第77話
服のセンスも着こなしも「一流」……よく見ればりおんとそう変わらない年齢……。
デニム生地のマイクロミニスカートにレギンスで覆われた張りのある太腿……全てを「魅せている」様で見せていない……。
少女の無垢さと大人の策略が、躰と魂に同居するりおんとは「真逆」な少女……。
彼女は何階の住人なのか……セキュリティカードを持つ華奢な指先にりおんの視線は集中する。
「あっ……」
心で呟くりおん。
45階……。
静かにスムースに上昇するエレベーター。
まさか、本当にあのアイドルグループが住んでいる。
あの「ヴィーラヴ」が……。
彼女の背中が「そうよ」と言い、息を呑むりおん。
「アイドルは、自分の心の鏡……」
ぼそっと彼女が言う……。
りおんの魂が反応する。
この台詞、ふたりきり、密室、エレベーター。
彼女なりにアレンジを加えてはいるが、間違いなくあのシーンの再現……。
からかっているのか、それとも、りおんと「同種」の属性を備え、仕掛けているのか。
迷うりおん……。
「アイドルは、自分の心の鏡……」
りおんに問う様に、再び彼女は言った……。
これは……決意し、意思を言葉に変換するりおん。
「何ですって……?」
「アイドルに頼らなくていい……あなたにはアイドルにならない幸せがある……」
「えっらそうな事言わないでっ……エコヒイキのくせにっ……!」
「わたしが天才だったから、自分の力でアイドルに選ばれたのよ……コネでアイドルやってるあんたたちとは違うの」
「私はつながっているだけ……アイドルでしか、ヒトとつながらないだけ……」
「うるさい……あんたプロデューサーの言うことは何でも聞く、お澄まし人形だからヒイキされてるだけでしょ……!」
「私は人形じゃない……」
「人形よっ……少しは自分を知りなさいよ……」
声を張り上げ、右手を振り下ろそうとするりおん。
「パラレルワールドって、あると思う……りおんちゃん」
「えっ……?」
予期せぬ「台詞」に、りおんは静かに右手を下ろす。
「この世界以外にも、いくつかの並行世界が存在し、その数だけ私やりおんちゃんが生きている」
「は、はぁ……」
「あっちの世界でも、私はアイドルやってて、りおんちゃんは普通の中学生なのかな……」
「…………」
「それとも、微妙に設定が変化して私が普通に暮らして、りおんちゃんがアイドルって事も何処かの並行世界ではあり得るのかな……りおんちゃんはどう思う」
「わ、わたしは……」
「こんな話、唐突だよね……でもさ、並行世界の自分って何してるんだろうって時々、考えちゃうんだよね……」
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