第21話ティアがお着替えするならばっ! in ラブリィ☆エンジェル

 まったく。ティアといると純粋すぎて、自分が汚いんだと錯覚しそうになっちまうよ…いや実際は汚くないんだよ?ほんとだよ?


「とりあえず、この店に入ってみようぜ?」


「ん。」


 改めて店の外観を見てみると、日本にあるような、きらびやかな服屋とあまり大差はない。お洒落ないい店だ。ほら、ウニクロみたいなね?


ガチャ。カランカラン…

「あのーすいませーん。この子の服を買いたいんですけどー。」


「はぁい!いらっしゃぁい!」


 中に入って声をかけると、店の奥から声が聞こえてきた。


 でもそれは喋り方とは正反対の声だった。つまり…


「あらぁ!可愛いぼうやねぇ!どうしたのかしらん?」


 いやだ……見たくないぞ……俺はこんなことの為に異世界に来たんじゃないんだよ……


「…あるじ?…なんで汗かいてる…の?」


 分かるよ?俺の世界にも普通にいたよ?でもさぁ?異世界にまでさ?いなくてもいいじゃん?いや悪いことじゃないよ?けどさ…


「オカマ…それも筋肉ムキムキの…」


「そうよぉ!!あたしはこのラブリィ☆エンジェルの店長にして、性別を超越したフリコよ!!フリコちゃんって呼んでねえん?」バチンッッッ!!


 うわぁ!!?ウィンクがそのままハートマークの形になって飛び出してきたぞ!?なんだこれ?!スキルなのか!?スキルなのかぁ!?だとしたらたちが悪過ぎるだろぉ!?ウィンクってこんな簡単に人の心を抉ることができるのか!?


「ここそんな名前だったのか……あの、フリコさん?」


「いやん、フリコちゃんって呼んで?」


「見るな!ティア!こんなものを見るなぁ!」


「あるじ…服…買わない…の?」


 そうだった!ティアの服を買うために来たんだった!


「…よし、他の店にいこうな。ティア。」


「いやぁん!!待ってぇん!あたしの店まだ立ち上げたばかりだからお客も少ないのぉ!ほら!見て!こんなに可愛い服もあるのよ!?いい生地も使ってるのにぃ!!どうしてみんなお店に入った瞬間出ていくのぉ!?」



「当たり前だろうが!!可愛い服を買おうと思って入った店にこんなとんでもねぇもんがいたらそりゃあ帰るよ!逃げ帰るよ!?なんでそんな筋肉ムキムキなんだよ!?女装するならせめて細くなれよ!?」


「だってぇん!筋トレが趣味なのぉ!!」


「だったらせめて女装趣味か筋トレを趣味にするかどっちかにしてくれよぉ!!」


 筋肉ムキムキの女装男とか怖すぎだろぉ!?しかもこいつなんセンチあんだよ!?180軽く越えてんぞ!?


「あるじ…こわい…」


「え!?俺なんかしたか!?怖いっていうなら向こうじゃないのか!?」


 ひょろひょろな男と筋肉ムキムキの女装男、どっちがこわいかっていったら、九分九里女装男の方だと思うんだが…


「あるじ…見た目で…判断したら…だめ…」


「うぐっ!?そ、そうだよな…悪い、ティア。」


 そうだよな…ティアもバビロニアという種族なだけで忌避されてきたんだった。一面だけで人を見たらダメだよな。ダメダメだ……こんなんじゃティアに嫌われちまう。


「悪い、フリコさん。偏見だった。許してくれ。この子の服を買いたいんだがいいか?」


「いいのよ、慣れてるから。気にしないで。その子に似合うような服を選べばいいのねん?。あとフリコちゃんでいいのよん?」


「そうか…悪い。あぁ、ティアに似合うやつを数着見繕ってくれ、フリコさん。」


「分かったわん。すぐに持ってくるわ。待っててん。…気楽に呼んでくれたらいいのよん?」


「そうか、気楽に呼ぶならせめてフリコって呼び捨てだな。ちゃん付けだけは譲らん。口が腐る。」


「…あるじ?」


「いやほんとこれだけは勘弁してください…」


「ふふ…あたしその子…ティアちゃんだったかしら?好きよ?もちろんお兄さんもね?」バチンッッッ!!


「だからやめろぉ!なんでウィンクにそんな効果音がつくんだよ!?」


 あれだけで多分人が殺せるんじゃないか?



「さて、こんな感じでどうかしらん?あたし的にはバッチグーだと思うんだけど。」


「バッチグーとかきょうび聞かねーぞ…ティア、着てみてくれるか?」


「ん…分かった。」


 そういうとティアはその場で服を脱ぎ始めた。……その場で服を脱ぎ始めたのだ。


「はいストップ!!カメラ止めて!!」


「て、ティアちゃん!?試着室はあっちよん!?」


「ん…?ここで着替える…?」


 誰か!誰かこの子に常識という名のお薬を飲ませてあげて!!


「あっちに試着室があるそうだからそこで着替えてこい、ティア。」


「ん…分かった。」


「この子…不思議な子ね…」



 お前が言うな。




 しばらく待っていたら二人が戻ってきた。


「ふふん!あたしの見立ては完璧だったわん!!見なさい!新しいティアちゃんを!!」


「ん……あるじ……似合う……?」






「天使か……」


 天使か……………………はっ!!つい放心して思ってたことをそのまま言ってしまった!


「すごいわよねん……この子……常識はずれの可愛さよね……」


 ティアは店の前にあったゴスロリドレスのようなものを着ていた。黒を基調としたゴスロリドレスは綺麗な銀髪のティアを一層引き立てて、まるで西洋の人形がそのまま人間になったようだった。


「まるでどこかの国のお姫様よね。あたし、男を捨てた身だけど、この子なら新しい道を開けそうだわ…」


 とんでもない発言をしているオカマがいるが、正直俺の目には全く映っていない。


「……あるじ?ティア…似合ってない…?」


「そんなことないぞ!?とんでもなく可愛いぞ!!来てよかった!!!」


 まるで天使のようだと言ったが、もはや天使そのものだ。いや、悪魔と呼んだ方がいいのかもしれない。なぜならそのあまりの可愛さ故に、俺は鼻から溢れる幸せを抑えられないからだ。


「ちょ!お兄さん!?鼻血出てるわよ!?」


「ティア…最高だぞ!!」


「ん……うれしい…」


 いつもの無表情が、今は笑顔になっているように感じる。来てよかった。本当に……


「フリコ……俺……もう死んでもいい……」


「ほんとに死ぬわよぉ!?とんでもない量の血が流れ出てるわよぉ!?」


「ん……あるじ……鼻血……拭かないの?」


 あぁ、なんだ。俺の鼻から溢れてるのは鼻血だったのか……もう俺、ロリコンでいいや……






 いややっぱりそれはダメだ!?




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