第97話

「こうなっては、過去の伝承や監理局の情報蓄積もあてにはなりません……つまり……」


「私達が人柱になって戦うって事だね……」


 シフォンと鏡花の心層の交わりに、乱暴な表現で介入するエリザベス。


 人柱……極端な表現だが、これまで有効だった攻撃が効かないなら、新たな攻撃方法を「創造」し、試す……それが効かないなら、また創造し、試す……その繰り返し……。


 試す過程での魔法少女の命の犠牲もいとわない……。


 故に……人柱……。


「既に予備役、退役組の召集を試みたのですが、とある事情で私達の行動に制限がかけられました」


「ちっ……」


 堕ちる鏡花の声色に、裏の事情を知るかの様に、似つかわしくない舌打ちを放つリンスロット……。




「全ては私の力不足です……みなさんの試す攻撃は、監理局が収集、分析して後に続く世代に継承されます……」




「まっ、データ採取って事だな……」


「ですね……」


「だね……」


 アンテロッティがぶっちゃけ、ローグ、コステリッツが深く頷き悟る……。


 大人達の子供じみた言い訳と画策。


 欧州カルテットにしてみれば、日常茶飯事の「景色」……。


 その振る舞いは自身にも、監理局にも疑心暗鬼な鏡花を優しく擁護さえする……。


 それこそが大人であり、真の「性質」なのだと欧州カルテットは体感し、ある意味達観している。




「では……行きましょう」


 シフォンと欧州カルテットが、裏組の衛星型に向かう。


 裏組の衛星型と融合した核は、黒く蠢いていた外殻を吹き飛ばし、もう正二十面体ではなく、1キロ程の大きさのブリリアントカットされた「宝石」に変貌を遂げている……。


 無色透明な衣の内部で、虹色に輝く生まれ変わった核……。




「あぁ、合体しちゃった……」


「合体だけならいいんだけれど……」


 りおんの緩い感想と正反対に、募るひばりの不安……。




「誰か、試しに攻撃を仕掛ける人はいませんか……」


 エリザベスの提案に押し黙り、核に見惚れている「フリ」を貫く魔法少女達……。




「誰もいらっしゃらないなら、わたくしが攻撃致しますわ……」


 リンスロットが早くも到着し、後ろにシフォン、アンテロッティ、ローグ、コステリッツが控える。


「本当に誰も攻撃致しませんの……」


 とある方向を見つめ、呆れ気味に言うリンスロット。




「ではリンスロットさん……お願いします」


「わかりましたわ……」


 エリザベスが言い、リンスロットが応じた時、表組の魔法少女達も合流した。


 全ての魔法少女の瞳が、リンスロットに焦点を合わせる……。

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