第68話
キャサリンも首を捻り、鏡花に反抗する。
彼女達は、魔法少女界における欧州の「事情」を知っている……それに伴う重圧を、リンスロット達が受けている事も……。
ひばりもわかってはいるが、平和ボケした日本人というフィルターが無意識にかかり、練度が異なる。
まして、ごく普通のりおんなどに感じ、理解する「感覚器官」はない……。
「不満ですか……」
悶々とした気の膜を、鏡花が切り裂く……。
『…………』
「では、お願いします……残った皆さんは自習です」
鏡花に逆らえず、黙って受け入れるクラスメイト達……。
鏡花は「はい、良い子達ですね」と趣を滲ませ、教室を後にする……。
「あぁ、忘れてました……」
廊下に出て、引き戸を閉めようとした時、鏡花は勿体ぶった表情で振り返り、言った……。
「りおんさん……お話があるので放課後、進路指導室に来て下さいね……」
お話……きっとあの件の処分が決定したのだ……。
りおんやクラスメイトの誰もがそう、確信した。
鏡花がりおんの返事を待たずに意味深げな笑みを残し、引き戸を閉めた……。
魔法少女もこれで最後……ほっとする気持ちと、魂の奥底で抗い、廻る魔法少女の血が、りおんの躰の中で複雑に絡み、火照る……。
ひばりやクラスメイト達、ステッキさんと別れ、記憶を消されまた「転校」……そして叶えられる普通の生活……そんな処遇だろうか……。
所詮は適当魔法少女……
そもそもの出発点が違う……。
「アンテ、ローグ、コステ……そしてりおん、行きますわよ……」
リンスロットが、じくじくしたりおんの思いに業を煮やし、淀んだ空気を斬り捨てる様に言い、教室を出てゆく……。
「はいよ……」
「はいはい……」
「わかった……」
アンテロッティ、ローグ、コステリッツが続く。
「りおん……」
ひばりに促されて、反射的に立ち上がるりおん。
「あっ、うん……行ってくるねひばり……」
自分ではない誰かが返事をしている様な声で、りおんはひばりに応じ、とぼとぼと教室を出てゆく。
あの屋上には、それぞれのポーターを掲げた少女達が宙に浮き、りおんを待つ……。
「りおん……あなたも早く……」
リンスロットが急かす。
「わかったよ、リンス……」
「ほぅ、今回はウェーブとキューブタイプのミックスタイプか……」
中軌道領域……「とっくに」変身を終え、迫るダークエネルギーを見渡したアンテロッティの声が弾む。
「リンスロット、フォーメーションは……」
ローグが問う。
「この程度のダークエネルギーなら、フォーメーションは必要ありませんわ……」
「だね……」
自信溢れるリンスロットの言葉に、簡潔に同意するコステリッツ……。
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