第5話 あつまれ! 神話のみんな
ミグと同じ神話時代の英雄を戦力に組み込む。そういう方針に決まれば、まずは彼らが封印されているであろう遺跡を探さなくてはいけない。
そのひとつめの手順で大いに難航した。
「遺跡の記録が……無い!」
ミグの慰霊碑がマップ情報に登録してあったので楽観視していたけれど、甘かった。
『二千年前の神話の終わりに宗教から脱却する際、神話の遺物を破壊する流行があったようです。落ち着くまで随分かかったようですね。民間伝承が続くには時間が経ち過ぎたかと』
「失ったものの大きさを思い知らされるわね……。こうなると『何かはわからないけど大きめの石が転がってる』とかそういう情報まで広げて探らないと」
それでもきっと見つかるとは思う。ただし時間が無い。明後日には飛来天体へ突貫しなくてはいけない身としては、探して現場へ行って確かめてと悠長に過ごす余裕はない。
「っていうか、封印って壊せるようなものなの? 壊したら封印解けたりしないの?」
「神の御力で守られるはずだ。壊せして英雄が目覚めるならば、人は徹底して粛正されているのではないか? なにしろあからさまな神への反逆だ。我ならば必ずそうする」
ミグの慰霊碑が無事だったのは中身がこんな奴だからではないだろうか。彼の起動条件には背信がある。本当ならその時代に蘇っているべきだった。そうならなかったのは、その時すでに神が諦めたせいかもしれない。
「まったく、だらしがありませんわね!」
自分の出番を待っていたかのようにシスターメイアイが起立する。彼女はミグのこともしっかり把握していた。慰霊碑にあった神聖文字の記録を暗唱して見せたくらいなので、その知識量にはかなり期待が持てる。
「おお、神話の生き字引! この際アンタにでも頼るから、知ってること教えてよ」
「もちろん知っていますわ。なにしろ定期的に出かけて清掃活動も行っていますから」
「あっ、嫌な予感してきた」
案の定、自信満々のシスターメイアイが地図上を指した位置はミグが封印されていた場所だった。奇麗だったわけだ。
「そこ、もう手入れしなくていいわよ。今朝中身が出てきたときに粉々になってたし」
刻まれていた碑文の内容を憶えているからにはそれがミグの慰霊碑だということは知っているはずで、それを思い出したらしいシスターメイアイは唇を噛んだ。
「私の信心が足りないばかりに……」
「いやアンタのせいじゃないでしょ。歴史上の問題よね? っていうか、やっぱり他に知らないわけね」
役立たずと化した用無しが着席するのを見届けると、場が静まった。対策会議は完全に暗礁へ乗り上げている。
そこでひとつの想いに囚われる。
「……お腹空いた」
気が付けばもう夕方近くになっていた。朝置き去りにしてしまった卵サンドが恋しい。ここしばらく消えていた食欲が戻っていることに自分で驚く。
「そうね。何か持って来てもらいましょう。ここを見ているお偉方も、移動しないほうが都合がいいでしょうから」
おばさんがバトラーに手配を頼んでからも地図を眺めてうんうん唸っていると、ほどなくして食事が運ばれてきた。
「うわぁーい! なにこの御馳走! バトラー、アンタどう頼んだらこうなるの?」
あからさまに四人分を超える量――というよりも内容が凄かった。普段の配給が栄養素をブロック状に固めた機能食品ばかりなことを考えれば、食べ物が食べ物の形をしているだけで充分嬉しい。それなのにまるでホテルのコース料理のようで、ちょっと名前がわからないメニューまでと趣向を凝らしてある。
『ミレディ、さては指令書をきちんと読んでいませんね? 特攻指令を受けたことでかなりの便宜が図られるようになっています。死刑囚の最期の晩餐のようなものかと』
嫌なことを聞かされて一瞬で食欲が失せた。なぜ指令書をきちんと読まなかったか、そこまでの理解をAIに求めるのはまだ難しいらしい。
食前の祈りを捧げるシスターメイアイに好奇心で付き合うおばさんを無視して、早速スープを口へ運ぶ。実は形を整えた合成素材なのでは、という疑いはそれで晴れた。素材ごとの食感も味わいも本物だった。
「あ、おいしい。ほらみんなも食べなよ。アンタも、ホラ」
ミグは祈りに加わることもなく、食卓と化したテーブルを眺めて呆然としている。
「これが食事か? 貴様らは王侯貴族か何かか……」
「だったら尚更食べなさいよ。珍しいんでしょ?」
「食えぬわけではないが、我は神の祝福により満たされている。故に餓えも乾きもせぬ」
こんな風にミグが自分を人間扱いしないことが、すごく嫌だ。中等部にも上がらないくらいの子供が自分を〝神様のリセットスイッチ〟くらいにしか考えていない。
祝福やら何やらで体を改造されているとしても、心まで同じだろうか。戦場を共にするなら隣には生体兵器としてではなく人間として一緒に戦ってほしい。自分が人間爆弾にされることへの憤りと同じくらい強い気持ちでそう思う。
「ねえ、食べられるんだったら食べてよ。一緒にご飯を食べれば一体感が出るし、そういうことが士気に関わってくるんだから」
個人的な不満をもっともらしい理由にして要求すると、ミグは戸惑い顔でスプーンを手に取った。スープを掬って口に入れた途端、鋭い目つきが丸くなる。
それを見て反射的に顔を逸らして口元を覆った。笑ったら悪い。
(なあんだ。ちゃんと可愛いとこあるんじゃないの)
見咎められて睨まれたけれど、滅亡を足元に控えての食卓としては随分と楽しいものになった。
「それで、貴様らの策は尽きたのか」
各々胃も満足してきて料理を取る手が止まり始めた頃、おもむろにミグが話を戻した。
「策が立つ以前の問題かな。力を借りられる当てが無いんだもん。アンタだって何も知らないんでしょう?」
英雄にされて封印されて三先年。それが彼の人生。頷きを見て悲しい気持ちになった。が、それは思い込みだったと次の言葉でわかった。
「直接は知らぬ。我が蘇った数度、いずれも使命を果たせばすぐ封印に戻ったのでな」
「へぇっ? ずっと眠ってたんじゃないの? だってあの慰霊碑、アンタが出てきたら壊れちゃったじゃない」
「あれは我の封印と共に元に戻る。これまでに少なくとも三度目覚め、そのうち二度は魔王ウクスツムと戦った。忘れてしまったこともあるやもしれぬ」
魔王も復活するらしい。あの神にとっては人類の英雄も魔物の王も違いは無いのだろう。つくづくファンタジーな世の中だと知って頭痛がする。
「そうだな。……この辺りが今どうなっているか、知ることはできまいか」
テーブルは皿に埋め尽くされているので、近くの移動式モニターへ表示を映した世界地図の一角を勇者が指差す。
「なに? 心当たりあるの?」
「さあ、確かめてみねばな」
指示される迄もなく、画面が現地の映像に切り替わった。切り崩された山岳地域と、工業機械が見える。
『オーロラクリスタルの採掘場ですね。発見以来ずっと掘り続けられているようで、取り扱いが難しく採掘に時間がかかる物質にしても、この一帯は世界最大規模の埋蔵量と考えられています』
機械音声の解説にもミグはもう驚かなかった。案外適応力が高い。
「貴様らがそう呼ぶそのクリスタルは、アイテールの結晶のことだったな?」
『その通りです』
考え込む素振りのあと、深く頷く。
「よし、ここへ行くぞ。同行せよ村娘――いや、ハルハレミア」
名前を呼ばれてドキリとする。その直後、更に強い動悸がした。悪寒と呼ぶほうが正しい。
「ねえ、アンタの心当たりってまさかさあ……」
封印を解かれる目的は災厄を退けることで、それが済めばすぐに封印されてきたのなら、その時代について見聞きする時間は持たなかったはずだ。自分が眠っている間に誕生した英雄がどうしているかはきっと知らない。
そんな彼にただわかることがあるとすれば、むしろ敵の方ということになる。
「ちょっと待って、アンタ一体誰を復活させるつもり? ねえってば――わぁ!」
腕を引っ張られてバルコニーから外へ飛び出す。ミグの体が輝いて、あっという間に夕暮れの赤い宙を裂く弾丸と化した。
高々度を超高速で移動したのだから一瞬で凍死してもおかしくないというのに、不思議と体は温かだった。これもミグがいう神の祝福、アイテールの効果なのかもしれない。
数分で統一都市を出て大洋を渡り東側の大陸に移って、目的のオーロラクリスタル採掘場に到着する。夜間でも自動運転で採掘を続ける作業機が遠くに見えた。山頂を輝かせて太陽が沈もうとしている。
「ちょっと考え直す時間を貰えない? 魔王を起こしたりしたら大変なことになるでしょ? アンタが出てきただけでしっちゃかめっちゃかなんだから!」
