第153話 竜人の巫女Ⅳ

 昨日のうちに魔法都市へと戻った私は、依頼された品物を渡し、寮へと戻った。

 次の日にいつも通りの男性の姿で学校へと向かい、いつも通り日常を過ごす。周囲には色々とやっている事はバレないようにしている。

 だが、今日は予想外の事が今回起きた。

 そう、昨日の巫女の乗せた馬車が午後に到着し、既に学校内を見物探索していると聞く。時間が放課後ともあり、護衛と巫女2人が学校を徘徊しているって話だ。

 本を借りに来ただけであるが、その間にここに来ない事を祈るばかりだ。


「はい、どうぞ」


 本を受け取り、図書室を出た私は廊下を歩き、寮へと戻る。今日もやる事があるので、そちらを優先している事もある。睡眠も私の能力のお蔭でほぼ取らずに一日中起きられている。原理は不明であるが、とにかく便利である。

 それでも、行う前に仮眠は取る予定だ。多少は寝ないと体は保たないし、いくら便利であろうと、完全には寝ずにいられるわけがない。

 まあ、今回は新しい素材による魔具制作なんだけど、一体どんな効果をもたらしてくれるやら、楽しみである。


「―――ここは中庭、よく学生達が昼間や放課後に休憩の場として使われています」


 廊下を歩いている時である。目の前の曲がり角の奥から声が聞こえてきた。内容からして、誰を案内しているように聞こえる。

 千里眼で誰がいるのか、確認する。大体想像は出来ていた。そう、巫女集団以外考えられなかった。

 だが、除いてみて私は少し、目をパチパチしてしまった。竜人の巫女だし、認識のない人だと思っていた。だが、そうではなかった。


「――では次は職員室へと案内します」


 少し立ち止まっていたら、こちらへと向かってくる。今彼女にこの姿を見せるわけには行かない。それに王国の巫女は前の女性の姿は使えない。なら、別の姿に急遽変える必要がある。

 ほんの十数秒、その間に短髪の女性へと姿を変えた。歩き出した時、ちょうどそのグループと鉢合わせをした。


「こんにちわ」


 私は頭を下げながら、挨拶をした。そして、にこやかを崩さずに彼女らを見つめた。


「こんにちわ。学園生活は満喫出来てますか?」

「えぇ、服装も女性でも男性の服装着れますから、私は不自由なく生活出来てます巫女様と・・・えぇっと・・・」

「ふぅ、竜王国の巫女は初めて見ますのね」

「え、えぇ、初めてお伺いしました」


 私は少し笑いながら、竜人の巫女をじっくりと観察した。だが、見間違うわけでもなかった。


「学校見学、楽しんでいってくださいね」

「・・・一つ聞きたい。って人はどこにいるか知らない?」

「どこにいるかはご存知ありませんね・・・。放課後はどこにいるか分からない人ですから」


 私は誤魔化すように答える。だって、目の前にいる私がそうだもん。


「そう、時間取らせて申し訳ありません」

「見学楽しんでいってください。これでも面白い場所多いですから」

「情報感謝します。はい、楽しんできます」


 その後、私の元から巫女集団は離れていった。私はそれを眺めながら、手を振っていた。見えなくなった所で、曲がり角を真っ直ぐ進み、姿を男性へと戻した。


「冗談はよしてくれって思ったのは、初めてかな・・・」


 竜人の巫女、彼女は私の義妹の『シャルネ・ファルガーデン』、あまり家に帰らず、学校の宿舎で寝泊まりしているとかしか聞かされてなかったが、まさか巫女だとは誰が思う。

 いや、今は会わない方が懸命だ。こんな姿を見せるわけにはいかない。

 私は寮へと急ぎ戻るように歩き出した。

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