第66話俺が負けるならばっ!

 なんだ…この館?こんな原っぱのど真ん中に館?


「魔力を感じるです!多分、この館は魔法で作られてるですね」


 隣のリーフィが呟く。魔法で館を作れるって凄いな。


「この中に悪魔デーモンがいるのか」

「感じるです!この館から悪魔の魔力を!」


 頭のアホ毛がピョコピョコしている。え、それセンサーだったの?妖怪アンテナ的な?


「入るぞ…」


 索敵を発動させて敵の分布を調べる。悪魔のところに集まっているのか、玄関には誰もいない。しかし確かに悪寒が強くなる。


「こっちです!」

「あぁ」


 リーフィの案内により、少しずつ近付いていく。すると地下へと続く階段があり、降りていると小さく声が聞こえてくる。


「ふむ……我を呼んだのはお前らか……」

「おおぉ!!ミドラー様!!」

「ミドラー様が降臨なされたぞぉ!!」

「ひぃぃぃっ!?あれが悪魔なの!?なんて恐ろしいっ」

「うるせぇぞ!お前らは生け贄なんだから黙ってろ!!」

「いやぁぁぁあ!」


 阿鼻叫喚だな。これが噂の邪教ってやつか。あと最初の尊大そうな喋り方してるやつ、あれが悪魔か?ミドラーとか呼ばれてたな?


「ど、どうするです?まだバレてないですけど…」

「飛び込むしかないだろ」

「マジですか!?」

「マジです」


 だってこのまま様子見て手遅れになっても困るしな。なんとかなるだろ?


「たのもー」

「「「「「たのもー!?」」」」」


 気合いを入れて地下室に飛び込むと驚愕の声と視線が向けられる。照れるなぁそんな見つめられると。


「す、スルガさん!?そんな道場破りみたいな……あっ!?視線が突き刺さるですっ!?」

「だ、誰だ!?」


 フードを被ったやつが叫ぶ。というか、みんな黒いフード被ってるな。見た目からして正に『邪教やってます』みたいな感じだな。


「俺は妖精さんの使いだ」

「ふぇ!?」

 

 間抜けな声をあげるリーフィを横目に、辺りを確認する。地下室には祭壇があり、その上に『悪魔デーモン』が鎮座している。周りには邪教徒が集っている。そしてそこから少し離れたところに手足を縛られた人たちがいる。あの中に知り合いがいるのか?


「とりあえず、お前ら。これでもくらっとけ『イルタナ』」

「なにっ!?」

「ぐわぁぁっ!?」

「おい!?なんだこれ!?」

「うわっ!?誰だ俺に当たったやつは!?」


 邪教徒の奴らの顔の部分を暗闇が覆う。もはやそこに感覚はない。視覚と顔の触覚をのだ。サラの兄以来、久々に使った魔法だ。


「むっ、今の魔法は……人間、もしかして暗黒魔法が使えるのか……?」

「ん?そうだな。なんでだろうな」

「スルガさん!?そんな魔法が使えるですか!?何者です!?」


 いや普通の人間だよ?ただちょっと得意なことが多いだけのね。


「リーフィ、生け贄の人たちの拘束を解けるか?」

「余裕です!けど、スルガさんは?」

「コイツらを片付ける」


 籠手を空間魔法で何もないところから取り出し、装着する。うん、これで完璧だ。


「今のは……空間魔法?お前、本当に人間か?」

「そのはずだ」


 悪魔、ミドラーが驚いたようにこちらを見る。

 いやだって、持ち歩くには邪魔だったからよく言う『アイテムボックス』とかが欲しかったんだよ。小説とかで読んだから想像しやすかったぜ。


「あ、お前の相手はあとでするから、先にこの邪教徒の方たちを片付けることにするわ」

「お、おい!?目が見えないのはお前のせいなのか!?」

「そうだな、でももうすぐ意識もなくなるから、気にすんな」


 俺は『身体強化フィジカルバースト』を発動して、戸惑っている邪教徒の無防備な腹を殴り飛ばす。


「ぐはっっぁ!?」

「誰かは確認してないが、俺の知り合いがお世話になったみたいだからな、


「ぐべばっ!?」

「うわらばっ!?」

「あんっっ!?」

「どぅ!?」

「とろわぁっ!?」


 かなり強く殴り、壁まで吹き飛ばす。強い衝撃に、邪教徒は意識を無くし、どんどんその数は減っていく。


「スルガさん!避難終わらせたです!」

「りょーかい!」


 最後の一人を殴り飛ばして、周りをみる。どうやら生け贄とされた人たちはみんな逃げ切れたみたいだ。けど、知り合いが居たはずなんだが…全く分からなかったな?気配も感じなかったし……


