Day21 🔖そんなん絶対ムリっ!

 皆さまこんにちは。今日もエッセイツアーです。エッセイ元となるエピソードを今回のツアーではご案内していないのですが、第十八帖 松風(【超訳】源氏物語episode18 ふたりの女性と娘のこと)と第十九帖 薄雲(【超訳】源氏物語episode19 永遠の人)前半についての作者の叫びとなっております。紫の上と明石の君についてのエッセイです。まずはそこまでのあらすじをお話しますね。


 源氏が起こした朧月夜とのスキャンダルの責任をとって謹慎に出かけた先で明石の君と恋に落ち(謹慎中だろっ! という抗議は源氏くんに言ってやってください)、姫君をもうけました。帝(朧月夜サンの夫)に呼び寄せられ源氏は京に戻り職務に復帰し、紫の上との幸せな生活を再開させます。【明石】【澪標】


 ただ明石の君と姫君のことも放っておけない源氏はふたりを京に呼びました。明石育ちで身分の低い明石の君は気おくれがするので、源氏の家二条院で暮らすことはできずに父親が用意した京郊外の別荘に住むことにして、源氏との再会を果たしました。

 以前源氏は占いをしてもらったことがあるのですが、そのときに子供は3人産まれて、ひとりは皇帝、ひとりは皇后、もうひとりは大臣になると言われました。源氏の子どもで女の子は明石の君の産んだ姫君だけです。そうなると、この姫が皇后になる子かもしれない、と源氏は思うのです。そこで源氏は明石の姫君を皇后にするための環境を整えようと考えます。女性としてのしつけや教養をつけるのはもちろんのこと、姫君の身分を少しでも上げようとするのです。【松風】


 そこで考えたのが、紫の上を養母にして姫君の「母親の身分」を上げようとすることでした。そして実際に紫の上に育ててもらうことにするのです。

 明石の君はもちろん悩みますが姫君のためを思い、泣く泣く娘と別れます。紫の上はそんな明石の君の気持ちをくんで、実の子どもでない明石の姫君を愛情込めて立派に育てます。【薄雲】


 という現代ではアリエナイ設定のお話です。この話を受けての作者の叫びにお付き合いください。偏った意見であることを申し添えておきますね。もちろんツアー参加の皆さまがどうお感じになるかはご自由ですよ。


 じゃ、『源氏物語』に行ってみてくれる?



 ✈︎✈︎✈︎

【別冊】源氏物語 topics10 永遠のライバル? 最高の親友?


 いよいよ明石の君が京にやってきます。可愛い娘ちゃんを連れて。占いどおりならこの娘ちゃんが妃になる。それなら母親の身分は高い方がいい。明石の君の身分を上げることはできないから身分の高い紫の上を養母にしようと源氏は考えるのね。

 いかにも男子的な思考よね。平安時代の女子もそれがいいわねって思うのかしら? 現代では理解しがたい思考よね。

 産んだ子供を育てられない、成長を見守れない。そんなツラいことあるかしら。

 他の女性が産んだ子供を育てる。愛するオットのためとはいえ穏やかに引き受けられるかしら。


 ……。明石の君と紫の上。どちらもツライです。


「明石ちゃんが産んだ子なんだけどさ、育ててくんない?」

 まさか、こんなチャラくは言ってないとは思いますが、どの面下げて源氏は紫の上に頼んだのでしょうね?

 紫の上も子供好きだから快く引き受けたって……、そんなもんですか?

 そして姫君を引き取ったあとでこんなにも愛おしいものを私はあの人(明石の君)から奪ってしまったんだわと気づき、源氏が明石の君のところに通うのを大目に見るようになるんですって。……、そんなもんですか?


「だいじょぶ、だいじょぶ。紫ちゃん、スンゲー子供好きだから」

 私は田舎娘でいずれは捨てられるんだからどうか放っておいて、と源氏を拒んだ明石の君を無理に口説いて娘ちゃんまで産んでもらったクセに、今度は身分が低いから自分の奥さんに育てさせるって、いったいどんな思考回路よ?

「あ、ホントにぃ? だったらお願いしちゃおっかな〜♬」

 言うか、アホ。


 今とは違う社会だってわかってますよ?

 でもねぇ、人の想いなんてそうは変わらないとも思うのです。

 好きな人との子供を育てたい。成長を見守りたい。

 一夫多妻だろうがなんだろうが、誰もがそう思うはず。でもそれさえ叶わない社会もあるんだなぁと思ってしまいます。


 この後、明石の姫君は紫の上に育てられ、源氏の一人娘として東宮(皇太子)に嫁ぎ、皇子・皇女を産み、中宮(皇后)となります。紫の上は自分の子どもでない姫君を可愛がり、女性としてのしつけを完璧にして、非の打ち所のない姫君へと育て上げます。

 東宮に入内(お嫁入り)するときに紫の上は姫君を明石の御方(明石の君)に返します。自分は宮中までついていけないので、お嫁入りのあとのお世話を明石の御方にお任せするということにして。明石の御方も姫君の実の母という身分を隠して表向きは姫君の女房という形で娘に再会します。

 このときに紫の上と明石の御方は初めて対面します。愛する源氏が自分以外に愛している人。お互い気になって仕方がなかった人。そして対面してお互いの美しさやすばらしさに感心するんですって。


 なんかねぇ。いくら一夫多妻が認められているからってダンナのオクサン(アイジン?)に会うんですよ。それで会ってみればすっごいステキな方だったから

「これじゃダンナも落ちるわね」

 って納得するって……。んで

「あなたみたいなステキな方が競争相手で嬉しいわ」

 って……。

 なんかねぇ……。

 そんなものでしょうか。

 まったく理解もできないし、共感もありません。




 平安時代って……、タイヘンだ。いったい何が「平安」なんだろう?





 ✈︎✈︎✈︎

 お疲れ様でした。アンビリバボーな源氏くんとツマの紫ちゃんとカノジョの明石ちゃんのお話でした。現代に置き換えるにも無理のある設定ですよね。


 当時は何事も身分がものを言う社会だったようです。同じ父親でも母親の身分が違えば兄弟でも身分差が出てしまうのですね。源氏自身がそうです。お父さんは帝でもお母さんの身分が高くなく、実家の力もなかったので臣下に下ったのです。

 そして子どもの嫁ぎ先を決めるのも親ですしね。その結婚のためにできうることをしようということなんでしょうね。


 でもねぇ。

 可愛い我が子を愛する夫にとりあげられるのです。

 夫が他所でつくってきた子を預けられるのです。


 どっちの立場でも「そんなん絶対ムリっ!」って思いませんか?

 


 今日もDay21『源氏物語』ツアーにご参加くださりありがとうございます。


 明日はうってかわって物語で一番せつないエピソードを受けてのエッセイになります。


 明日はしんみりと『源氏物語』に行ってみませんか?


 ✨明日の予定

 Day22 想ふ、焦がれる、恋ふる、愛する

 集合時間、集合場所:しんみりできる時間と場所にお越しください。

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