第164話 それぞれに思想

「・・・失態だ、失態だ」

「・・・」

「そう思わないかね」

「・・・拠点の1箇所が完全に落とされたって話か?」

「騎士の工作員によってあの場所はもはや落とされたも同然だ」


 霧の囲われた都市、騎士が大量に流れ込み、街中が戦闘となった。奇襲だったのもあり、すぐに対処が行えず、更にはこちら側に潜んでいた騎士達の行動もあり、どこに敵味方がいるのかさえ分からなくなっていた。

 それでも僅かな生き残りは脱出を図り、別の支部に逃げてきていた。


「何もかもうまくいかん。・・・取引も襲われ、交換物も敵の手に落ちた」

「それでも、お前にはまだがあるだろうアラク」

「ふん、あれは私が前線に命を代償に使う大技だ。最悪、これを使って騎士共を大量殺戮せねばならん」

「お前にとってはそれは避けたいか・・・」

「当たり前だ、ガルドラ。お前が裏で何やろうと勝手だが、私は私なりにやらせてもらう」

「ここのリーダーはお前だ。好きにすればいい」


 ガルドラは立ち上がり、部屋の隅にある窓際へと移動し、外の様子を伺う。外には何かの準備をしており、多くの人を総動員していた。走る者、物を運ぶ者、何かを組み上げている者、色々な役割をしながら、同じ物をいくつも製造していた。


「・・・あいつがここを嗅ぎ付けてきたら、全てが終わりか・・・」


 小さく呟きながらも、黙々と作業を進めているのを眺めていた。



「大天使様。探索した所、あの偽女神は確認出来ず」

「そう、分かったわ・・・。探索は中止、これ以上探索しても無駄でしょう」

「分かりました。負傷者もある程度回復してきました」


 天空、天使達が数人単位で行動しながら、逃亡した女神の行方を探していた。だが、その行方は尻尾も掴めなかった。


「ここにいる天使達の回復次第、ここから撤収する」


 怪我した天使には魔法による治療を行う天使達、それ以外に大天使の周りに偵察から戻ってきた天使達の集団がいくつも空中に浮いていた。




「あの後、騎士達によって蹂躙したか・・・。攻撃魔法による誘導が意外と刺さった見るべきか」


 脱出は予定通りだったとは言え、やはりタイミングが良すぎる気もする。森の中で息を潜めて様子を伺うのもそろそろ限界かもしれないし、撤退するのも良さげだ。

 中に工作員を紛れ込ませる作戦は良かったが、どうやって潜り込ませたのか。元からって可能性も低いとは言えないが、相当計画を練っていたと思う。


「さて、目的のを確認したし、戻るか」


 私は木々の上から飛び降り、魔法都市の方へと歩き出し、転移を使ってその場から消えた。



「・・・世界をかき乱す力――、果たしてそれが吉と出るか、世界の滅亡へと近づけるか――」


 1人の黒髪の少女、胸元の服に埋め込まれた宝石を手で触りながら、ファルメラをただ見つめていた。

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