第九章 魔法武闘祭 -2-
「東から現れたるは、アルビオンの太陽、輝ける光の王子、
黒いつば広帽子を被り、目の回りをくりぬいた黒覆面で顔の上半分を覆った
四方を回って観客に愛想を蒔いたルウェリン王太子は、女性を帰すと帽子を観客席に投げ込んだ。
たまたまその場所にいた少女がそれを拾い、黄色い歓声を上げる。
「奇しくもアングル人同士の対決となりました、一回戦第一試合。アルビオンの希望を体現する男と、アルビオンを棄てた男がぶつかり合う一戦。賭け率はルウェリン殿下が一・二倍、エリオット卿が二・五倍となっております」
二人の武器は、互いに同じような
中距離で武器を抜き、構え合って開始の合図を待つ。
さて、答え合わせだ。
「
いつもの通り、
彼の体を魔力が包み込むと、
その時点で、
「まさか、直線じゃない」
かろうじてぼくの
円を描くように
だが、その突きが大公の背中に刺さった瞬間、耳をつんざくような雑音とともに
「なっ……」
「ふ、これが我が
ふむ、王太子の余裕の源はこれか。
単なる
あれは、グウィネズ王家の
「セルトの血が、アルビオンの王太子に発現しているのか。皮肉なことだな」
大地からの魔力の流れが見える。
要するに、あれは変形の
大地に足を付けている限り魔力を供給される無限の
厄介な
「それで終わりか、ノートゥーン伯爵。卿の魔法への情熱とはその程度か」
「ほざけ……わたしは、まだ……戦える!」
その間の
だが、その限界を、彼は意地で超えてくる。
──再度の
本来の彼の力ではなし得ぬことを、此処一番でやり遂げる。
そして、再びの
エリオット・モウブレーの姿がぼやけて消える。
今度は、逆から回り込んできた。
やはり、直線の動きではない。
あのときこの動きをされていたら、ぼくはきつかっただろう。
折れた
切れ味は劣るが、耐久性は上だろう。
その切っ先を、再度背中から大公の心臓に突き入れた。
結果は、変わらなかった。
神の力を一時的に得たとはいえ、
大地の魔力を幾らでも吸い上げられる
砕け散る長剣の刃を無造作に振り払うと、
限界を超え動けない
その時点で、ルウェリン・グリフィズの勝ちが決まったのである。
「あの
ハンスが驚きの喘ぎを漏らす。
唯一決めきれなかったのは、ぼくとの試合だけだ。
それ以外は、どんな相手の
会場のほとんどの人間は、試合経過が見えていない。
この再生でようやく内容がわかったのである。
「大丈夫か、アラナン。あの王子、えらい強いぞ」
「流石はアルビオンの切り札だな。でも、大丈夫。ぼくは勝つさ」
所詮
敗北したら、アルビオンに帰国しなければならないと思っているんだろう。
心配するなよ、先輩。
ぼくが、
国の力ではなく、個人の力で対決を挑んできた王太子は嫌いじゃないけれどさ。
ぼくも
いまはまだ、アルビオンには帰れないよ。
係員に連れられて退場していく
何となく、先輩がちらりとこっちを見た気がした。
わかってるさ。任せろよ。
「さあ、続きましての第二試合。西から現れたるは最近冒険者に登録したばかりという異色の新人、予選では何と
次の試合の出場者の紹介が始まる。
西から現れたのは、冴えない中年の駆け出し冒険者だ。
どう見ても、予選を勝ち抜いた男には見えなかった。
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