第67話 本屋

 小さな本屋にいた。

 おそらく私は小学生で同級生と2人で模型雑誌を買いに行ったらしい。

 同級生は、私が立ち読みで、目当ての模型雑誌パラパラとめくっている間に購入して出て行ってしまった。

 私は、興味のある内容ではなかったので棚に戻して他の本を見ている。

 雑誌は全て裏側になっており、表紙、背表紙は、ひっくり返さないと見えない。

 とても古い漫画が並んでいた。

 そう…私はいつの間にか大人になっていた。

 本屋はホコリまみれに変わり、とても営業しているようには思えない。

 ただの廃墟のようだ。

 子供の頃に読んでいた漫画や雑誌が並ぶというか残されたままの潰れた本屋。

 懐かしくもあり、また何か、お宝的な本があるかもと私は、狭い本屋を漁るように本を手に取る。

 本屋の入口に老婆が座っていた。

 この本屋の主らしい。

「もし良かったら…私が死んだら、この本屋の処分を任せたいんだけど…」

 申し訳なさそうに私に話しかける。

「私に…なぜ?」

「アンタは…本が好きだったから…」

「いえ、ご家族に頼まれてはどうでしょう、ただ立ち寄っただけですから」


 私は本屋を出て、振り返って気付いた。


 この本屋は通学路の途中にあった小さな本屋だと。

 暑い夏の午後のような日差しの中、本屋は光に消される様に消えて行った。

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