第24話
目の前にくる澤の顔には涙の跡。携帯を強く握りしめたまま呆然としていた。
明らかに様子が可笑しかったのは、私以外でも志乃も気付いていた。なんとなく、なぜそうなっているのかわかった気がした。
でも直ぐに澤は口を開いた。
「.........サナに、っ振られちゃった、..」
澤はそう言っては下を向いた。その瞬間涙がポロポロと滝のように流れたのが見えた。そして、私まで目の前が歪んでいつの間にか泣いていた。
同情とかじゃなくて、ただたんに大好きな人が悲しかったら悲しいのなんて当たり前、同情のように見えるかもしれないけど本当に悲しくて苦しかった。
志乃も切ない表情を浮かべてそっぽを向いた。多分ここで何かを言っても今の澤にはきっと響かないから。
なんとなく別れの予兆は澤から聞いていたけど、3年も付き合った大好きな人が明日から居ないと考えると何を目標に頑張れば良いのか分からなくなる、好きな人って自分の中心に居るわけだから。
私はなんとか制服の裾で涙を拭って一生懸命澤の背中を摩った。こうすることしか出来なかった。
でもなんでなんだろう。なぜサナちゃんはこんな良い奴を振ってしまったのか。
澤は体を揺らしながら沢山泣いていた。その後ろ姿からどれくらい好きなのかしみじみ感じた。こんなにも愛してくれる澤を捨てるサナちゃん、もしかしたら理由があったのかもしれないけど....なんでだろう。
「澤、落ち着いた?」
しばらく背中を摩って伺うように優しく囁いた。澤はコクンと頭を縦に揺らして涙を拭った。
途中途中で鼻をすする音が聞こえて鼻声のまま澤は話し始めた。
「電話した瞬間に...すぐサナから別れ話切り出された。あっちも近々言うつもりだったんだと思う。....それで、サナって地元の方で結構男友達が多くて。それは別に構わないんだけど、そん中の1人にさ、サナのことめっちゃくちゃ大好きなやついて。」
思い出したようにペラペラと澤は話しはじめて、時折涙を拭きながらしっかり話してくれた。
「昔から聞いてたんだよね。私の事凄く好きな人がいるんだよー!って。毎日毎日好きって言われて、彼氏いるよって言ってもそんなの別にいいって。真っ直ぐな彼がいたんだ。サナにとっては幼なじみで俺も割と知ってたんだけど、かっこよくて、俺よりもしっかりしてるひとなのね、けどサナはその人に気持ちはないよって俺にいつも言ってくれてた。そりゃあ3年も一緒にいれば考えてることだって分かるし、大丈夫かなって思って」
私はその話を聞いて涙が溢れた。なぜか分からないけど、目の前がすごく歪んで。けど澤に見せないように体を横に向けて、大人しくきく。
澤の身体はすごく震えてて、今にも抱きしめてあげたいくらいだった。
「だけど最近になってサナその彼とたまたまアルバイトが一緒だったらしく。よく話したりとかご飯行ったりとかするようになった。幼なじみだからそれは仕方ないかなって思ってた。でもそれはエスカレートしていって、2人の家に行ったりとか、そのうちどんどん距離が縮まって。元々彼はサナのことが好きだったけど、その一生懸命な姿にサナは惹かれていったみたいなんだ。」
一生懸命に震えながら話す澤から、とてもとてもサナちゃんのことが好きだったんだなってっていう感情が伝わった。
ゆっくり背中を摩ってあげる志乃。
「辛かったな、澤。思いっきり泣いていいんだよ、ほら可愛いあさちゃんも泣いてるからさ。」
ちらっと私のことを馬鹿にしてくるかのように澤にそう伝える。私はちょっと睨んだけど、多分これは志乃の優しさなのかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます