第15話
痛かった足を引きずり、走って走ってやっと、保健室に着いた。
ドアを開けると彩葉と澤と先生がいて、彩葉に名前を呼ばれた。
それと同時にベッドのカーテンの隙間から志乃の寝顔が見えて急いでベッドに駆け寄った
「……志乃、朝から具合悪かったみたい。熱が39度あって。次の試合は多分出れない」
彩葉は心配しながら残念そうに呟いた。澤も落ち込んでるし、きっと優勝は程遠い。
志乃の身体が動いて、優しく声をかける。
「……志乃……?」
「あさ……ちゃん。俺、情けねー」
志乃は目をあけ、頬を紅潮させながらもまた恥ずかしそうに照れた。
「なにやってんの、具合悪かったなら言ってよ。心配したじゃん」
「……ごめんごめん。みんなやる気満々だったから無理したけどやっぱり駄目だったわ。昨日なー、もーちゃん散歩させてたら大雨降ってきてずぶ濡れしちゃってな〜」
もーちゃんとは、志乃の愛犬。私みたいだったから、私の名前のあさをモーニングとしてもーちゃんと付けたらしい。よく考えるなあ。
それにしても昨日は通り雨だったが大雨が降った。
私は志乃に"馬鹿!"と言って布団をかける。
「なに、心配した?」
私の方をチラリと見て、ニヤリと笑うと少し微笑んでそう言った。
正直ムカついたけど、無事でよかったから安心した。
「まぁ、無事でよかったよ……」
「そういうと思った。」
次はふふと柔らかく微笑むと私の頭をポンポンと撫でた。
そういうところは、勘がいいんだなぁ、と感じた。
そうしていると、彩葉と澤がカーテンをあけ入ってきた。
「多分さ、志乃は試合出れないから、私たちで優勝しよう!まだ次の試合まで時間あるからあさは志乃の看病してて。」
「そうだ。そうだ。お前あさに風邪移すなよー?」
澤は私の心配をしているようだったけど、やっぱり志乃には、"お大事にな"と言ってニッと強く笑うので、それにキュンとしてしまった。
二人の背中が消えるまで見ていると途端に外で試合している人の歓声が聞こえた。
盛り上がってるなぁと窓の外を見つめた。
「あさも行っていいよ。俺の移るぞ。お前ただでさえ免疫無いんだからさ」
「私行ったってやることないもん。志乃の看病してたほうがサボれるから」
私がそう言うと、志乃は私の顔をじっと見つめて、鼻で笑って"ありがとな"と言ってまた頭を撫でる。
「なんでさっきから頭撫でんの!?ポニーテール崩れるでしょ」
「あ、ごめんごめん。……てかさ」
志乃は改まって天井を見て話し始める。
こういうことが今までなかったから、不思議に思った。
「ん?」
「……あさって、澤のこと好きなの?」
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