第52話

「何を言っているりおん……こんな狭い場所で決着をつける訳がないだろう……」


「えっ、ステッキさんっ……何処っ……?」


 制服の胸ポケットから、更に小型化したステッキさんが乗り出し言う……。


「さっき鞄から弁当箱を取り出したろう……その隙にな……」


「その隙って……別にステッキさんはついて来なくても……」


「りおんさん……説明不足でごめんなさい。実は……」


 ばつが悪そうにひばりは言い、細くしなやかな腕の先の人差し指を天空に示す……。




「ええええ〜〜っ……」


 りおんの絶叫を合図に、キャサリン、リンスロット、ひばりは胸ポケットに忍ばせていたポーターを取り出す。


「先に行くぜひばり……とろとろすんなよ、こまっしゃくれっ……」


 ポーターを「標準化」させ、飛行魔法を起動し真っ先に空へ上がるキャサリン……。


「がさつな飛び方ですわね……」


 リンスロットが「哀れ」に言い、自身はあくまでも上品に空へ舞う……。


 あっという間に見えなくなるふたり……。




「あぁ〜、そうなんだ……ここじゃなくてあそこでやるんだ……んまぁ、ここじゃあ確かに誰かに見られるって事もあるもんね……」


 ぽかんと、ふたりの行く空を眺め、半分納得、半分面倒な空腹のりおん……。


「じゃぁりおんさん、私達も行きましょうか……」


「わかりましたぁ〜……」


 諦めのりおん……。




「私のポーター、月下美人げっかびじんです。よろしくお願いしますね……」


 既に、数メートル浮いているひばりが、甲斐甲斐しく「彼女」を見つめ、りおんに紹介した……。


「はぁ、またあいつらの下らん喧嘩の仲裁かよ……あ〜〜あ、かったりぃ〜なぁ、ひばり……」


「まあまあ月下さん……そう言わずに。これからはりおんさんも一緒ですから……ねっ……」


「ちっ、しゃ〜ねぇ〜なっ……」


 目を細め、なだめるひばりに渋々と同意する月下美人……。


「あ、あれっ、なんかひばり様のキャラとは間逆のポーターさんですね……」


 ひばり同様のしとやかな趣を想像していたりおんは、彼女の口の悪さに少したじろいだ……。


「はぁぁぁぁぁっ、なんか文句あんのかいっ、デブリクラッシャーのりおんちゃんよぅっ……」


 りおんの意を鋭く察知した月下美人が、もの凄い「剣幕」で睨み、迫る……。


「デ、デ、デ、デブリクラッシャーって何ですかっ……クラッシャージョウ的なネタでしょうか」


「何言ってよだよっ……ったくよぅ……りおんちゃんの愛称だろうがよっ……」


 荒々しい月下美人……。

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