白日の少年

作者 月ノ羽衣

53

18人が評価しました

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★★★ Excellent!!!

親友の鈴里に想いを寄せている主人公の夕絽。どうしようもなく恋い焦がれている鈴里自身に、恋愛感情を持てない女子との付き合いを勧められる。

好きな当の本人から、他の人のことを勧められるのって真っ当に考えたらとっても苦しいですよね。

想いを受け入れるのは難しいとしても、他でもない鈴里に他人を勧められ続けるのは苦しいし、せめて大好きな彼には本当の自分のことを知っていてほしい――主人公はそんな恋をする人なら当たり前に抱く感情を持ってして、鈴里に自分の恋心を打ち明けるのですが……その願いは遂げられるどころか、クラスメイトの皆に暴露されてしまうという考えられうる限りで最悪な形を迎えます。

本当にこのお話の主人公である夕絽くんは、人の心の機微に敏感な子で……読んでいて、どうしてこんなに良い子が、こんなにも苦しんで傷ついて自分を否定せねばならないのかと何度も辛くなりました。恥ずかしながら本作を通して初めて『アウティング』という単語を知った私ですが、あらためて、常識の皮をかぶった偏見の凶暴性を感じたりもしました。

同姓を好きになった。そのこと自体を罪だと感じてしまう程に、夕絽はこれでもかというくらいに痛めつけられて、堕ちるところまで堕ちていきます。その様は、読んでいるこっちの胸まで抉られるほどに凄まじい絶望なのですが、後半には徐々に光が差してゆきます。この影と光の対比は、作者様の描かれる作品に共通するとてもとても大きな魅力です。果てのない絶望まで堕ちるからこそ、そこに差してくる光がひときわ輝くのです。

前半は、目を背けたくなってしまうほどに残虐な現実を見せつけられます。でも、だからこそ堕ち切った後に、主人公が辿り着いた先は胸が締め付けられるほどに愛おしい。ああ、こういうやさしい世界が本当の意味で常識となって、当たり前となれば良いなぁと願わずにはいられない素敵なラストでした。

一章… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

昔は、いわゆる「ボーイズラブ」というジャンルが嫌いでした。
理由は、自分で書いていて、書きたくなくなったから。10年近く読みもしませんでした。
でも、世間で「LGBT」という言葉が聞かれるようになってきて、近頃は少しずつ読み始めています。
今作もその一環でフォローさせて頂き、拝読しました。
性的マイノリティーの主人公が悩み、受け入れを拒絶され、それでも少しずつ前を向いて立ち直る姿は、暗闇から光へ歩み出すように見えました。
柔らかな光の中を歩くようなラストシーンまで、多くのかたに読んで頂きたいです。
それと、癒えること難しい傷を負ってしまってクラスメートにも、どうか救いがありますように。

★★★ Excellent!!!

格差社会という2000年代に入ってから起きた今や文化として残り続け受け継がれ続けるものの中で守ってくれるものや自分なりの幸せなどのを探すこんな現代社会の話。
地球という中で生きる人類と呼ばれる生命は昔から争いをして生きてきたけど生命と世界そのものはリアリティからかけ離れていて世界は今は汚染されてエントロピーのようなものになっている。
この格差社会は近代教育が生んだものでそんな中で格差を好みながら生きる人が多い中で生命が踠きながら幸せになりたいとか感じる僕らの在り方が描かれていて生きる上でのヒントになるし共感できる作品。
でもこれを読んでやっぱり生命の理想の環境は終末世界なんだと感じた。

★★ Very Good!!

アウティングとは、セクシュアリティについてなど本人が望まない事柄を広められてしまうこと。
LGBTおよび性的少数者の存在の認知が進む一方で、まだまだ侮蔑の目が残るのも事実で、これによる悲しい事故というか事件は現実でも歴然とあります。
本作でも主人公の少年が、ゲイであることを親友、しかも恋愛感情を持ち信頼していた親友にアウティングされてしまいます。

どれほどに怖かったでしょう。
孤独だったでしょう。
悲しかったでしょう。
未来を悲観したことでしょう。

その想像ができるだけに、前半は胸が潰れるような思いをしました。
しかし中盤くらいから、周りのサポートに恵まれ、人間関係であり居る世界が広がり、ここからが更なる読みどころです。

僕にこれを言う資格はないのですが――、ひと言が人の魂を、あるいは命その物を時に殺める、そのことをご存知と思われる作者様の描く光に、僕自身、救われた思いがしました。

★★★ Excellent!!!

 性的指向や性同一性について、他の人達とは違う何かを抱えたまま生活することは、まだまだ難しいこの社会。”理解”などと呼ばれるもので、こうした問題をオブラートで包もうが、リアルな現実は確かに存在する。

 アウティングとは本人の承諾なく、その人のセクシュアリティを第三者に暴露してしまうこと。それは、何でもない平和な人間関係に、突如非対称性をもたらし、そして加害者も被害者も生み出し得る。

 しかし、アウティングは意図的になされると言うよりは、性的指向をカミングアウトされた本人の当惑によって、非意識的になされることもある。そこには決して強い悪意は存在しない。むしろ悪意は当人同士ではなく、その周囲の人間や環境によって生み出される。

 本作が問いかけてくるのは、まさにそういった「差別意識の環境形成性」だ。「アウティングはいけません」というような思考停止ではなく、その背景に潜む、苦しみの感情、葛藤の想い、そして様々な人間関係をリアルに描写しながら、差別感情の源泉は、マイノリティとマジョリティの間にあるのではなく、その周囲の環境、むしろオーディエンスが編み上げているのだと、強く訴えてくる。

僕にとって学び多き作品となりました。本当にありがとうございます。