第62話
りおんの問いかけに、リンスロットやキャサリン、シルフィ、ハンセンは何も言えない……。
ただひとり、落ち込み、無言だったひばりと月下美人は、りおんの問いかけに意識と躰が敏感に反応して口角が僅かに上がった……。
「はぁ……」
外国人のふたりには、無理だったか……ため息に混じるりおんの「絶望」……。
「言いたい事は言ったから……じゃ、ステッキさん防壁を破るよ……」
平坦な物言い、静かな眼差し、粛々とした動作で、ステッキさんの先端に想いを込め、スラッシュ弾を形成するりおん……。
「あのさぁ、おふたりさん……今回だけネタばらしするけど……さっきのはぁ……」
「誠意って、何かね……のアレンジバージョンだよっ……!」
禁断のネタばらしに、やるせなさを織り込ませた声の表情で「規格外」に成長した白く光るスラッシュ弾を防壁へリリースするりおん……。
「あんなもので、わたくしの防壁が破られるわけがありませんわ……」
ブルースターの攻撃など、こんなもの……笑いさえこみ上げる感情を押し殺し、優位性を楽しむリンスロット……。
キャサリンでさえ「良く頑張ったよ、りおん」と心情でりおんを労う……。
しかし、リンスロットの防壁と接触したりおんのスラッシュ弾は、ふたりの得意げな表情の層を一枚づつ剥ぎ取る様に、輝く球体は回転し、防壁を絡め取ってゆく……。
「う、嘘ですわ……」
「こまっしゃくれの防壁が、あんな簡単に……」
ふたりが焦り、そう言った時には「誇らしく」聳えていた防壁は、スラッシュ弾に抵抗さえできなかった……。
防壁を取り込み、黒く変色し不気味に佇む球体。
「ふっ……」
「適当リリースっ……」
昼休み終了まで12分……これから戻っても、お弁当を食べられるか微妙な時間……。
諦め半分のりおんが、スラッシュ弾を再びステッキさんの先端に引き寄せて、形容し難い踊りを舞い「適当」なタイミングでスラッシュ弾をリリースする。
スラッシュ弾は物凄い速度で、宇宙の彼方に消えた……。
と、なる筈だが、そこはりおん……。
スラッシュ弾はまたしても地球方面へ向かい、その先には「おあつらえな」衛星らしき物体が見える。
『ああああ〜〜〜っ……!』
リンスロット、キャサリン、シルフィ、ハンセンが「あの時」のステッキさんと同じ反応で、もう自分達ではどうする事もできなくなったスラッシュ弾の行く末を見守る……。
見守るしかないのだ……。
ひばりは「自由奔放」なりおんを羨ましそうに眺め「奴の魔法少女はいつもただ者じゃねぇな」と月下美人は含み、笑う……。
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