地面に降ろされるなり前へ回って抗議する。ミグは不満げに眉を曲げた。
「誰が魔王と言った」
「へぇっ? 違うの?」
ミグが憶えているのは戦った相手だろうから、てっきりそうだと思った。
「ここにいるのは魔物でも、ましてや魔王でもない。人の異端だ。アイテールを喰らい無限に力を強め、見境なく破壊行為をする故に我が討ち倒した」
「ホラ! めちゃくちゃ危険人物じゃん! やめとこうよう、危ないよう!」
制止も聞かず、ミグが採掘場がある山へ向かって掌を向けた。彼がこれをやると不思議なことが起こる。
「目覚めよ人の異端! この時代に蘇り、此度こそ正しくその力を奮うがいい。出でよ、光の巨人、オーマよ!」
掌から光が飛び、山の中腹へ突き刺さった。風が起きて木々が激しくざわめく。鳥が一斉に飛び立っていく様は不吉さしかない。
数秒、間を置いて大地が鳴動したかと思うと、信じられないことが起こった。
山に腕が生えた。人間の腕。樹木を弾き飛ばして土砂崩れを巻き起こしながら地面を掴み、肘に力が入って体を起こそうとしている。でもあれは山だ。
「――んぶっはぁぁああ!」
もう山とは思えない。山肌のほとんどが吹き飛んで、中から巨大な人間が現れた。頭に太陽が遮られて辺りが一気に暗転する。
ミグがこれだけ離れた場所を選んで降り立ったわけがわかった。もう少し近ければあれに巻き込まれている。ただ起きるだけで山が幾つか消え、採掘場が埋没する大惨事。
「えぇっ、なにアレ巨人? 巨人だ! バトラー、戦闘準備! ……ああしまった、
動転してわめく横でミグはのんきに解説を聞かせてくれた。
「人の間に生まれし異端、オーマだ。アイテールを吸収する異能によって人の道を外れ、奴の肉体は我と同じくアイテールで出来ている。貴様らが掘り出していたのは奴の一部だったというわけだ」
「それじゃ、あんなのがずっと埋まってたってこと?」
「息の根を止めたつもりであったが、奴も最早人間ではない。長く時代が過ぎれば再生すると踏んだが、的中であったな」
大きささえ無視すれば普通の人間と変わらない、見た目ではミグより幼い児童だ。顔を振って土を払う仕草も愛らしい。世界を滅ぼす邪悪な存在には思えないものの、それだけの動作で周囲の景観を荒らすほどの土砂が飛んでいるから頷けてしまう。このサイズでは何をやっても災害級だ。
「あれぇー? おいしいアイテールを食べてたのになーあ?」
立ち上がれば、これだけ離れていても首が痛むほどに見上げなければいけなかった。
知る限り最も大きな建物は統一都市の中央議事堂が七十階建てだけれど、それよりもまだいくらか高い。しかも困ったことに、全裸だ。
「服を! 着なさい!」
思わず当たり前のことを叫んだのは、この異常な状況では現実逃避でしかない。「女の子だ」なんて気にしている場合ではないのに。
それでかどうか、巨人がこっちに気が付いた。
「あっ! ミグだぁっ!」
満面の笑顔でこっちへ走ってくる。声が起こした大気の震えは体の中まで響いて肺を揺らし、大股で駆けてくる一歩一歩が地形を歪める。露出を問題視している場合ではない。
「ミグぅー、あーそーぼっ?」
でもあくまでも態度は無邪気だ。むしろ友好的に見える。
そう思えたのは出迎えるようにして顔の高さまで高度を上げたミグが、振り上げた両こぶしに叩き落とされるまでだった。何千年か前に殺し合った関係としては、正しいファーストコンタクト。
ミグがもの凄い勢いで目の前に墜落して、飛び散った土煙を成すすべなく浴びた。石くれに当たって顔が痛む。
(――なんてパワー!)
自分がこれほどミグを打ちのめすには陰陽剣を犠牲にしなければならなかったことを思い出してゾッとする。それをこうも無造作に再現された。
更に追い打ちに踏みつけた裸足が目の前に来て、悲鳴さえ喉の奥へ引っ込む。親指だけで象より大きい。オーロラクリスタルの巨人、オーマ。なにもかも規格外だ。
「え……ちょっと、ミグ……?」
あまりのことが起きて心配するのを忘れていた。
もちろん、そんな気を回す必要はなかった。
踏み出したオーマの裸足を跳ね上げてミグが宙へ飛び出す。反り返って仰向けに倒れたオームの額へ体当たりすると、地響きが起きて風景に亀裂が走った。天変地異のような戦いぶりに唖然とする。
(ちょっと待って……。もしかして今、世界を滅ぼす破滅が起きてる?)
