4. 青い空が君を焼き尽くす

第11話『一日に占いを何度も繰り返し占ってみたら一位が出て安心した』

「——とりあえず常磐、お前いっぺんロックでも抱いとくか?」

「いやそんなもうそれ以上はやめて下さい……勘弁してください!」

  

 私は常磐を玄関で正座させ、膝の上にアンプをドカッと載せてグリグリグリ……とねじり込んだ。

  

「ぐへええええ!」

「反省の色が見えんなあ……ちょいと膝の皿にファズやディストーションでもぶつけてみようかなああ~」

「ひいい……やめてえええ!膝のお皿が割れるううう!」

「勝手に人のもん覗くなっていったよな? 「人のゲームのセーブデータ消すのとスマホ覗くのとパソコン覗くのは犯罪です」ってエンケンさんが真顔で言ってたぞ、コラ」

「ハイそうですね……ってエンケンさんそこまで言った!??」

「はいと~に~か~く! お前今度やったら鈴木みのるさんばりに『ゴッチ式パイルドライバー』掛けてやるからな。魂込めて」

「……はい、すいません」

  

 ダラッとしたいつも通りの会話で始まるのも、最早恒例か。愛しい殿方と結婚したり、ひとりきままに生きたりして、いつの間にか歳を取って色んなことやものが面影だらけになったとしていってもこれを続けるのか? いやいやそれはない。私はコイツと一緒に高齢化対策なんて、ああ考えたくもないし。

  

 外はまだ夜明け前。空けた発泡酒の数は……6本ほど。テレビは早朝ニュースが始まったばかり。ちょうど天気予報と占いの時間で「今日は全国的に晴れ模様でおひつじ座のあなたが最高に輝く一日になるでしょう」と。占いなんてそんなあてにしたことはないけれど、何か充たすのに良い言葉はないか引き続き耳を傾ける。「今日のラッキーカラーは赤。ラッキーアイテムは四つ葉のラッキークローバー」だってなんて。あのさ『ラッキークローバー』なんて一体どこで手に入れるのよ、それ。

  

(あーあー、やっぱり占いはあてにならないよな。)

  

 なんて心の中で嘯いたりして。

 あてもなく、わからないまま生きていくほうが、良いのかも知れない。あてのある酒は確かに酔いを残さないけれど、現実に戻ったとき少し虚しい。あてどない酒は永遠に無限のまま。それはいけないと言うけれど、いつかは終えなきゃと思うけれど、たまに分からないことに延々とたゆたうことが私だけに許された贅沢なんだ、と思うんだ。

  

「あ、蟹座どうだって?」

「(ポツリと)12位。今日死にまーす」

「ふざっけんな!今日一日一歩たりとも出歩いてたまるか!」

「お前今日大事な仕事だろうが。しっかりキリキリ働いてこい! バッドラックだ!」

「ひでえ……神も仏もありゃしねえ」

「神様がお前ごときに目をかけていると思うな!」

「(逆ギレし)うるせー別に目をかけてもらおうと思ってもねーよ!」

  

 減らず口ばかり叩いて早朝から家を後にしていく常磐。今日はあいついつものカレー屋のバイトじゃない。初めてのモデルの仕事だって言ってた。大したこと出来はしないんだろうけど、(一応)あいつにとって今日の出来事が大した一歩になりますようにってほんの少しだけでも願った。

  

 ***

  

 ラジオ番組の仕事は順調かな、と思う。土肥さんが企画したラジオドラマ(土肥さん曰く『ラジメーション』なんて呼んでいた)がようやく始まる。私がヒロインの声をあてることになって。慣れないことだから緊張するし、マイクに近づくたび、思わぬセリフが勝手に飛び出しそうで。一度飲み込んで言うタイミングを逃したり逆にとちったりしてNG出すこともありで。

 それでも何とかやり通し、どうだったかな? と思うと良い感じで植田さんの笑顔が待っていた。素直にやった、と思った。


 ドラマは魔法武装少女を目指すまじマンジなアンドロイドたちが街の平和を守るためについうっかりやりすぎちゃって自分たちが持っている『世界を滅ぼしかねない』力を持て余した最新武装魔法で街中を破壊、蹂躙し大混乱に陥れるというドタバタコメディー。植田さんはそんな危険でまじマンジな魔法武装少女たちの発明家少年役。私がその幼なじみ。魔法武装少女たちは5人いて、ベテラン声優さんから今をときめくスター声優さんまでキャスティングされている。

  

 ただ少し困った話。トップ声優としてひた走っていた今江優香さんはこの作品の参加についてあんまり乗り気じゃなかった。事務所が取ってきたお仕事にとりあえず乗ったもののやっていることは自分の本意ではないようで。

  

「……ねえこれってさ、さっきのでほんと面白いのかな?」

「え?」

「何だかさ、ほんとに面白く伝わってるのか不安で……」

「まあでも演出の人はOK出していたし」

「でも何かさ。ギリギリまで待たせといてこれなのかなって。いやまあ良いんだけど」

「いいのなら良いんじゃない? あんまり色々言っても楽しくなんないしさ。ウチらなりにさ、楽しくやろうよ」

「植田くんは良いのかな? これ?」

「いやまあ良いも何も。出されたものをいかに演じるかが大事であって……」

「あーだったらもう話にならないじゃない。これが面白いかどうかの話であって、演じること以前に!」

「でもさ、やってみて面白くなることだって……」

「この回に魔法の話ひとつでもあった? 花見でドタバタして内輪ネタで盛り上がって終わりって笑いにもなんないアドリブ差し込んじゃったりまでしてわかんないよそんなの」

「あ、それ同感。私したこともないとかやったし」


 さすがに口には出せないが正直なところ、私もそれは同感。脚本を書いている人が何だかあまり乗り気でないような、そんな気がして。コメディ、やりたいって言うより何だろうこれは……これを楽しんでってずっと聞けるものかな? 正直キツイよな~って感じで。


 わからない人にはとことんわからないようなことばかり並べて、正直私なんて最近のアニメの事ほんとにわからないからそんなマニアックなことを色々並べられてもほんと「……ごめんなさい」って感じだし、仕事とは言えこれをる役者さんのことを考えるとなあ、と。

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