第83話 逢えないヒト

 アパートに昔付き合っていた彼女が泊まりに来ていた。

 私は翌日、仕事だったのだが無断欠勤してしまった。

 外は雪で、自分の車を出せない。

 私は、医者に行かなくてはならない。

 彼女を部屋に残し、私は歩いて医者へ向かった。

 着いた場所は医者ではなく、レストランの厨房、そこで働くシェフは私の知り合いのようだ。

 彼は、タマゴ料理を専門に任されているようで忙しく働いていた。

 無断欠勤した私がココにいることを心配している。

 そのせいだろうか、タマゴの殻を料理に混ぜてしまい、客から酷い叱責を受けることになってしまう。

 心配ないと彼は言うのだが…私はその場にいることが居た堪れなくなり、厨房を後した外に出て歩く私を反対の道路から幾人もの同僚達がサボりだと指を差す。

 振り向くことなく歩を早めその場を立ち去り、医者に向かう。

 医院の中には、死んだはずの祖母がおり、会社を無断欠勤した私を心配していた。

 結局、私は医者には会えず、医院を出て、アパートへ帰る。


 歩き続けるのだが…アパートに戻れない。

 早く彼女に逢いたい。

 そのために会社を休んだのに…。


 私は、どこを歩いているのだろう、見知らぬ場所で積もる雪に足を捕られながら、痛む身体を引きずりながら、逢いたい想いだけで歩く…。

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