1日目、少女に出会う。

夜猫

1日目

私は神崎柚菜という普通の女の子だ。

身長が弟やその同世代よりも低いこと、

あるものが見える以外は。


学校が終わり夕暮れ時、

帰り道に商店街を歩いていると何やら声をかけられた。

「おねぇちゃん、ぬいぐるみさがしてほしいの。」

私の腕の袖を掴む、5歳くらいの女の子だった。

「え…え?」

私は一瞬戸惑ったが再起動した。

その少女は膝から下がなく宙に浮いていたのだから

私にはそういうものが見える。

「ええ、探してあげる。」

「やったあ、ありがと、おねぇちゃん!」

少女は喜んでいた、痛くないのだろうか。

「どんなぬいぐるみなの?」

「これくらいのー、くまさんのぬいぐるみ。」

私の胴位のおおきなぬいぐるみらしい。

「うーん。どこら辺で失くしたの?」

「えっとぉ、あっちのたんぼのほう。」

確かあっちは事故があった場所だったはず。

私はこの時点で勘付いてしまった。

もしかしたら、この子は被害者なのでは?と


「柚菜ちゃん、どうしたの?」

「えっと、この子がぬいぐるみ探してほしいって」

「この子?、誰もいないのに?」

「やっぱり見えてないですか、ごめんなさい。」

「ええ?、柚菜ちゃん、またね。」

私は近場の店のお姉さんに声をかけるが

どうやら見えてないらしいので

少女を連れて商店街を後に田んぼに向かって走った。


☆☆☆


少女の膝から下は裾が赤くなっていた。

多分引きちぎられたのだろうか。可哀想に。

少女を下ろすとその場に少女は浮いた。

「おねぇちゃん、もうちょっとさきだよ。」

「うーん?」

少女を追っていくとちょうど曲がり角のところについた。

「おねぇちゃん、ここらへん。」

どうやら中学校に近い曲がり角の場所らしい。

ここから見える中学校っていうと…弟が通っている中学校か。

「そっか。見つかるといいね。」

心の中は離れたくない衝動と

成仏させたい気持ちでいっぱいだった。

私はこんな時期に田んぼに足入れて

ぬいぐるみ探してるのもおかしいのだろう。


☆☆☆


「姉ちゃん!何やってるんだよ!」

ちらっと見る。街灯に照らされた少年が2人いた。

近寄ってくる方が弟だった。

「これお前の姉ちゃんなの?」

「姉ちゃん、今は4月だよ、なにやってんの?」

4月だ、まだ雪も薄ら残っている寒い時期だ。

「ぬいぐるみ探し。」

私が正直に答えると2人は驚いた様な顔をした。

「え?」「は?」

「結、そこに女の子いるでしょ?」

「姉ちゃん、また拾ってきちゃったんだね。」

「それどういう意味…?」

「結紀、どういう意味だ?」

「姉ちゃんは、この世ならざる物が見える様になってしまったんだ。」

去年の話だ。

「翔太くん、結の言ってることは本当だよ、ある時から扉を開いてしまった。」

「そんなことが…」

翔太くんは信じられない表情をしている。

私の袖に目を向けると何かに引っ張られている。

「おねぇちゃん、ぬいぐるみまだー?」

私は泥に塗れた手で袖を指さした。

「…え?」

翔太くんは再び驚愕に満ちた顔をした。

「姉ちゃん、そこに女の子がいるんだね。」

「結、そこにいるんだよ、そして手足の感覚がない。」

「姉ちゃん、あがってよ!、今日は帰ろう?」

結紀は帰ろうと提案するが私は反論した。

「この子、どうする?」

「見た目は?」

「5歳くらいで、ぬいぐるみ探してる女の子。膝から下がない。」

「多分、その子のぬいぐるみは学校の前の電柱に飾られてたよ…。」

「え?」

「おねぇちゃん、どうしたの?」

「よかったね、ぬいぐるみ見付かったってよ。」

「おねぇちゃん?ほんと?」

「ほんとだよ?」

少女はよくわからない表情を浮かべた。

私は何故だか悲しい気持ちになった。


「姉ちゃん!、早く。」

「ちょっと、足が痛くて歩けない。」

「お前の姉ちゃん馬鹿なのか?」

「馬鹿とは失敬な。こんな見た目でも君達より年上なんだよ!」

「姉ちゃんの身長小学校の時から伸びてなかったもんね。」

「なんかかわいい。」

中学生に可愛いと言われるのもなんか複雑だ。

私が冷たい水から上がり歩こうとするが立てなかった。

「翔太、これ持ってて。」

「あぁ、うん。」

結紀は翔太にカバンを預けると。私を背負った。

「おねぇちゃん!」

小さな少女は私に手招きをしている。

その方角は中学校のある方向だった。


私は結紀に背負われて中学校の方に移動していく

しばらくすると結紀が立ち止まった。

「確か、ここら辺に。」

そこの電柱には花束と大きなくまのぬいぐるみが置いてあった。

××××年4月12日午後6時12分頃、佐藤 柚華。

花束だった。

柚華ちゃんを見ると消えかかっていた。

「ごめんね。柚華ちゃん、またね。」

「おねぇちゃん、ありがと。またあそぼうね。」

柚華ちゃんは笑顔でそういうと消えていった。

私の目からは自然と涙が零れ落ちていた。

「うぅ…うわああああああああああああああああああん」

「姉ちゃん、よしよし」

「…。」

私はその場でしばらく泣いた。


☆☆☆


しばらくして足の痛みも消えていたので

靴を履いてその場に立つ

まだぎこちない歩みだけども支えられて歩くことが出来た

「ごめんね、帰り道増やしちゃって…」

「気にしてないです。」

「姉ちゃん、今回みたいな無理はしちゃダメだからね。」

「結紀、もうしないよ。」

「何回それを聞いたか、またするんだろ?」

「するかもね。」

「姉ちゃんに怪我して欲しくないんだよ。あの時みたいに。」

「うん。ごめんね。」

「だったらちゃんと反省しろ」


3人で歩く道、空には綺麗な星が輝いていた。

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1日目、少女に出会う。 夜猫 @Sekirei_Hisui

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