第97話 爆弾

 広い中庭がある学校にいた。

 私は中学生くらいだろうか…。

 薄暗い校舎、生徒の姿はまばら。


 2階のベランダから中庭を眺める。

 見覚えの無いクラスメイトが話しかけてきた。

「すぐに逃げないと、中庭に爆弾が仕掛けられたんだって」

 私は、1度は校舎の外に出たのだが、気になって再び校舎に戻った。


 数人のクラスメイトが中庭で爆弾を探している。

「池のあたりに仕掛けたらしいんだが…」

 私も彼らと一緒に爆弾を探すのだが見つからない。

 もう逃げないと…そう思いながらも、必死で探した。

 中庭の隅に、小さな石碑がある、その周りにも僅かだが水が溜まっている。

 もしかして、そう思い石碑の後ろを覗く、ソコには時限式の爆弾があった。

「貸しなさい」

 私の後ろに立っていた中年の教師が爆弾をひったくり走り、爆弾を宙に投げた。

 爆発の威力は大したことはなく、2階の教室が滅茶苦茶になった程度であった。


 私は、そのまま校舎の外に出ることは無く、2階へ上がっていく。

 中庭から見えた教室は滅茶苦茶だったはずだが、扉を開けると整理されていない物置のような部屋に変わっていた。


 ほこりを被った机に腰かけた私は、ここに泊まるつもりでいた。


 もう誰も居ないはずの校舎、ドアが開いて、男が1人入ってきた。

 生徒でも教師でもないようだ。


 30代半ばと思しき男、しばらく彼と話していた。

「キミはなぜ逃げなかったのか?」

 そう聞かれた、私は返答に困った…。

 見透かされているような気がしたからだ。


 皆に良いところを見せたい、凄いと言われたい、そんな打算が私にはあった。


 それが酷く恥ずかしく、私は項垂れていた。


 あの教師がやった、爆弾を宙に投げる役、それは私のはずだったのだ…そう思っていたから、だから、私は今、校舎に残っているのだ。

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