見たままなら質量に差があり過ぎる殴り合いが何度か続いたかと思うと、オーマは声を上げて地面を転がった。
「んはっ! やっぱりミグと遊ぶのってたのしー!」
上機嫌で笑っている。その喜びの表現が一番の被害を起こしているのでこっちは笑えない。現代の文明を総動員しても止められない古代の英雄と戦うことが遊びらしい。
ミグが戻って来たので恐る恐る話しかけた。
「ねえ……ホントにアレを戦力に組み込むつもり?」
「無論だ。遥か天より落ちて来たる巨大な物を受け止めるには、打ってつけであろうが」
「イヤイヤイヤ! 言うこと聞いてもらうの難しくない?」
「成りはああだが心は童と変わらぬ。善悪の観念もない。無作為に無尽蔵にアイテールを吸う故に倒したまでだ」
「え、一方的に攻撃したってこと? それってヒドくない?」
善悪が壊れているのは神も同じ、という部分には触れられなかった。
「あの時代、アイテールは人が暮らす糧となるのみならず、ミアズマに転ずることで循環する世界の理だったのだ。奴が吸いその流れが滞れば、人も魔物も立ち行かぬ。だがこの時代は大気のアイテールが枯れ魔物も存在せぬ」
現代なら受け入れられるとでも言うつもりだろうか。そこで寝転がっている巨人を見やれば、とてもそうは思えない。
「大丈夫かなぁ……ヒッ」
仰向けで首だけ持ち上がった大きな顔と目が合って、反射的に体が震える。あれは玩具を見つけた子供の目だ。
「だれだれー? おねーちゃんも遊んでくれる?」
「ひぃッ! ムリムリきついきつい!」
あんなのに人形扱いされたら簡単に死んでしまう。
「存分に戯れるがいい。この女、つまらぬ村娘に見えてその実は我に並ぶ力の持ち主である」
「アンタなに言ってんの⁉ その設定もういいから!」
腕組みで重々しく頷いているミグに噛みつく。ハッタリを利かせた時のままの評価になっているようで、それが裏目に出た。
「遊んで遊んでー」
巨人は四つん這いで地面をかきながら突進してくる。逃げ出そうにも
「うああっ! 自爆指令の前に死ぬことになるなんて!」
助からないと思ってぎゅっと瞼に力を入れる。けれど、いつまで経っても衝撃が来ない。
そうっと薄目で確認すると、巨人は離れた所で止まり口を開けて空を見上げていた。
「あれ、なにー? あの、黒くておっきいの」
もう暗くなった空の向こうに飛来天体の気配を感じ取ったらしい。
「貴様の後輩、この時代の世界を滅ぼす災厄だ。貴様にはあれを受け止めてもらう」
ミグが説明すると、巨人は「んはっ」と気楽に笑った。
「あれはムリだよー」
神話から蘇ってくるくせに、次々白旗を上げるのはやめてほしい。
巨人、オーマ。気化オーロラクリスタルを本人の意思に関わらず吸収し、巨大化する。その特性のせいで気化オーロラクリスタルが豊富だった古代では大変なことになったらしい。現状気化オーロラクリスタルは結晶化して地中にあるのでその心配がなく、ミグが無限に放出できるのでいくらでも巨大化させて戦力に変えることができる。
「で、それでも勝てないわけね」
「そうらしいな」
単純に考えれば、ミグでどうしようもないのにミグに負けたオーマでどうにかできるわけがない。
当の巨人は世界の命運なんてどうでもいいようで、「いつ遊んでくれるの?」という楽しげな顔でこっちを見下ろしている。
「あ~……とりあえず連れて行きましょうか。戦力を集めるっていう計画だったんだし。一発逆転じゃなくてもしょうがないしょうがない……」
そこで持ち上がる問題は、どうやって連れて行くかだ。
いくら大きいとは言っても海は渡れない。ミグに頼んで今より巨大化させたら余計に困ることになる。そもそも軍がこの巨人を受け入れてくれるのかも疑問だ。今頃衛星からこの状況を見ているおばさんはてんやわんやになっていることだろう。
(そんなことやってる場合じゃないんだけどなあ……)
連れて行ってしまえば四の五の言えなくなる。さっきの戦いぶりから考えれば、現代兵器ではこの巨人にも敵わないことは明らかだ。
(周到に準備されたら別かもしれないけど……)
なんにしてもまずはこの巨人を説得しなくてはいけなかった。
「聞け、オーマよ。我らの戦列に加われ」
ミグが高圧的に叫んだ。そんなやり方で従う相手には見えない。
案の定、オーマは小首を傾げた。そんな些細な動作でも巨木が倒れるような迫力がある。
「それってまた『カミのゴイシ』なの?」
前回ミグがオーマを倒したとき、そういうことを言ったのだろう。
「うぐっ、それは……」
