第51話
勢い良く引き戸を開けるキャサリン……続いてリンスロットがひばりに目配せして教室を出てゆく……。
「りおんさん……私達も行きますよ……」
「えっ……?」
鞄から弁当箱を取り出し、空腹を満たそうと意気込んでいたりおんは、ひばりの誘いに拍子抜けした声を吐き、同時に「あぁ、やっぱり」と面倒に巻き込まれた想いを表情に滲ませた……。
「ひばり様、行くって何処に……」
「まぁまぁ……」
りおんの手を、ひばりらしからぬ強引さで引っ張り、ふたりはキャサリンとリンスロットを追う。
りおんの弁当箱は、机の上に切なく残された。
「私、審判で何かあった時の仲裁役でもあるの」
何処にも逃げ場はないのよ風な複雑怪奇な表情で、自らの役割を説明し、りおんにも同じ役割を負わせようと「画策」するひばり……。
「ひとりより、ふたりの方が何かと都合が良いと、りおんさんも思うでしょう」
小走りでふたりを追うひばりが「詰め寄る」。
「いやぁひばり様……わたしがいても何の役にも立たないと思うけど……」
「私の言う事が聞けないのかしら……」
歩を止め、豹変したひばりが「例の物」をりおんに差し出す……。
「蘭塾送り……」
冷徹なひばりの指示……。
「申し訳ありませんひばり様……わたしが間違っておりました……」
素直にりおんは「降伏」した……。
満足げな笑みを浮かべ、再び歩き出すひばり。
「わかってもらえて私、本当に助かるわぁ……」
わざとらしく言い振る舞い、りおんの退路を完全に塞いだひばり……。
「ま、まぁ今回だけなら……」
渋々りおんは同意した……。
「ひばりとりおん……遅いですわよ……」
リンスロットの
昼休みの、はしゃぐ声も届かない薄暗く人の気配もない辿り着いた扉の前……。
キャサリンは先に扉の向こうの世界にいる。
「立ち入り禁止の屋上なの……常時、施錠されているのだけれど、どうやって鍵を開けるのかは……わかりますよね……」
ひばりの説明にりおんは小さく頷き、理解した……要は誰も立ち入らない屋上での、キャサリンとリンスロットのタイマン勝負……。
施錠など「魔法」でどうにでもなる……という事。
リンスロット、ひばりが行き、少し遅れてりおんが屋上へ出る……クローザー機能で扉がゆっくりと閉じられ、誰かの「魔法」で施錠が施された。
キャサリンは、数メートル先の金網フェンスに凭れかかり、リンスロットを睨む眼から「やる気」が溢れる……。
空はこんなに蒼く、澄んで、高いのに……喧嘩の仲裁なんて……。
「お腹……空いたなぁ〜」
左手で腹を撫り、気乗りしない声を落とすりおん。
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