第三十二話 頼もしき仲間たち
刻限の半日を過ぎても、街からの応答はなかった。
マンフレート・ド・ダンジューは叫ぶ。
「フィリッポス。
ただちに攻めよっ!
異端者どもを皆殺しにしろっ!!」
フィリッポス・ド・サンフェノは復唱し、頭を下げる。
「かしこまりました」
フィリッポスは指揮官として馬に
兵士たちもそれに続く。
街を
たちまち二万の兵士たちが人口、一千ほどの都市の壁に殺到した。
すると、城壁の上に人影が現れる。
さらに槍をしごき、梯子が外され、数十人という兵士が落ちていく。
(異端者どもめっ!)
どうやら籠城戦の準備はかなり前から、進めていたことがそれだけで分かる。
しかし民の連携は、それだけでは説明できないものを感じさせた。
兵士たちを相手に、
その動きは訓練された傭兵を
だが、まさか傭兵たちがロミオたちに味方するとはとても思えない。
味方したとしても、よほどの物好きだ。
フィリッポスは兵士たちに
「相手は異端者どもだ! 遠慮は無用だぞっ!
皆殺しにせよっ!」
固く閉ざされた門に対しても、兵たちは
そんな兵士たちの元に、何かが降り注ぐ。
(矢だと!?)
攻城槌を支えていた兵士たちが次々、射倒されていく。
梯子を登る兵士たちに対しても、矢が飛ばされていた。
的確な
フィリッポスにも矢はとぶが、剣で叩き落とした。
「将軍閣下。我らもいかせてください!
早く街を落とさなきゃ俺たちは飢え死にしてしまいますよっ!?」
後方待機を任されていた傭兵隊長たちが声を上げる。
「……よし、梯子を作れ。
準備が整い次第、援軍を投入するっ!」
すでに夕方間近だ。
交渉のために半日という時間を無駄にした分、一刻も早く街を落とさなければならない。
※※※※※
夜が更けている。
デイランは闇に目を
敵の焦りが手に取るように、夜になっても星騎士団の本隊は城を攻めようと果敢な戦いを繰り返していた。
それでも闇の中の戦いは決して攻め手には有利には働かず、悪戦苦闘している。
デイランたち騎馬隊は、歩兵部隊に先んじて、敵を望む丘にあった。
陥落必至な場合、ただちに敵の背後を衝くためだ。
しかし、街は持ちこたえている。
本当はこのまま攻撃をしたいところだが、敵の本隊は五万だ。
こちらは数百。
たとえ夜襲をしても、たちまち立て直されるだろう。
やはり歩兵は必要だ。
サロロンの街でロミオと共にある、アウルには使者を送っている。
間に合ってくれれば良いが……。
敵は数ばかり投入している。
しかし街の防備に隙は無い。
実はサロロン周辺の街には、実戦経験のある民を投入していた。
どこが攻められても良いように。
そして敵がサロロンを真っ直ぐ攻撃した場合でも、背後を襲い、デイランたちが合流するまで持ちこたえられるように。
それがこの籠城戦で
そこに兵士が駆けてくる。
「どうした?」
「リュルブレ殿、エリキュス殿、ザルック殿、到着されました」
「三人が?
本当か!?」
ザルックはともかく、リュルブレ、エリキュスの到着は正直、あと二日くらいかかると思っていた。
何せ、一身に敵部隊を受けとめてくれていたのだ。
傷病者を後方に送ったり、馬や武器の補充――何より、休息が必要だと思っていた。
何せ、エリキュスの乗っていた馬ですら、口から泡を吹いて、いつ倒れてもおかしくはなかったのだ。
しかし三人は姿を現した。
リュルブレは言う。
「すまない。もう少し早くつくつもりだったのだが」
「いや。早いくらいだ。
だが、大丈夫なのか? 兵士たちは?」
エリキュスはうなずく。
「安心してくれ。
傷病者の搬送は、そばの街の人間に任せた。
兵士たちも、街が襲われようとしているのに、休んではいられないと、私たちがせっつかれるほどだ」
ザルックは笑みを見せる。
「当たり前だろ。
ここは俺たちの国なんだ。
誰の者でもない。俺たちの……。
ヴェッキヨから取り返したんだ。
今更、あんな連中に好き勝手させられねえんだよっ」
「……ありがとう、三人とも」
デイランはうなずく。
兵士の数は一気に、三千に膨れた。
夜襲をするには十分だ。
「夜襲をするにしても、街の人間たちには私たちが来たことは、どう伝える?」
エリキュスの言葉はもっともである。
「それは考えてある。
うまくいけば、敵の動揺も誘える」
デイランは簡単な打ち合わせをし、部隊を散会させた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます