第88話 集落

 荒廃した街を彷徨っていた。

 見知らぬ家族と行動を共にしている。

 父親、母親、息子、そして私。

 ホコリまみれの軽自動車に乗っている。

 かつての小学校の跡地に小さな集落を見つけ、私達は、そこで宿をとることにした。

 集落には、背の低い村人が30人ほど暮らしている。

 独自の宗教感を持っているようで、小学校内には立ち入らないように暮らしている。

 彼らはグランドで粗末な小屋を建て、そこで暮らしている。

 用具室の道具は共有しているようで、道具を持ち出し大切に使っていた。

 水道は使えるようで、水は豊富、放牧も行い豊かに暮らしている。

 夕食は、牛肉を中心とした焼肉であった。

 私は、家族ではないので、食べたい気持ちを抑えていた。

 父親はソレを察したようで、一番大きな肉を私の皿に乗せて笑う。


 肉を食べても味がしない。

 何を食べても味がしない。


 皆は美味しいと食べているのだが、不思議と食べ物を口に運んだという感覚がない。


 夜、小学校の方へ歩いて行く。


 風景が変わる…目の前の建物が、小さくなっていく、俯瞰で見ているような視界に変わる。

 私は、両手で箱庭を持っていた。

 箱庭の中には、先ほどまでいた小学校、集落があった。


 私は、箱庭を眺めながら、箱庭の中で暮らす空想に耽っていたのだ。

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