第49話

 その風格と「重責」が、否応なく魂から溢れ、周囲を威圧する……。


「ったく、その名門で御座いって気取った態度がムカつくんだよっ……!」


「あら、意識しているつもりはないのですけれど、気に障ったらごめんなさい、テキサスの田舎娘さん……」


 キャサリンが斬り込み、リンスロットが「丁寧」な嫌味で応じる……。


「ふざけるなっ……ダラスは都会だっつうの。このっ、いつもぐずついた空の下のこまっしゃくれのロンドンお嬢様ぁ〜っ……」


「くっ、ああ言えば、こう言って……まぁそうですわね、薄いコーヒーとコーラばっかり飲んでいたら、脳の思考も子供のままで成長なんかしないですものねぇ……」


 涼しい目つきで「ほぉ〜っほっ」と右手の甲を唇に寄せ、キャサリンを哀れむリンスロット……。


「ふっ、メシのマズイ国の勘違い高飛車女に言われたくないねぇ……」


「た、高飛車……あなたこそステーキと炭酸飲料と、くどくて甘ったるいチェリーパイばかり飲んだり食べたりしているから、そのぶくぶく、ぷにぷにの体つきになってしまうのですわ……お可哀想に……」


「わ、私はそんなに太ってないよっ……なにぃ、サンドウィッチだぁ〜……?ったくまどろっこしいんだよっ……あんなもん、肉汁滴る肉をパンで挟んで豪快にかぶりつけってぇのっ……」


「まぁ、下品な振る舞いです事……」


「下品っ……?上等だぁっ……ティータイムだとか言って、スコーンだかパコーンだかパサついた菓子食って、こちら王室御用達のティーカップセットで御座いますの……オホホホッなんて、苦くてマズイ紅茶を自己満で飲んでばっかだから、融通の利かないヘタレお嬢様になるっつうのぉ〜〜っ……」


 舌を出し、白目を剥いてキャサリンはリンスロットを激しく挑発した……。


「あなたって方は……」


 奥歯を噛みながら言い、苛立ちと悔しさを表現するリンスロット……。


 互いのノーガードの打ち合いに「もっとやれ」と煽るクラスメイト……。




「あ、あのうひばり様……そもそもふたりはどういう理由で言い争いに……」


 自分の席で、ふたりの言い合いとギャラリーを眺めていたりおんは「また始まりましたか」と慣れた涼しい視線で言ったひばりに聞く……。


「今日は、定番の目玉焼きには何をかけるかというテーマで始まったのだけれど……」


「は、はぁ……」


 そんな事で……と、戸惑うりおん……。


 しかし、ふたりの言い争いは今日に始まった事ではない……。


 それは、入学当日から始まった……。

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