第72話 出戻り1
何らかの用事で私は休職していた。
明日から戻ることになるのだが、その前に会社に行ってみようと車を走らせる。
時刻は16:44 着くころには残業している人しかいないから、好都合だと思った。
会社に着いて事務所へ向かう。
事務所へは何か複雑な通路を歩いて行かねばならず、私はバインダーに書類を挟んで持っていた。
私の前を歩いていた女子社員が、赤い鉄骨に突然ぶら下がり、片手で進み始めた。
地面がないわけではないが、なぜか皆、そうやって進んでいく。
私も、ぶら下がるのだが、片手ではどうにも進むことが出来ずに落ちてしまう。
「桜雪さん、久しぶりだから、仕方ないですよ」
見知らぬ女子社員が私を追い抜いて進んでいく。
私は笑いながら「パス」と言って、歩いて事務所へ向かう。
私は不安に駆られていた。
休んでいる間に、私は無能になっていることを自覚したからだ。
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