第25話 ジャン=クラウド編⑧裸の君…
ジャンは、カレンを抱きかかえホテルに戻ってきた。それを見たメグ・ライアン似のコンシェルジュが慌ててタオルを持ってくる。
「医者を呼んでくれないか。服が濡れて、体が冷えきってしまっている」
「わかりました」
部屋に戻り、カレンをベッドに寝かせる。冷え切った体を包んでいる濡れたドレスを脱がし、バスローブに
カレン、君はなんて綺麗な体をしているんだ……。
このまま君を抱きしめられたら、どんなに幸せだろう。
寝ているカレンにそっと、くちづけを落とす。
ごめん。こんなの……ずるいのはわかってる。でも……。
君がこのまま、そばにいてくれたら……。
トン・トン……。
「ジャン様、お医者様をお連れしました」
コンシェルジュが連れてきた、年老いた医者がカレンの診察を始める。
「体温が下がっているので、体を温めてあげなさい。呼吸には雑音も入っていないし異常がないから、目が覚めたら暖かいスープでも与えなさい。しばらく安静にしていれば大丈夫だろう」
ホッと胸をなでおろした。今夜は、カレンのそばについていよう。年老いた医者がコンシェルジュとともに部屋を出た後、寝ているカレンの顔をそっと覗き込む。
こんな気持ちは、初めてだ。ハリウッドスターになることだけを夢見て、若い時から無我夢中でここまで努力してきた。モデルや女優と交際したこともある。でも……。彼女達が求めるものは、金や名声だけで、誰一人として、ただの男として愛してくれたことはない。
アンソニーが気に入っていた
カレン……。君が好きだ!! ……愛してる。
冷え切ったカレンの体を温めるために、抱きしめながら一緒に横たわる。こんなに冷え切って、
僕が温めてあげるよ。
◇ ◆ ◇
翌朝、目が覚めた時、私はジャンの胸の中で横たわっていた。
「あの……ありがとうございました。私、ジャンに助けてもらったんですよね」
優しく抱きしめていたジャンが、目を覚まし微笑んでいる。
「カレン、目を覚ましたんだね。よかった。プールに落ちて息が止まった時は、生きた心地がしなかったよ。医者に体を温めるように言われ室内の温度を上げたんだけど、なかなか君の体温が上がらないから、僕の体で君を温めていたんだ」
あれっ。バスローブに
「あの・・・」
何事もなかったかのように、二人が横になっていたベットから起き上がったジャンは、ホテルのルームサービスに電話をし、朝食に暖かいチキンスープを注文している。私は、恥ずかしさで急に
ジャンがいなかったら、きっと命を落としていた。でも、この状況はやっぱりまずいよ。それに……どうして、こんなにドキドキしてるんだろう。熱いシャワーで頭を冷やした。
「カレン、チキンスープが運ばれて来たよ」
優しい声に胸がズキンとする。テーブルにはスープとクラッカー、香ばしいコーヒーが並べられていた。
「カレン、今日は部屋でゆっくり過ごそう。君の回復が一番だからね」
「あの、私は大丈夫ですので、ジャンだけでもトレーニングをしてください」
「カレン。僕は今まで生きてきて、一度も予定したトレーニングを休んだことはない。でも、カレンとこうして過ごせるのはあと二日しかない。少しの時間でも君と一緒にすごしたい。トレーニングより、君との時間を優先させたいんだ」
「えっ……?!」
「僕を取材したいんだよね。もう時間もないから、少しでも一緒にいた方が僕をより理解できるだろう」
あっ……。そういうことか。びっくりした !
「そういうことでしたか。ありがとうございます」
「さぁ、冷めないうちに暖かいスープを飲むといいよ」
ジャンと過ごすのもあと二日となり、ちょっぴり寂しさを感じる。勧められるまま、テーブルに置かれたチキンスープを口にする。
「熱いっ……」
「ハハハ……気をつけて。カレンは、猫舌なんだね」
チキンスープを飲み込むと、温かさが胸の中まで染み込んでくる。まるでジャンのぬくもりのようだ。自分でも理解できない、この感情をちょっぴり持て余してしまう。今は、照れ隠しするように苦笑いをして、昨夜のことを考えないようにと……心を
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