第20話
今日が終わっていつものグループで帰ることになった。みんな今日は何も用事が無くて何処か寄ろうという話になった。
「カラオケ行くかー!明日休みだし騒ごうぜ」
志乃が元気に私たちに提案し、すぐ賛成した。結局みんなと居ればどこに行ってもいいという考えなのだろうか。もしかしたら、カラオケしか行くところがなかったかもしれないが。
しばらくして、カラオケについて部屋に入る。
私と澤でジュースがかりになってすぐ部屋を出た。私は澤にどうしても聞きたいことがあった。
「ねー、澤?」
澤はカラオケの廊下をキョロキョロしながら私の話に耳を傾けた。
私はそれを見て、言葉が躊躇いそうになるが、頑張って口を開く。
「…サナちゃんとは、良い感じ?」
なぜ、私は今ここでこんなことを聞いたのだろうか。誤魔化せる理由はたくさんある。けど、澤に気付いて欲しかった。
アホなところがあるから、きっと無理なのだろうけど…。
「サナー?まぁ、良い感じかなぁ。あ、そうだ、そういえばこの間少し言い合いになって。あさに相談しようと思ってたんだ」
「言い合い?どんな?」
「俺らってさー、割と遠距離だから周りのこと分からないじゃん?だから小さいことで少し言い合いしちゃって。」
よくあるあるなやつだな。
それよりも私が気になったのは、思い出したように私に相談乗って欲しかった、と言った。それってつまり、それくらい私のこと考えてないと思うと、心が苦しくなった。
もちろん、私のこと考えるなんて彼女でもないのに、そんなこと有り得ないと思うけど。少し期待はしていた。
多分私がここで聞かなかったら、一生澤は言わない気がした。
私はみんなの分のジュースをお盆に置きながら、澤の方をみて、優しく呟く。
「サナちゃんも澤も大人だから少しの言い合いはあってもいいと思うよ?自分の気持ちをちゃんと言えるっていうの素晴らしい事だもん」
澤は、そうかなぁ…なんて言いながら少し浮かない顔をしていたけど私が言えることはこれしかないから。
けど、目尻を下げ"ありがとな"と優しく微笑んでくれた。
私はその表情に、胸がキュンとする。
それと同時に苦しくなった。
なんだか、澤とは話したくないな、と思って、澤に言う。
「ちょっと、お手洗い行ってくるね。」
「お、おう?大丈夫?気をつけてな」
澤は疑問を持ちながらそのお盆を両手で持ち、私に声をかけると心配そうにしながら部屋に向かった。
私はすぐお手洗いに向かい、鏡を見る。
私澤にどんどん落ちてる気がする。好きになっちゃいけないのに、彼女がいるのに。
私はどうしたらいいのかな。
彼女がいるから、きっと付き合うことはないけど一緒にいたい。友達としてでもいいからそばにいたい。
きっとそんなんじゃ、私は満足しないと思う。いつか、恋人になりたい、と思うだろう。でも、サナちゃん傷つけたくないし、もちろん澤のことも傷付けたくない。
どうしたらいいのだろうか。
こんなこと、誰かに相談したって解決することじゃない気がするよ。
私は悩みに悩んで、鏡の前で笑顔を作り、トイレから出る。
「……、志乃…?」
トイレから出ると壁にもたれかかりながら、立っていた志乃がいた。
少し驚いて1歩下がってしまった。
「あ、……大丈夫?…澤から聞いてさ。また、俺のことで悩んでんのかなと思って。もしそうだとしたら、謝りたいなと思って。」
「え、?いや!志乃のことはもう大丈夫だよ。ただなんとなく、澤と話したくなくて。」
「なんで?なんかあった?」
志乃は私の切なそうな顔をみて、心配してきた。こういう時だけ優しいからムカつく。けど好き。
「んー、ただ単に辛くて。あっちには彼女が居るけど私は澤のこと好きで。このまま片思いでいいんだけど、きっとこの先私はそれで満足しないなーとふと考えてさ。いつか、2人を傷付けてしまうのが、目に見えてるから。私さー馬鹿だからいつの間にか傷つけてるんだよね、人のこと。きっと志乃にもそうだよ」
下を向いて泣きそうになるのを堪えながら話した。
本当にすぐ涙が出てしまう。
悲しいのか、嫌なのか分からない。
「うん。……答えは、ないよ」
「うん。」
「これは、相談して解決するようなことじゃないよね。あさ次第じゃん。人間気持ちが変わることなんてよくあるじゃん。サナちゃんだって別に好きな人が出来るかもしれない。それは澤にも言えること。別れてほしいとかじゃなく、そういうこともあるよってこと。決めるのはあさなんだし、俺たちまだ17だぜ?恋は一生続かないものもある。まぁ、サナと澤がどんな感じなのかは知らんがな。俺はあさや澤が誰と付き合おうが、応援してるから、ゆっくり進もうよ。俺が言えることじゃないっつうの、ってな。」
志乃が一生懸命に話してくれて、なんだか気持ちが晴れた気がした。
私次第…。よく考えみたらそうかもしれない。
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