ミグは胸を押さえて呻いた。神は諦観の境地にあるので自分の行動に神の意思が伴っていないことが辛いらしい。英雄や魔王を集めて飛来天体をなんとかしたとしても、それは神の力のみを証明したことにしかならない。神の正しさについては別の話だ。
「ミグってさー、みんなが死ねって言うから死ねって言うんだよ。ひどいよねー」
「えっ、アンタこんな小さい子に……いや、大きいけどさ」
肝心の本人は憶えていないのか力強い眉を険しく動かし首を傾げた。こっちは些細な動作のそのままだ。
「それの何が悪いのだ」
やはり、説得は自分でしなくてはいけない。
「ねえ、えーと……オーマ?」
「『オーマちゃん』って呼んで」
「ええっと……オーマちゃん?」
「なあに、おねーちゃん」
なにをやっているんだろうか、ということは今は考えない。
「おねーちゃんたち、空から落ちてくるアレ――って言ってもあたしには見えないんだけど。アレをやっつけようと思ってるんだよね。手伝ってくれないかな?」
「手伝ったら遊んでくれる?」
「うっ、それは……」
巨人と遊ぶ=死。そんな式が思い浮かぶ。
どうせこのまま世界が滅べば誰もが死ぬ。元々できない約束ならある意味では躊躇う必要が無い。けれど後先を考えずに約束をする不誠実に目を瞑ることはできなかった。
「……オーマちゃん、聞いて。アレが落ちてきたらみんな死んじゃうんだよ。そうしたら誰も遊べなくなるの」
「手伝ったら遊んでくれる?」
ダメだ。話が通じていない。
「ああ、もうわかったわよ! 好きなだけ遊んであげるわよ!」
この約束を嘘にはしない。その覚悟があればいい。そう納得することにした。
「んはっ、わぁい! じゃああそぼー」
オーマは喜色満面の笑顔でこっちに手を伸ばしてきた。
「えっ? ちょっと待って今じゃない! あっ、やめて、乱暴にしないで!」
ガッと体を握られて足先が地面を離れる。この子にはミグ以上に常識を教える必要があるようだった。
ただし命がそれまで持てば。
冷や冷やしながら弄ばれている間に苦し紛れで「約束を守らない子は嫌い!」と言うと涙目で「嫌わないで」と下ろしてくれた。この図体で災害レベルのパワーを持っているくせに、可愛いから困る。
どうやって統一都市へ連れて行くかの問題は、ダメ元で「小さくはなれないの?」と聞いたら黄金の風を身体から発して、掌サイズまで縮んだことで解決した。ミグのように無限の気化オーロラクリスタルはなくても、吸った分を吐き出すことはできるらしい。
これにはミグが一番驚いていた。「だったらなぜ」という顔をしていたけれど、問答無用で叩きのめしたに決まっているので悪いのはきっとミグだ。危険性ばかりに注目して、誰も彼女とマトモに話をしようとはしなかったのだろう。
ミグに抱えられて統一都市へ向け海上を移動しながら、胸ポケットに入ったオーマをそっと押さえる。オーマは小さくなっても大きな声で海にはしゃいでいた。
「わぁ、でっかいねえ! おねーちゃん海好き? オーマちゃんは好き!」
「じゃあ遊ぶのは海が――ってあれ? オーマちゃん、なんか大きくなってない?」
さっきまでポケットの縁に手をかけていたのに、今はもう完全に体が飛び出している。驚いている間に布が張り裂けた。
「でも現代は気化オーロラクリスタルが希薄――ってああっ!」
オーマが吸収する気化オーロラクリスタルの発生源なら間近にある。今運んでくれているミグがそうだ。
「お願いもっと急いで! 支えられなくなる前に早く着かなきゃ――って、重っ!」
加速してなんとか統一都市近くまでは来たものの、大きくなり過ぎて掴んでいられなくなったオーマが手を離れ落下して砂浜に突き刺さった。本人は落下が面白かったのか喜んでいたから良かったものの、海岸に集まった軍の連中を説得するのは骨が折れた。
平常状態のミグなら近くにいてもオーマは膨らまないことがわかったので軍用車で本部まで送ってもらい、研究所に着いた。
「ふぅん、この子がねえ……。映像で上から見てたけど、信じられないわ……」
おばさんがオーマを覗き込んで唸った。
オーマはまたポケットサイズになって飴にかぶり付いている。リスみたいで可愛い。
車の中も嫌がっていたけれど、屋根の下にいることが嫌いらしいのでオーマはバルコニーで塀に座っている。なにかの弾みで大きくなったら大変なので、そうでなくても屋外にいたほうがいい。ハンカチに穴を空けた貫頭衣も気に入ってくれてよかった。
「でもよく軍がこの子受け入れたよね?」
「生き残る為に正体不明だろうと利用しようって、連合政府も必死なのよ。それにハルが言うこと聞かせて見せたおかげで、前例よりずっと話が通じるってわかったから」
