第1章 異世界アトラス

2 神の使いの力

木漏れ日で目が覚めた。体を起こしながら辺りを見渡して見るとどこかの森の中ということがわかった。


(ここが神様の言っていたアトラスって世界でいいんだよね?)


初めての世界のはずだが、なぜだか懐かしいと感じている自分がいた。その気持ちは気のせいだろうということで結論付けて動くことにした。


「……さて、何をしようか」


自由にしていいと神様に言われているわけだが、指標が何もないと困惑する。初動だけでも助言が欲しかったところだが、それだと自由にしていいって観点から離れてしまうから仕方ない。


それから少し考えた俺は、ひとまず村や街などを目指すことにした。理由は情報収集がメインになってくるだろう。


ただこの森を知らないためどっちに行けば村や街があるのか見当もつかない。そのためしばらく適当に歩いていると頭に直接言葉が聞こえてきた。


『やぁ飛鳥くん。聞こえるかな?』


神様の声だった。


「はい、聞こえますよ」


『それならよかった。早速だけど飛鳥くんに神の使いの力について伝えてなかったから今教えるね』


(そんな力があったのか。現状をどうにかできる力があればいいな)


『じゃあまず一つ目、周囲の状況把握ができる索敵サーチだ。索敵と念じてごらん?』


(こうかな、索敵)


言われた通りに念じてみると、脳内に自分を中心とした周辺状況が空間的に把握できた。


「周辺の地形がこんなに簡単にわかるなんてすごいですね。それに一角うさぎっていう魔物がいるみたいですね」


(あれ、なんで俺は一角うさぎってわかった?)


『その疑問はもっともだ。理由は二つ目の力である看破のおかげだよ。看破は相手に察知されない上に、偽装された情報も見抜ける。だから索敵と合わせれば隠れ潜んでいてもすぐに見つけられるよ。だから飛鳥くんが今やったように離れていても、相手に気づかれることなく相手を把握できるのさ』


(つまり危険を察知できるし、知識がなくてもそれが何かわかるってわけか。すごい力だな)


『三つ目は言語理解だ。どんな種族とも意思疎通ができるだろう。全言語は飛鳥くんのわかる言葉に変換され、飛鳥くんの言葉も相手にわかるように変換されて聞こえるようになる』


(意思疎通のためにこの力は一番大事だ。この力がなかったら村や街に言っても何もできなかった)


『そして最後は僕からの加護だ』


(神様の加護?)


「それはどんな効果が?」


『僕の加護を与えるのは飛鳥くんが初めてだから具体的には言えないんだけど、あえて言葉にするなら状況に応じて僕が力を与える加護と思ってくれ』


(何かあった時に何とかできる力をくれるってことなのかな?)


『それじゃあ与えた力を駆使して、村や街探しを頑張ってね』


「え、それって……」


神様の声が聞こえなくなった。


「もしかして故意だったのか? 神の使いの力に慣れてもらうためにわざと森に送った。神様ならやりそうだよな」


釈然とはしないが、確かに慣れるためには実践が一番。言われた通り力を駆使して村か街を探すとしようじゃないか。

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神の使いにされました。 八咫丸 @yatahiko

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