第287話 心を高める

 おかえりなさい♡


 今日の土曜日は、月に1度のメンタルクリニックの診察日でした。


 いつものように始発のバスに揺られ川崎駅まで出ました。そこから電車を2本乗り継いで目的の駅に到着です。


 時間は8時15分。


 メンタルクリニックに着くとすでに2人いました。9時に整理券が配られて、僕は3番目でした。9時45分から受付が始まるので、それまでドトールで朝食を取り、煙草を吹かして時間になるのを待ちます。


 時間になり、受付を済ませると十文字さんの面接からスタートです。


 最近の十文字さんは、やたらと僕の事を誉めます。今日はメッキ工場の仕事について話をしました。採用されて4カ月が経ちましたが、それは僕が兄の会社で激しく仕事をして来て、社会になじんでいるからだろうと言われました。


 僕は今後のメッキ工場の仕事のプランを話しました。


 今週から1日1時間、勤務時間を増やしていますが、慣れたら月曜日を通勤日にしたいと考えている事を話しました。その後は、段階的に1時間ずつ勤務時間を増やしていき、最終的に週4日の、6時間勤務が目標である事を伝えました。


 自然とタンポポは、卒業と言う事になります。


 僕の前向きな話に十文字さんは大喜びです。


「昇さん、お兄さんの会社を辞めてからここまで来て、とても魅力的になったよ。以前の昇さんは、とても高飛車で女が欲しいとか、そんな話しかしなかったもん。今は一生懸命に生きている感じで心が成長しているんだろうね。最近本とか読んでる?」


「カクヨムの小説を読む程度です。」


「俺が毎日読んでいる本が3冊あるんだよ。バイブルだね。」


 1冊の本を渡されると赤ペンや蛍光ペン、付箋などでボロボロになっていました。


「新入社員が入ると同じ本を1冊渡して読む様に言ってるんだ。昇さんも欲しい?」


 欲しいというと新しい本をくれました。それは京セラの創設者、稲盛和夫さんの書いた本でした。タイトルは「心を高める、経営を伸ばす」です。僕も兄の会社に在籍していた頃はたくさんの本を読みました。


 稲盛和夫さんはたくさんの本を書いていて、僕も何種類か持っています。十文字さんから渡された本は初めて見ました。面接の最後に必ず十文字さんが言う言葉があります。


「昇さん、後悔しないように生きようね。」


 こうして1カ月に1度の面接が終わるのでした。次は筑根先生の診察です。夜も眠れているし、体調もまずまずです。薬の変更はありません。


 診察が終わると480円診察料を支払い、薬局へ。お薬代は980円です。


 帰りの電車に乗り、川崎駅に着くと12時を回っていました。お昼ご飯は食べないで、夕食用に焼き鳥を8本買いました。いつも行列が出来ている焼き鳥店で初めて買いました。978円でした。


 更新を終わらせて、缶チューハイを飲みながら楽しみます。


 明日もお休みなので、ゆっくりと過ごそうと思います。


♥♥♥♥♥


 心を高める。


 今日の十文字さんの面接は良かったと思います。


 僕自身、精神障害者である事に実感がわきません。十文字さんは語ります。昇さんは完治しているのだと。薬という道具を使い普通の人と変わりなく生活出来ていると。その言葉を信じて、自分に向き合っていきたいです。


 落ち込んだり、くじけてしまったりと、試練は続くでしょう。それでも心を高めて成長していきます。


 最後にもう少しお付き合い下さい。


*~*~*


 貧乏神のM君から連絡が来ました。


 携帯を購入したようです。どうでもいいメールが来たので、M君のお金に余裕が有る時にご飯でも食べに行こうと返信しました。


 M君からの返信メールに思わず苦笑いしました。


「彼女にお金が掛かるので、仕事が決まって余裕が出来たら行きましょう。」


 タンポポからも通所を断られて出来る仕事なんてあるのかと思いました。障害年金と生活保護で施設にお世話になっている無職の男に、どんな女が付き合うのか見てみたいものです。


 しかも前科1犯の保護観察の身ですよ。


 振り返ると僕も悪いのです。M君にご馳走をし過ぎです。心の壁の小さな扉は音をたて閉じられました。悪友の竹田と飲んだ方が楽しいでしょう。


 お話しはここまでです。来週頑張ればゴールデンウィークです。気を抜かないでいきましょう。


 今日も逢いに来てくれて感謝です。


 あなたが次も遊びに来てくれますように……


 いってらっしゃい♡

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