話題に上った前例は部屋の中でシスターメイアイと問答している。
学問として歴史に関心があるおばさんと違って〝神話ファン〟であるシスターメイアイとしてはミグが一度倒した相手を放置していることが納得できないらしい。神の兵が悪の巨人を倒した、そういうストーリーを守ろうとしている。
「当時の世界の在りようでは共存が難しかっただけだ。この時代ではあのように落ち着いている。障りはない」
「そんな! 過去には使命に従い戦ったのではなくて? 神の御意志は揺るがないはず! ならばあなたも方針を変えてはなりませんのよ!」
「やかましい。それ以上口を開けば粛正するぞ」
狂信者の糾弾にミグが苦い顔をしている。相当痛いところを突かれているようだ。
ただ彼の心情を察するよりも、シスターメイアイの主張のほうが気になる。
「アンタねえ、手伝ってくれるオーマちゃんを倒させてどうするつもりよ。もう他に頼る当ては無いみたいだし、貴重な戦力なんだからね」
「やるよー、手伝うオーマちゃんだよー?」
見なさい、こんなに可愛いのに、とは言わずにおいた。
シスターメイアイはどうも納得いかないらしい。
「悪の巨人に手を借りてまで生き延びようとは思いません!」
「……ならせめて自分でやんなさい」
意地悪な言い方になってしまったけれど、最低限『生きたい』と思ってくれなければこっちのモチベーションが下がってしまう。
予想以上に利いたようで、シスターメイアイは唇を震わせて顔をしかめた。なのに、反論は封じられない。
「わかりました。……私が悪の巨人を倒し世界を救いましょう。戦う道具を貸してください」
「あ、
「大丈夫ですわ! ワタクシには神の御加護がありますもの!」
神を信じる自分は正しいという根拠でこれだけ厚顔不遜になれてしまう。やっぱり宗教家という奴は厄介だ。
「そうですわよ。ワタクシがここにいる意味はそれだったのですね? おお、素晴らしき神よ! 使命をお与えくださり感謝いたします!」
ひとりでに神のお告げを聞き始めてしまった。感涙に咽び泣く様が哀れで、もちろん希望通り殉教されても困る。
「アンタがココにいることに意味があるように、この子も神の使命でココにいるんじゃないの?」
思い付きでテキトーなことを言ってみたら、シスターメイアイは目を瞬かせたかと思うと口をすぼめて何度も頷いた。
「それもそうですわね! 世界に神の与り知らないことなどございませんから、これも思し召しでしょう! 私の目を覚ましていただいてありがとうございます」
さっきまでのことはなんだったのか、混乱するほどアッサリ納得したうえ感謝までされた。自分以外の何かに判断基準を任せてしまっている人間の情緒に振り回されるのは辛い。
それでも、世界を破滅させる力を持たない分だけミグやオーマよりは扱いやすい。
「ところで、もうなにも進展しないなら……そろそろ寝たいんだけど」
これだけ一日の間に色々あって体はクタクタに疲れている。軽くシャワーを浴びてもう横になりたい。
「好きに休むがいい。我は人を外れた身。睡眠など要らぬ」
今朝見た時と変わらない眼光の鋭さでミグが言う。疲れたからといって彼を放って自分だけ休むわけにはいかない。
「ダメ、アンタにも休んでもらう。じゃなきゃ勝手に動かれて困りそうだからね。もし夜中に何か思いつくことがあったら、あたしを起こして一緒に行動すること。破滅を防ぐアイディアになら喜んで付き合って睡眠不足になるから。いい?」
「フン、要らぬ心配をする。我が行うは救済と粛正、ふたつにひとつ。悪戯に夜を乱すことなどありえぬ。そも今は貴様の指揮下の身。従おう」
「へぇっ? ……あ、ありがと」
もっと抵抗があると思っていた。「我は神の兵、貴様の命令など聞かぬ」と逆上して、気化オーロラクリスタルに当てられたオーマも一緒になって統一都市が破壊される。そんな空想をして内心では気が気ではなかった。
それがこの肩透かしだ。奇妙に思わないほうが難しい。
「えーっと、それじゃみんな……おやすみなさい」
そのことについて考えるほど、思考力は残されていなかった。
そのまま研究室エリアで仮眠室を借りることにした。外に出たら誰に絡まれるか、ミグやシスターメイアイが誰に絡んでいくかわからない。オーマはそのままバルコニーに置いて来た。屋内を嫌がるうえにムリヤリ言うことを聞かせるのは難しい。へそを曲げられてあとで共闘を拒まれたらそのほうが大変だ。
(手に負えない人材ばっかり集まっちゃったなあ……。あのシスターなんか、他と比べたらマトモに見えてテロリストだし。おばさんに任せてきたけど、大丈夫かな?)
歴史好き同士で気が合うと期待するしかない。一応身体検査をしたので基地内に爆弾を仕掛けて回るようなことにはならないはず。
シャワーを浴びると一層体が重く感じられた。思った以上に疲れが酷いようだ。
(あーもう、今は何も考えたくないや)
髪を乾かすのもおざなりに、支給品の寝間着を引っ張って湿った肌から引き剥がしながら部屋へ戻ると、同室のミグがベッドの上で膝を揃えて座り祈りのポーズを取っていた。
(まだ祈るんだ。……あんな神に)
散々味合わせたカルチャーショックよりも、神が既に世界の命運を手放していたことが一番辛かったはずだ。
それでも同情の気持ちは湧いてこない。二千年前に神話を締めくくった人類の気持ちがよくわかる。傲慢と叱られようと、救わない神は要らない。
本当なら「神じゃなく人類の側に立ちなさいよ」とミグの引っぱたいてやりたいところではあるけれど、協力してくれることへの感謝はあるので敬意を払いたい。彼という人格の中心に信仰心が根ざしている以上、それを折ってしまえば闘争心まで失くしてしまいかねない、という理由もある。
「……電気、消すね」
返事は確認せず消灯してベッドへ横になる。
(明日はもっと大変になるんだから寝とかなきゃ。何かできることを見つけてドンドンやってかないと、ホントに世界が終わっちゃう)
自爆指令を受けてからはロクに眠れていない。最初の夜はおばさんと泣いて過ごした。「私が余計なことをしたせいで」と自分を責めるのを見て、弱音を吐けなくなった。
自分さえ黙って死ねばひとつ穏便に済ませられるという生贄の論理で、悲観を胸の内へ閉じ込めた。その代償がひとりきりの夜に眠れるはずがない。毎晩、ベッドの上で丸まったり部屋をウロウロしたり、突然叫び声を上げてしまうこともあった。
しかし今は状況が変わった。ただし独りで死ぬことはなくなったというだけで、やはり飛来天体は防げない。世界単位での集団
その恐怖が変わらず胸を締め付けて、心身ともに疲れ切っているはずなのに睡魔を遠くへ追いやったままにした。どうやら今夜も眠れそうにない。
ミグの心境はどうなのだろうか。
気になって瞼を開くと、暗闇に慣れた眼が時計のささやかな明かりを拾って、隣のベッドにいるミグを映した。微動だにせず祈り続けているその〝平然〟が疎ましい。
どうせ互いに眠らないのなら、と思って話しかけてみることにした。
「ねえ、どうして素直に言うこと聞いてくれるの?」
神に会って一度は気力を失ったものの、飛来天体に勝利することで神の偉大さを証明しようとしている。そういう理屈はわかる。ただそれなら彼は自分の思うままに振る舞ってもよかったはずだ。
「暴力であたしたちを従わせてさ、本当の神の軍隊にすればよかったでしょ。アンタより弱いあたしに協力しないでもいいはずでしょ」
状況に合わせて価値観を持ち替えるような器用さをこの原理主義者は持たない。大切なのは神、それだけ。この世界を救うこと自体には意味を感じていないはずだ。
だから、彼がこっちを向いたことにさえ驚いた。こんなしょうもない質問を取り合うよりも祈りを優先するのが彼、そう思っていた。
「それは貴様がこの時代の英雄だからだ。我と同じく世界の命運を託された、そう見込んだからこそ神にも会わせた。守護〝神〟などと呼ばれていることは不遜でしかないがな」
もしかすると褒められているのかもしれない。けれど、皮肉にしか聞こえない。
「英雄? あたしはただの生贄だよ。アンタとは――アンタたちとは違う」
たまたま
「貴様は託されたのだ。その他の違いなどどうでもよい」
「でもあたしは……世界が滅ぶことを望んだから」
今朝のことを思い出す。ミグが復活したキッカケ。あの時慰霊碑に世界の破滅を望んだ。自分だけ死にたくないと、いっそ何もかもいっぺんに無くなってしまえと。そんな人間が英雄であるはずがない。
(……後悔してる)
古代の勇者が復活するような奇跡が起こった今、〝もしかしたら〟という希望がほんのわずか瞬いて見える。だからこそ重要な場面で「でもあのとき諦めたし」と迷いが生まれてしまいそうで怖い。
「勇者さま。断罪されるべき人間がいるとしたら、それはあたしです。あたしのことはどうしてくれても構わない。その代わり、世界を見捨てないでください!」
身を起こし暗闇の中まっすぐにミグを見つめる。祈りたい気分でもそれはできない。それだけはできない。生身で、何も頼らないありのままの自分を傷つけられたい気分だった。
ミグはどれだけ真剣に乱暴にぶつかっても、それ以上の熱量で返してくる。そのはずが、向けられた眼差しは今までにない柔らかさがあった。
「人間のまま英雄となり世界の命運を背負った、その重圧は想像を絶する。だが、わかる。常に人類を生き伸びさせるべく道を探す貴様を、この眼が知っている」
そう言われても誇れはしない。
現代人のほうが強いとミグを騙した。シスターメイアイを利用して、信仰心が根付いているように見せかけようとした。今日一日褒められないことばかりしていた。
「貴様には己の正しさを証明する神がいないのか。ならば我が保証しよう。いいかハルハレミア、貴様は正しい」
そんなわけはない。そんなわけはないと、心の中で自分に言い聞かせても涙が溢れた。
「貴様は破滅など望んでいない。そうして生き汚く食らいついているではないか。我にはわからぬこの時代の価値を、貴様のその執着が証明する。故に我はこの時代で唯一対等なる友として、貴様と共に戦う。この世界の為ではなく、貴様の為にだ」
これにはドキリとした。慰めを通り越している気がする。
(ああいや、変な意味で言ったんじゃないって絶対……)
いくら精神的にはとっくの古代に成人しているとしても、見た目ではただの目力が強い子供だ。トキメキを感じる相手としては問題がある。
でも今は不安なので気のせいにして手放すのはちょっと惜しい。
「友達なら抱き付いておんおん泣いてもいい?」
「……この時代の友情の観念を先に確認したい」
とても不服そうではあるけれど特に抵抗はしなかったミグを膝の上で抱き締めて親睦を深めていると、不意に来客を告げるブザーが鳴った。
口頭入力で許可を出し、ドアが開くとシスターメイアイが入って来た。こんな深夜の訪問なので、てっきり夜型のおばさんが来たのだろうと思っていたから驚いた。
彼女の教義では早寝早起きは美徳ではないのだろうか。昼間のシスター服ではなくバスローブとスリッパといういかにも「もう寝ます」と言った格好をしている。
「あ、もしかしてうるさかった?」
シスターメイアイを預けたおばさんが常用している私室はこの仮眠室とは離れていて、騒いでも届くような安普請ではない。なので騒音のクレームはまさかありえない話ではある。緊張した様子で俯き黙っているからとりあえず話題として振ってみただけだ。
信仰心を己の核として常に堂々と自分の正義を疑わない彼女が、まるで叱られた子供のように大人しい。その様子はいっそ不気味でさえあってつい気を遣ってしまった。
「勇気を出すのよ、ワタクシの身は神の物ですもの――あのっ、あら……?」
ブツブツと独り言ののちに意を決したように顔を上げたシスターメイアイは赤面していた。目が合うなり、その体を強張らせていた力をふっと抜いて表情を綻ばせる。
「なんだ、先に始めてましたの? それなら気が楽ですわ」
よくわからないことを言うなりパジャマを床へ脱ぎ落とした。一糸まとわぬ見事な裸体が晒される。
「うわぁ、スゴ! っていうか剃っ――? じゃなくて、アンタなに考えてんの!」
とっさにミグの目を覆って隠す。
「ワタクシどもをお救いくださるミグ様に、せめてもの捧げものを致します。と言ってもワタクシ個人の資産はございませんので、どうぞワタクシ自身をお納めください」
また別のタイプの生贄として名乗り出てきた。自分を献上物に推すあたりは自信家にも思える。
でもその自信の根拠とするだけの魅力は確かにあった。「重力なんて知らない」と言わんばかりのあの膨らみは許されるなら触ってみたいしできるなら譲ってほしい。
「いや要らねーから!」
ベッドに身を乗り出してきたところを軽く顔面に蹴りを入れて押し戻した。素早く起き上がって詰め寄ってくる。
「まさか貴女、身を捧げる栄誉を独り占めするおつもり? せめて交代なさい!」
ミグとベッドの上で密着していたことでどう見られたか、今になってわかった。
「誤解! ただちょっと不安だったから人肌の温もりを――ああ、これじゃ変わらないか」
投げつけたシーツを払い除けたシスターメイアイから「そうはさせるか」という意気込みが衰えない。こんな馬鹿馬鹿しい釈明をしなくてはいけない状況にイライラする。
「あーもう! そもそもそういうことできないんだって、見ればわかるでしょ!」
ミグを持ち上げて立たせ、一気にズボンを引き下ろした。サイズが合っていないズボンは簡単に脱げ落ち尻が出る。肩越しに振り向くミグに「おい」と睨まれたが気にしない。
シスターメイアイは口をあんぐりと開けて固まっていた。その視線の先にある「できない理由」に釘付けになっている。こんなことまでは神話に記録されていなかったのだろう。
「わかった? この子は神の祝福と――ええと、なんだっけ? とにかく普通の人間とは違うから、そういうことは……できな……」
話しながら、違和感に言葉が詰まる。
祝福を受けた神の兵に性別はない。そう言われてそのときは納得したけれど、そのあと一緒に食事をしている。人間らしい見た目、人間らしい行動。それで一部の機能だけがないというのは不自然な気がする。
(オーマちゃんも飴を食べてたし……)
山を砕いて現れた巨人が嬉しそうに走ってくるところを思い出す。どうも神の祝福ではない突然変異らしいけれど、彼女のほうがよほど人間離れしていた。ミグと同じくオーロラクリスタルでできているらしい、拡大縮小自在の女児。
「……あっ」
違和感の原因に思い当たって、ミグの裸の腰を掴んでグリンと回しベッドへ押し倒す。
「なんだ貴様、いい加減にしないと粛正するぞ!」
抗議の声は無視して開かせた膝の間に顔を突っ込む。隣にシスターメイアが割り込んで来て、同じものを見た。
「……ミグ、アンタ……女の子だよ」
古代から蘇った英雄にちんちんがなかった理由は、とても人間らしいものだった。
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