第93話 インド

 インドにいた。

 目の前で乗るはずの飛行機が車と接触して、飛べなくなった。

 滑走路から離陸することはなく、普通の道路から飛び立とうとしたからだ。

(そうなるよな…)

 そう思った。


 知り合いらしいインド人の若い男性の家に1晩泊まることになった。

「ここがキミの部屋だ」

 石でできた家、指さされた部屋は、棺桶を縦に置いたような部屋?が並んでいる。

 1人に一部屋あるようだ。

 家族は彼を除いて4人、全員女性だ。

 母親、妻、姉、妹。


 風呂に入れと言われて風呂場へ向かう、浴槽はやはり石で造られている。

 全員裸で浴槽の前に並んでいる。

 彼の姉から手渡されたタオルは薄いピンクで大分汚れている、そして臭いが気になる。

 インド人らしい褐色の肌が狭く暗い浴槽で窮屈に蠢く。


 それは淫靡でもあり、不気味でもあった。

 私は風呂を諦めて、棺桶のような部屋に裸のまま戻る。

 棺桶である以上、身体を自由にすることなどできない。

 ただ、直立に立っているだけだ。


 彼の母親と姉がニヤニヤと笑いながら、部屋のを閉めた。

 もう2度と開かないような気がした。

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