あと96日。《上》


 今日は何もない。バイトも、遊ぶ予定も、動画を見る予定も、ない。


 つまり暇である。


 私は何をしようか、と視界に映る96という数字を見る。

 ここ数日で分かった事は、視界に映る数字は日が変わると同時にカウントされるという事だけ。

 今日が2月4日だから96日後は5月10日の木曜日。…自分でも驚くほどに特にな何の予定もない日だった。

 ちまちまとカレンダーを見ながら特定していたのがバカらしくなってきた。


 私はベットに横になり、先程からうるさいほど通知音を鳴らしていた携帯をのぞき込む。

 携帯画面を埋め尽くしていたのはトウヤ先輩のメッセージ。



《Message トウヤ先輩:暇組2人で遊ぼ》

《Message トウヤ先輩:部屋に行くね〜》

《Message トウヤ先輩:そういえば目は?》

《Message トウヤ先輩:平気?》



 勝手に暇組に混ぜているのは気に食わないがこれで少しは気が紛れると思った自分がいるのも事実。

 私はため息をつきながら「了解」とメッセージを送り、部屋の片付けとパジャマから部屋着へと着替える。

 あとは少しメイクをするだけかな、なんて思っていると玄関の方からチャイムの音が鳴る。


 ため息をつきながら私は玄関へと向かい、一応の事を視野に入れてチェーンを付けたままドアを開ける。



「オハヨ」


『おはよう。チェーン外すね』


「うん」



 私はチェーンを外してトウヤ先輩を中へ招き入れた。


 実は私とトウヤ先輩は同じマンションに住んでいる。

 元々地元の大学ではなく都内の大学に進学した私は寮暮らしを余儀なくされていた。しかし大学を止めるにあたり、大学の寮ではなく実家に帰るか一人暮らしをするかという選択をされていた。


 まぁ、実家に帰れば「どうしてやめたんだ」、とか「やめちゃってもったいない」、などと親戚一同に言われるのが嫌だった私にとって選択はあってないようなものだった。

 しかしそこで浮かび上がったのが一人暮らしをするマンションの確保。何気なく相談したトウヤ先輩の勧めでバイトから比較的近くて格安の今のマンションにお世話になっているというわけだ。

 それからというもの、何かと口実を作っては私の部屋に遊びにきているのである。



「なんでチェーンしてたのさ」



 部屋に入るなりトウヤ先輩はそう私に聞く。



『最近、物騒でしょ?だから』


「俺、遊びに行くって言ったのに〜」


『はいはい。トウヤ先輩の好きなお菓子食べていいから』


「えっ、グミあんの!?」


『この間、なかったら駄々こねたじゃん』


「ラッキー!」



そう言うと、トウヤ先輩は私の家の冷蔵庫を手慣れた感じで開けてお目当のグミを発見する。

そんなトウヤ先輩を見ていると弟が家に遊びにきた感じで少し微笑ましい。



「ハル、今日はまおカしよ!」


『いいよ〜。前回はボッコボッコにされたから今回こそは勝つ!』


「レート1万越えの俺には勝てないって。レートいくつ?」


『昨日4000超エマシタ』


「クソザコじゃん」


『お前のアイテム全部コインにしろ』



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