第12話



「おはよう、あさ。」


朝、学校に登校してきて、下駄箱に着くなりローファーを脱いでいると後から声をかけられた。


「あ、おはよう。彩葉」


「聞いたよー?昨日澤と渋谷デートしてたんだって?」


お互い上履きと履き替えて、ゆっくり歩き出すと彩葉が私にそう聞いてきた。


「ん?なんで知ってんの?!デートじゃないけど。」


私は彩葉のほうを見ながら驚いて、つまずきそうになった。


「澤って学園の王子様だよ?女子達が黙ってないでしょ。」


そりゃあそうか。

澤が来てから学園の王子様は志乃か澤で、女子達の取り合いだ。見張ってるとも言っても過言じゃないと思う。

ああ、嫌な噂に絡まれたな、と思いながら足取りが重くなる。


「まあいいじゃん?デートじゃないって分かってるから。」


その言葉に救われながらドアを開け、教室に入る。みんなほとんど学校に来ていた。私と彩葉は机に荷物を置くと志乃たちの周りに集まった。


「おはよー、あさちゃん。彩葉」


志乃が一番さきに私たちに挨拶すると、それに続いて澤も挨拶してきたから私たちはそれを返した。


「澤!昨日無事に帰れた?」


昨日のサナちゃんのことが気になってつい口を出してしまう。澤は"ああ"と言いながら口を開いた。


「大丈夫。サナ昨日急遽帰っちゃったんだ」


「え?そうなの?今日じゃなかつたの。」


「あいつ、天然だから。新幹線間違えたみたいで。だから俺今日ちょっと憂鬱。」


ふふと微笑みながら切なそうに顔をした。

サナちゃんは昨日今日帰ると言っていたが、間違えていたみたいで昨日の夜地元に帰ったみたい。自分が彼氏なら一緒に居れない、と分かるから切ないのは分かる。


「なになに、どういうこと?」


私と澤で話していると、横から志乃が聞きたそうに割って入って口を挟んできた。

それにつられて、彩葉やほかの友達が聞きたそうに耳を傾けた。


「昨日、澤の彼女に会ったんだよね。」


「ええ?マジ?」


志乃が身体を揺らして驚いていた。そりゃあそうだろう。私だって澤だって知らなかったことだったから。


「昨日さ、サナちゃんの誕生日プレゼント選ぶために二人で渋谷行ったんだけど、帰りにばったり会って。澤の彼女マジで可愛かった!志乃見たら一目惚れすると思うよ」


昨日会ったことを話して、志乃に例えると皆は"あー"と言って想像していた。


「俺、好きな人いるから、目移りしない。」


私はそう言ってチラリと見るが、志乃は真面目な顔でそう答えるから、逆に不安になった。

その言葉で、私はもっと気にしてしまう。

志乃の好きな人は誰なのか。



なんだか、モヤモヤした。





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