院がそんなことを話してパーティーを楽しみにしているって聞いて源氏は焦って女三宮に琴の特訓をすることになるの。それで女三宮に付きっきりになってしまい、紫の上と過ごす時間はますます減っていっちゃうの。


 朱雀院の前での本番の前に1月に六条院でリハーサル(女楽おんながく)をしてみようということになるの。せっかくだから六条院の女性達で演奏会をしようと源氏が考えるのね。女三宮の琴もずいぶん上達したの。21歳になっても性格は幼稚なんだけれども見た目は美しく成長しているのよね。


 女楽当日。紫の上が和琴、明石女御がそうの琴、明石の御方は琵琶で女三宮がきんの琴を担当するの。


 いよいよ女楽本番ね。特に明石の御方の琵琶は名人級なのね。夕霧は紫の上の和琴の音色に聴きいるの。懐かしく、柔らかく魅力的な演奏なんだけれど、ときどきハッとするようなアレンジもあって素晴らしいってもう大絶賛なの。源氏も紫の上の演奏には感心して、やっぱりこの人以上の女性ひとなんてどこにもいないよなって改めて思うのよね。

 明石女御の筝の琴も可憐で優美な音を奏でているの。

 女三宮の琴は他の人よりはまだ未熟だけれど、あぶなげなく弾いていて「ずいぶん特訓したんだな」って夕霧も感じているみたい。

 途中からは夕霧や源氏も唄で参加して優雅な音楽三昧の夜ね。


 夕霧もいつかの台風のときに見かけた紫の上がきっとさらに美しくなっていらっしゃるんだろうなぁと想像してドキドキ胸が高まるの。


 源氏に演奏の感想を求められた夕霧は「和琴(紫の上)が特に素晴らしい」って褒めちぎるの。源氏は明石の御方の琵琶以外は自分が教えたからねと自慢げなの。



―― 紫の上の願い 源氏の想い ――

 次の日に源氏は紫の上と昨夜の話をするの。夕霧がキミの演奏を褒めてくれたのが誇らしかったよって。紫の上が幼い頃は忙しくて教えてあげられなかったのにキミはやっぱりすばらしいとつくづく源氏は感心するの。


 紫の上は今年は37歳で厄年でもあるし、源氏に出家したいって打ち明けるんだけど、許してもらえないの。

「キミみたいに素晴らしい女性ヒトに先に出家されたら俺は生きていけないよ」

「キミと仲良く暮らすこと以上のシアワセなんて俺にはないんだよ」

「俺がどれだけキミのことを愛しているかを見届けてよ」

 紫の上はまたそんなこと言って出家させてくれないのねと涙ぐむの。


 それから紫の上が一番素晴らしいんだと強調するために他の女子を引き合いに出すの。葵の上(夕霧のお母さん)も欠点のない奥さんだったけれど賢すぎてちょっと面倒だった。六条御息所(セレブ未亡人)も才色兼備だったけど息苦しかったとかね。

 明石の御方のことも表面上は従順だけどどこか身構えてしまうなんて源氏は言うの。以前は嫉妬していた彼女とも和解して、仲良くしてくれるキミの真似をできる人なんて他にはいないよ、立派すぎるよって源氏は紫の上のことを称えるの。



―― 紫の上倒れる ――

 その夜、源氏が女三宮のところに泊まっているときに、ひとりで寝ていた紫の上は急に胸が苦しくなるの。源氏もつきっきりで看病して、僧も呼んでいくつも祈祷をさせるんだけどちっとも良くならないの。源氏はもう他のことに気が回らない状態なので2月に予定していた朱雀院の50歳のお祝いも延期するの。

 そして2月も過ぎたんだけど、紫の上の病状はよくならないの。だったら環境を変えてみようということで、紫の上を二条院に移すのよ。

 夕霧ももちろん紫の上のことを心配していて、自身でも紫の上の病気が治るように祈祷をさせているの。


「前からお願いしている出家をどうして許してくれないの?」

 紫の上は源氏にこう言うの。

「生きていて離れ離れになるなんて死んで別れることより俺にはツライことなんだ」

「キミが出家したら俺は生きていけない」

「キミが寂しく思うだろうからって俺は出家を思いとどまってるのに、キミは俺を見捨てるの?」

 こんなことばかり源氏が言って出家をさせてあげないのがいけないのか、紫の上の病状はどんどん悪くなっていくの。


 当然源氏は女三宮のところには通わなくなるの。楽器などもしまいこまれて六条院は灯りが消えたみたいに寂しくなってしまい、六条院の真の華は紫の上だったってみんな思い知るのよね。 



第三十五帖 若菜下(二)



 ✈︎✈︎✈︎

 お疲れ様でした。【若菜下】の前半ツアーでした。【若菜上】で女三宮の姿を見たとき、柏木は25歳でした(女三宮15歳)。そこからまた5~6年の年月が流れています。柏木の女三宮への片想いも長いんですよね。それほど好き、なのでしょうか。なまじ姿を見てしまっているから諦められないのでしょうか。今と違って恋仲でもないのに好きな人の姿を見ることなんて有り得ない社会ですからね。たった一度のハプニングだったけれど、それだけに強烈なインパクトが柏木には残っているのかなぁ。

 それにしても女三宮側から考えるとこんなに長い間ラブレターを送りつけられているのは困りますよね。自分は源氏の妻なんだし、柏木のことなんてなんとも思っていないのに。


 それから女三宮と結婚したことでますます紫の上の素晴らしさに気づいた源氏ですが、反対に紫の上の気持ちは源氏から離れ出家をしたいと考えるようになります。皮肉なものですよね。


 明日は今日のトリップを受けてのエッセイです。ボヤいていません。叫んでもいません。紫の上についてしんみりとお話しようと思います。


 そんなわけで、明日も『源氏物語』に行きましょうね。


第2弾源氏物語ツアー源ちゃんツアーseason2』Day8に来てくださり、どうもありがとうございます。


 ✨明日の予定

 Day9 平安女子の生きる道って?

 集合時間:悟りの時間

 集合場所:悟りの境地


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