第五章 ケーファーベルクの初級迷宮 -4-
ハンスたちの試験の相手も、ジリオーラ先輩だった。
強敵だとは思うが、迷宮の難易度を思うと彼女くらいの試験官じゃないと駄目なのかもしれない。
ジリオーラ先輩の
それならばと、マリーとカレルは弓を持ち、物理による遠距離攻撃を仕掛けた。
発想は悪くなかった。
だが、二つ目の
剣技では初等科トップクラスのハンスとアルフレートが子供のようにあしらわれ、前衛を失ったマリーとカレルもあっという間に潰されていた。
速度に特化したマリーですら追い付けない。
中等科はやっぱり凄いんだ、と改めて思う。
と言うか、ジリオーラ先輩はもう高等科のレベルに足を突っ込んでいるよね。
初等科最強班があっさりと負けたので、みんなの士気は下がっていた。
ビアンカやサルバトーレの班は別な試験官だったが、やはり勝てていない。
これなら、暫く迷宮に籠るのはぼくだけになりそうだ。
ファリニシュに指環を手に入れた話をしたら、効果を鑑定してくれた。
どうやら、事前に魔力を貯めておける指環らしい。
装備者と同じ量の魔力が込められるということだ。
単純に言えば、魔力が倍になるのだ。
いいね、長期戦にはもってこいだ。
ジリオーラ先輩から、幾つか罠の講習を受ける。
先輩は、驚くほど罠には詳しい。
中等科で班を組むときは、斥候の役割を果たすそうだ。
それであの
あれなら、最前線に出ても生き延びられるよ。
翌日は、朝から迷宮に向かう。
学院の講義はすでに修得済みの内容だし、こっちを優先で問題ない。
例によって愛想のない受付で手続きを済ませると、旅券を扉の赤い水晶に翳す。
開いた扉から中に入ると、入り口の広間に前回はなかった扉が現れていた。
これが地下二階へ繋がる扉かな。
扉を開け、中に入る。
予想通り、地下二階の開始地点に出たようだ。
上に行く階段、迷宮の入り口に戻る扉、そして先に進む扉がある。
さあ、行こう。
扉を開け、地下二階に足を踏み入れる。
一階に比べ、冷気が漂っている気がするな。
鉄の剣を構え、魔力の糸を伸ばしながら油断なく進む。
ん、床に何かあるな。
これは、上に重量が掛かると警報が鳴る仕掛けのようだ。
解除するより避けた方が楽だが、練習だから解除してみよう。
んん、重量を検知する魔道具と、警報を鳴らす魔道具、そしてそれを繋ぐ魔力回路がある。
思ったより手が込んでいるなこれ。
ま、魔道具を繋ぐ回路を切ってしまえば問題はない。
更に先に進む。
時々立ち止まって地図を作成しているので、時間が掛かって仕方がない。
ああ、地図を描いてくれる仲間が欲しい!
通路の先に扉が見えてきた。
だが、中で何かが動く音がする。
魔物かな。
魔物ならば、倒せば成績になる。
行ってみよう。
扉を開けると、部屋の中の六つの目が一斉にこちらを向いた。
いや、目と言っていいものか。
黒く虚ろな
部屋の中にいたのは、剣と盾を持った三体の
面倒な相手である。
動きはさほど速くないので、
斬るというより殴る感じで剣を振るい、先頭の一体を吹き飛ばす。
だが、少々欠けたくらいで
起き上がって再び向かってくる。
これを倒すには、火力を上げるしかない。
魔力を剣に纏わせると、属性を付与して
こいつらの弱点は光と炎だ。
剣に纏った炎を見て、心なしかやつらの腰が引けている。
それじゃ、本気でやってみるかな。
直線的な剣の動きを、棒の師匠に習った円の動きに変える。
振り下ろされる
続けて次の剣が振り下ろされるが、回転を消さずに弾き返す。
態勢を崩した
二体の
斬撃を弾き、盾の押し付けを
相変わらず、部屋には何もなかった。
前回の経験が生きているのか、地下一階より順調に地下二階の探索は進んだ。
罠の解除も概ね成功したし、
地図の作成には時間が掛かったが、地道に穴を埋めて完成させた。
そしていま、ようやく地下二階の最奥の間の前にいる。
この階層の敵の傾向からいくと、
一応、
扉を開けると、やはりいたのは
しかし、こいつらは剣と盾だけでなく、鎧を着込んでいる。
それが前衛として四体おり、その後ろに杖を持った
って、魔法使いが二人はまずいな。
前衛に止められている間に好き勝手やられたら簡単に詰む。
これ、本当に一人で進むの厳しくないか。
方針を変更し、火力で押し切ることにする。
そして、後ろの
注ぎ込む魔力が少ない分威力は落ちるが、弱点属性に賭ける!
轟音と爆風が部屋を揺らした。
振動と煙が収まる前に、
一体は完全に吹き飛ばしたな。
至近距離で食らって粉々になっている。
だが、もう一体は
くそっ、反撃がくる!
生き残った
威力は火属性より低いが、あれは状態異常付与の特性がある。
食らうわけにはいかず、何とか横に転がって避ける。
そこに、前衛の
此処で
時間を掛ければ、生き残っている
それは避けたい。
ならば、このまま押し切るしかない。
もう一発、
狙いは前衛の四体だ。
再び轟音と爆風が天井の埃を落とし、衝撃でぼくも吹き飛ばされた。
ちょっと距離が近過ぎたようだ。
四体の
流石に
だが、遅い。
すでにぼくは
ぼくは不敵な笑いを浮かべると、杖ごと
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます