第25夜 KISS

 とても長い間、そうしていたような気がする。

 私は誰かとキスしている。

 とても細い身体、足、懐かしいような…興奮するというより、安心している。

 長い黒い髪を指に絡ませ、目を閉じる。

 誰なのだろう…細い腰、覚えがあるような気もする。

 唇を放そうとしないほどのキス…とても長いキス。


 私の両手が彼女の身体を弄る。

 だけど…顔が解らない。

 目を開けると、長い黒髪の向こう側に木の机が見える。

 ここは何処なのか、木陰のような気もする。

 少なくても室内ではない。

 芝生の上にポツンと置かれた机の上で書類が風で飛ばされていく…。


 それを気に掛けながら、それでも私は彼女から離れられずにいる。


 とても長い時間が、ただそうして流れていくようで…流れていたようで…。

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