あと96日。 《中》


“まおカ”とはあるまおまおシスターズ(略してまおシス)というゲームに出てくるキャラクターたちがこぞって1位を目指すカーレースゲームである。

 キャラクターごとに違う重さで、同じ車を使っていても加速やぶつかった時に飛ばされるかどうかなどが変わってくる。

 乗り物のバリレーションも幅広く、加速に特化したものからスピードに特化したもの、重さに特化したものなど多くの種類がある。


 その中でもひときわ人気なのがうさちゃんバギーである。

 まおシスに出てくるうさぎの姿をしたモンスター、通称うさちゃんの形をしたバギーだ。このバギーは初心者には少し難しいが、ある程度やり込んだ3000から4000レートの人たちに大人気だ。


 迷わずうさちゃんバギーを選択した私を見てトウヤ先輩はこう言った。



「へぇ、ハルはうさちゃんバギー使ってるんだ〜」


『トウヤ先輩はバイクか…』


「まぁね。バイクの方が俺的に扱いやすいし」


『やっぱり扱いやすい方がいいのかな〜…』


「そりゃそうだよ。みんなと同じじゃダメだよ。みんなと一括りにされるからね」



 トウヤ先輩がそう言うと同時に画面にはオンラインで集まった12人のプレイヤーとそのプレイヤーたちが選んだコースが表示される。

 その中からランダムに選ばれたのはトウヤ先輩のお得意の曲がりカーブが多い“ゆらゆら幽覧船”コース。



『げ。まじか』


「へへっ。一位いっただき〜♪」



 ニヤリ、と不敵な笑みを浮かべてコントローラーを握るトウヤ先輩。

 そんなトウヤ先輩に負けるもんか、と私も画面をガン見しながらコントローラーを握り直す。


 が。



「はい、余裕でクリア〜」



“ゆらゆら幽覧船”コース終了時にはトウヤ先輩は堂々の1位だった。

 一方私は無敵状態にも関わらず4位という不甲斐ない結果となった。

 肩を落とす私にトウヤ先輩は笑いながら「ナイスファイトッ」と一言だけ言った。



『…くっ、悔しい…っ!も、もうワンレース!!』


「仕方がないなぁ。受けて立とう」


『よっし!』


「じゃーさ、負けたら夕飯おごりね」


『なにそれ知らない!!』


「今決めたもん。ほら、始まるよ」



 トウヤ先輩は笑いながら画面を見つめる。

 夕飯をおごるのは嫌だから真剣に勝負しよう、と心に決めて私も画面を見た。


 しかしこの後、日が暮れるまでまおカをやったが全部のレースで私がトウヤ先輩に勝てたレースは1つもなく、夕飯を奢る事になってしまったという。

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