第59話
「くっ……」
ひばりが解除、突破を試みるが、とても昼休み終了までに解ける安易なものではない……。
「リンスロットさんっ……!」
「あの女っ……!」
「ふふっ、ひばりも月下美人も無駄ですわ……魔法出力抑制など、とっくにわかってましたわ。しかし、その事でシルフィを責めたりする程わたくしは器の小さな人間ではありませんのよ……」
誰よりも一枚上手……。
そして……寛大……。
リンスロットの声質が、気高さと嫌味の境界で危なげな均衡を保つ……。
「何でしたら、午後の授業をスルーしてこのまま続けても構わないのですけれど、そちらの田舎娘さんは如何かしら……」
「面白れぇ……とことんやろうじゃないか、こまっしゃくれ……」
リンスロットの挑発にキャサリンが応じ、いよいよ収拾がつかなくなる……。
まだ、完全に「殻」を破っていないひばりも打つ手がなくなり、ふたりに、そして自分に落胆のため息を落とす……。
ひばりとて、リンスロットとキャサリン同様にゴールドスターの称号を持ち、魔法少女としての能力は低くはない。
が、ひばりはわかっている……如何にゴールドスターといえど、あのふたりの実力にはまだ手が届いていないという事を……。
故に、その佇まいを利用し、仲裁役を「演じ」ふたりもこれまでは従っていた……しかし、今回は違う。規律を重んじるリンスロットが、午後の授業をスルーして決着をつけると言い出し、魔法防壁まで持ち出してひばりとりおんの行く手を阻む。その防壁を突破できない自身の「弱さ」を不甲斐ないと感じるひばり……。
唇を噛み、月下美人を握る手が震え、瞳から失望の結晶がひばりの頬を伝う……。
「ひばりを……泣かせたね……」
「ステッキさんっ……この魔法防壁を破るよっ……!」
「りおん、それは無理よ……私でさえ破れない防壁なのよ……」
ひばりが声を絞り出し、りおんを諭す……。
「ひばりの言う通りですわ……ブルースターのあなたが破れる程、ひ弱な防壁ではありませんのよ」
得意げな表情でりおんを見下し、格の違いを説くリンスロット……。
「今のはボディーに入ったな……」
リンスロットの「口撃」を、独特の言い回しで解説するキャサリン……。
どうもキャサリンとハンセンはこの状況、喧嘩自体を楽しんでいる様にも見えるし、リンスロットに上手く乗せられている風にも感じられる。
「ふっ、さっきから偉そうに御託並べてさぁ……ひばりをここまで追い詰めて、自分達は好き勝手やってさぁ……それと、わたしお腹空いてるんだよ。遅刻寸前で朝は食べれなかったし……」
「そんな事、わたくしには関係ありませんわ……」
「関係あるんだよっ……だからぁ、お昼休み終わるまでに戻ってお弁当を食べたいんだよっ……!」
低く蠢くりおんの声……。
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