第84話

 監理局がダミー会社を介して一棟買いした高層マンションの上層階6戸を1年生4人ひと組みで5戸使用。


 2年生、3年生のふたりひと組みで残りの1戸を振り分け、それぞれに、身の周りの世話をするハウスメイドがつく。


 これに伴い、魔法監理局の本部もフランスのパリから日本へと移された。


 一極集中……。


 現状の魔法少女の数ならば、ひとつに纏めて管理、運営するのが効率的かつ経済的。


 平和ボケし、かつ治安が良くなにかと「融通」の利く日本が移設先に選ばれたのは、自然な流れに見えるが、そこにも様々な意図が絡む……。


 本部移設や魔法少女達の「旅立ち」が素早く行われた要因が、りおんの「初陣」のスペースデブリ消去事件であるのは言うまでもない。


 散らばっている「懸念材料」を集め、管理、監視する……大人の周到で猥雑な理屈である。




 問題が「円滑」に解決した議場では、現世界での非難合戦が展開されている。


 ここぞとばかり気勢を上げ、攻めるロシア、中国。


 対峙するアメリカ、イギリス。


 フランスも隙を伺い、魔法少女輩出国も、常任理事国に牙を剥く。


 かの懸案事項よりも、こちらが本題ではないかと錯覚する程に議論は白熱、応酬され、議場の熱は上がる。


 独立した共和国を、強引に編入するロシアのやり方をアメリカが問う。


 編入は合法であり、内政干渉と凄むロシア。


 あまり詮索し、経済制裁などという手段を行使するなら、欧州に供給している天然ガスのパイプラインを閉じるぞ……と「やんわり」と牽制すると、隣の席の中国代表が深く頷く。


 ならばと、イギリス代表の目配せに反応したサウジアラビア代表が、原油増産をほのめかし、増産分を欧州に優先的にまわすとロシアを「脅す」。


 そうなったら、ロシアの天然ガスはいらなくなるなぁ……と皮肉るフランス。


 一瞬、議場が静まるが「まぁまぁ」とイギリス代表が両陣営を宥める。


 何も解決していないが、険悪な空気が妙に中和される。




 そして「議場」は次の獲物を探す……。


 矛先は、日本。


 りおんのバイアスがかかり、更に密かに画策し、実現直前に監理局本部移設をかっさわられ面目丸潰れ……と被害妄想の中国が絡み出す。


 お決まりの歴史問題をまくし立て、戦争責任だの、侵略国家だのと、声を荒げて日本を執拗に責める。


 表の世界では、判で押した言葉を繰り返す日本だが、裏世界のこの場では反抗の意思を表す。


 では、近年の貴国の軍事拡大と傍若無人な海洋進出に人権侵害、監視、モラル欠如等に「大国」としての自覚はあるのか……日本代表の女性が、美しい容姿と裏腹に声を張る……。

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