「おい人間…」

「あー、ミドラーさん?帰ってくれてもいいんすよ?」

「ぐわはは、ぐわははは、ぐわははははっ!!」

「うるさっ」


 地下室がミシミシと言うほどの音圧。叫ぶだけでこの威力とは。


「面白いぞ人間!!悪魔じゃないことが惜しいくらいだっ!!」

「あーはいはい、お褒めに預り光栄ですよミドラー様」

「スルガさん……なんでそんな煽るんです……」


 え、だってなんか上から目線でムカつくから。あとうるさい。耳に障る。


「行くぞ人間!久しぶりに血がたぎるぞぉ!!」


 ミドラーは祭壇に置かれていた大剣を手に取り、吠える。


「リーフィ、離れてろ」

「は、はいです!気を付けてです!ソイツは多分、上級魔族の中でもかなり強いはずです!」


 リーフィを後ろに回し、十分に距離を取ったところでミドラーが向かってくる。


「ぐっ!?」

「どうした人間!!この程度か!?」


 降り下ろされる大剣を籠手で受け止める……が、重っ!?重すぎだろ……!?


「これならどうだぁっ!?」


 ミドラーが言うと、急に氷の柱がそこかしこから飛んでくる。


「ふっざけんなっ!」


 籠手を逸らして大剣をずらし、氷柱を避ける。が、一つが顔を掠り、痛みが走る。傷を負ったのは久しぶりかな……


「ぐわははは!素晴らしいなぁ人間!?こんなに戦える人間がいるとは思わなかったぞ!?なぁ!?」

「知るかよっ!」


 完全に防戦一方だ。一つ一つの攻撃が重い上に、動きも早い。油断すれば回りから飛んでくる氷柱が体を貫こうとする。


「す、スルガさん!?」

「大丈夫だから!下がってろ!」


 心配そうに叫ぶリーフィ。頼むからこっちに来るな。来たら守れる自信がない。


「人間、動きがトロくなってきてるぞぉ?もう終わりかぁぁあ!!!」

「ぐっ!?」


 氷柱に気を取られ大きく降り下ろされた大剣を不安定な体制で受け止めてしまい、吹き飛ばされる。痛い痛い痛い痛い!!


「スルガさんッッ!!」

「来るなリーフィ!!」


 くそっ!おごりすぎた……何がなんとかなるだ…結局この様かよ!今まで怪我なんてしてこなかったから痛みに慣れてないっ……めっちゃいてえ!


「人間の癖に良くやった。だかもう終わりだ、楽しかったぞ」

「そうはいくか……!」


 降り下ろされる大剣をなんとか避ける。


「『イルタナ』!!」

「そんな魔法は効かんぞ!」


 暗黒魔法さえも打ち消される。顔を振り払うだけで防がれるなんて…そんなのありかよ!


 他に何か使える魔法はないのかっ!?召喚魔法を使うか!?いやそんなのダメだ!サツキを犠牲にするかもしれない!そんなのはダメなんだ!……何がある何がある何がある!?


「がはっ!?」

「がはは、後ろから来る氷柱は避けられなかったな?」

「くっそっ!?」


 気付けなかった!なにしてんだおれ!?限界魔法!そうだ限界魔法だ!今まで使ってこなかったがここで使うしかないよな!


「限界ま──」

「そうはいかんぞ」

「うがっ!!」


 無理だ…時間が無さすぎる……隙がない……こんなの…無理ゲーだろ。クロエ、ティア、メア……悪い。もう、意識が……






「────もう、なにシてんすか、スルガさん」



ーーーーーーーーーー


はい、失礼します。作者のクラゲんです。


なんと!フォロワーが300人を越え!更にはpvも40000と、なんだか嬉しいことばかりで小躍りしています!

えんやーこーらさーのどっこいどっこいこーらさ。


これからも書き続けていきますので、よろしければ見ていってください。あ、おすすめレビューしてくださっても良いんですよ?ふへ。

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この俺が異世界転移したならばっ!~才能スキルで異世界最強!~ クラゲん @kuragen

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