第58話
「冗談ではありませんわ……今日こそは決着をつけますわよ……」
「こっちも退く気はないね……そこでシールドばっか張って逃げ腰のこまっしゃくれが帰りたいって言うんなら、勘弁してやってもいいけどな……」
「無意味な攻撃と戯言を……」
「ふっ、口だけは達者なヘタレ御嬢様がっ……」
ひばりの判定を無視して、夫婦漫才の様に攻撃、防御を繰り返すふたり……。
「あらあら、困ったわ……」
ふたりの「幼さ」に視線を落とし、言うひばり。
「あぁ〜だっりぃ〜〜っ……ひばり、りおんちゃんと帰ろうぜぇ。判定は下したんだから、後はあいつらの自己責任って事で……」
「でも、これって監理局や鏡花さんには秘密にしているから、公になると色々と面倒な事に……」
月下美人の案にすぐにでも乗りたいが、最悪の事態を考えると意識が、体が動かないひばり……。
「シルフィとハンセン、聞こえているでしょ……魔法出力を強制終了してさっさと帰るわよっ……」
動けないひばりを見かねて、月下美人はポーター間会話で「奥の手」を打診する。
「それが、終了コードがリンスロット側からキャンセルされて……」
「ふっ、キャシーも嬢ちゃんも裏コードを使ってるな……それから、俺とシルフィの魔法出力抑制なんて、とっくにバレバレさ。こうなったら、地獄の果てまでつき合うだけさ……」
シルフィは少し動揺し、ハンセンは「人生こんなものさ……」ともう達観し、月下美人の案を閉じた。
「ちっ、堅物姫と無邪気ビッチがっ……!」
月下美人から本音が漏れる。
「大丈夫、りおん……さっきから唸っているけれど」
「うう〜っ……昨日夜更かししてお約束の朝寝坊。急いでお父さんの作った弁当を鞄に放り込んでマンションを出たから……」
「朝ごはん……食べそこねたのね……」
「うん……」
「リンスロットさん、キャサリンさん、昼休みが終わってしまいます。りおんがお弁当を食べたいから今回も引き分けでいいですね……」
りおんを哀れんだひばりが、最終判定を下した。
『…………』
ひばりの決定に応えないふたり……。
「はぁ……帰りましょう、りおん……」
駄々っ子ふたりを見限り、唸るりおんと降下を始めるひばり……。
「ちょっと……リンスロットさんっ……」
その行く手を阻まれたひばりが、声を荒げた。
防壁魔法……ひばりを苛立たせ、りおんを絶望へと追いやる透明な壁……。
シルフィの魔法出力抑制があるとはいえ、リンスロットの展開する防壁は強力……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます