第15話二十九歳ー1
この先、同僚の中で親しい友人が現れ、外出や食事をともにするかもしれない。仕事人ではなくただの人と、人として他愛もない会話を楽しむことになるだろう。一方で、古い記憶の正美を目にして声をかけられ過去を暴かれることで、未来の友人の目に正美がネズミに見えてしまう可能性も少なからずあり得る。正美の過去を知る者の何人かが、他人の醜態を晒すことを好むからだ。彼らは皆、正美の新天地に住所を置いている。
正美が人として生活できるか、あるいはネズミのなれの果てとして陰で怯える生き方をするかは、運に賭けるしかない。正美が人として認められたままであれば職場を変える必要はない。人がネズミを拒めば、正美はドブ溝を変える他ない。二択に一択だ。ネズミの過去を受け入れ人として見られることは選択肢になく、生粋の人であれば考えもつかないことだ。
非常に大きな勝負である。それでも、正美は前に進むしかない。人間として生き続けるために。
二度とネズミにならないために。
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