第85話
これにはアジア、オセアニア諸国の魔法少女輩出国も、日本の主張に同調し加勢する。
近隣諸国の賛同を得た日本は、これ以上事態が悪化する事を回避する為に配慮し、抑制していた防衛費の増加もやむなし……と勢いに乗る。
軍国主義の復活だ……中国、ロシアが叫び、机を叩く。
平和条約締結延期及び、北方四島返還交渉の中止も辞さないとロシアが詰め寄る。
中国も、尖閣問題を突きつける。
日本代表が目配せをする。
目配せした先のアメリカがカードを切る。
同盟国日本に差し迫る「脅威」に、ダウングレードなしのステルス戦闘機製造のライセンス供与。
短、中、長距離弾道ミサイル迎撃システムの追加配備及び観測レーダー群の増強。
イージス艦の複数艦建造に、日本が「自粛」してきた原子力空母……そして、攻撃型及び戦略型原子力潜水艦の建造と観測、軍事衛星の運用をも承認し、日本もいたく乗り気だと深く静かに言った。
日本には、それらを建造、運用する技術力、組織力もあるとアメリカ代表の眼が凄む。
議場にどよめきが起こる。
仕上げにアメリカ代表はロシア、中国代表に向けて強い意思を込めた視線を送る。
外交交渉に手練れた両国代表は、アメリカの思惑を読み取った。
究極の「牽制」……。
日本の「核配備」……。
他の国々も意図を読み解き、静まる議場。
日本代表の女性の口角が不適に上がる。
「では、今宵の会議はここまで……」
涼しい瞳で議場での「演目」を黙って鑑賞していた魔法監理局の上部組織である女性オブザーバーが、場の空気を解析し、閉幕を告げた。
オブザーバーの言葉には誰も逆らえない。
尚も……
世界の「リーダー」でありたいアメリカ。
世界の「標準」でありたいイギリス。
世界の「文化の中心」でありたいフランス。
彼らから、覇権を奪いたいロシア、中国……。
新たに監理局全額負担により、軍事衛星は造られ、どこぞの国の監視を再開するだろう。
色々な事象が絡み、今回は監理局、アメリカ、イギリス主導で会議は閉じられた。
故に、その逆もあり得る策略に満ちた演目。
席を立ち、各国代表達が雑談と握手を交わす。
あろう事か、さっきまで非難しあっていた常任理事国、日本代表も先程までの「攻防戦」をあっさりと忘れ、互いに奥さんは、子供は元気か……などと雑談を楽しみ、笑い、力強い握手や抱擁を交わす。
瞳は笑い、右手で親愛なる握手を交わし、信頼と敬意の抱擁……。
しかし、左手には相手を殺す「欺瞞」で鋭利なナイフを隠し持つ事を忘れてはいない……。
こうして世界は廻り、踊る……。
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