第60話

「どうしてもお弁当を食べたいなら、わたくしの魔法防壁を破ってごらんなさい……まぁ、無理でしょうけれど……」


 自身の優位性を曲げないリンスロット……。




「くっ……くくっ……」


「しゃ〜ねぇ〜なっ……」


 りおんが勢い良く眼鏡を外す……。


「りおん……目つきが……」


 自らを責めていたひばりも驚く、りおんの豹変ぶり。


「やってやんよっ……!」


 りおんは外した眼鏡を、荒ぶる感情のまま握り潰す……。




「ステッキさんっ、あれをやるよっ……!」


「そ、そうか。まぁ致し方ない……また反省文とあのお茶を飲む事になるが……いいだろう、責任は私が持とう……」


 覚悟を決めたステッキさん。


「ひばりは少し離れていて……」


 優しい口調と腕の仕草で、ひばりを防壁から遠ざけるりおん……。




「そこのふたりっ……適当魔法少女の生き様、見とけやぁっ……!」


「ステッキさんっ、お願いしますっ……」


 もう、どうにでもなれ……りおんはあらゆる呪縛を棄てた……。




「うむっ……りおん、バイオフィードバックだっ……!」


 ステッキさんが輝き、言い、それに呼応したりおんの全身から熱と念が放出し、お団子髪は解かれ、解放された髪の毛が逆立つ……。


 同時に頭の中で謎の声の主が、りおんの意識に語りかける……。




『バイオフィードバック……戦う意思が、お前の身体からだを最終兵器に変える……』


 細胞をも震わす重低音と魔法思念が、りおんを中心に広がり、全てを支配してゆく……。


 ひばりも、リンスロットやキャサリンも、場の主導権がりおんに移った事実を感じ、魔法思念の強さと底知れぬ恐ろしさに触れ、魂が動揺し躰が震える……。


 昼休み終了まで……残り17分……。


「さっき、お弁当食べたいなら防壁を破れって言ったよねリンス……」


「リ、リンスって……心外ですわ……」


「いや、もう長ったらしいからリンスでいいよ……それとぉ、イギリス出身……?名門の家柄ぁ……?金髪ドリルヘアに御丁寧な言葉遣いぃ……?」




「はぁ……キャラが立たないよねぇ……全部、何かしらのアニメや漫画のお嬢様キャラのつまみ食いだもんね……」


「りおん、あなたさっきから何を言ってますの……キャラが立たないとか、わたくしにはさっぱりわかりませんわ……」


 気丈に振る舞いつつ、何処か落ち込んでいる様子のリンスロット……それを敏感に感じ取り、嘲笑するキャサリン……。


「そこっ……!笑ってる場合じゃないよっ、キャサリンっ……!」


 キャサリンの設定も「同罪」と斬り捨て、たたみかけるりおん……。

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