第9話
「なあなあ、今日暇?」
五十嵐が教室から出てすぐに
澤が私のところに来た。
寝癖はまだ付いたままだ。
「んー?暇だけど?どうしたの?」
「今日ちょっと付き合ってくんね?」
「ん?うん?」
澤が何かに私を誘った。
なんだろう?と思ったが、ここは聞いておかないであろうと思った。
ちなみに、彩葉はバイトがあるから先に帰ってしまったし、志乃たちは何かの部活に誘われたみたいで、嫌々そうな顔をしてるのがすぐ分かったので、帰らないのかなと分かった。
澤はバックに荷物を詰めて私のところに来た。
「………あのさ、もうすぐサナの誕生日でさっ、そのプレゼント選び付き合ってほしくて」
周りの人が居なくなったのを確認して、もじもじと言う澤。
そういうことか。
それだから志乃とか男友達には頼めないってことで、私に来たのか。
嬉しかったけど、少し複雑な気持ちだった。
澤はそっぽ向きながら照れたように言う。
「こういうの、あさにしか頼めないっていうか。良い?」
あ、呼び捨て。
今まで志乃の真似で"あさちゃん"呼びだったから呼び捨てがあまりしっくりこなかったけど、吃驚した。
こうやって頼ってくるのは嫌いじゃない。
今まで志乃や、男友達、彩葉のことだってこうやって頼まれてやってきたから。
頼られてるって凄い嬉しいな。
澤もこうやって頼むことが出来て嬉しいし、人に頼んでまで選んでるから、凄い好きなんだろうなって、羨ましさを感じた。
「良いよ!私で良ければだけど。」
「俺3年付き合ってるけど、ちゃんとした誕生日プレゼント渡したことなくて。女子ってどいうのが嬉しい?」
「サナちゃんは何か欲しいとか言ってるの?」
「うーん……」
私の言葉に深く悩む澤。一生懸命思い出してるんだろうけど、出てこない気がした。
私の偏見なんだけど、澤って彼女に"欲しい"って言われたもの覚えてないような気がするんだよね。
もちろん、全てじゃないけど、アホなところがあるからそういうところは忘れてそうな感じがする。
だから彼女もそれは言ってて、澤が覚えてないから彼女も彼女で言わないんだと思った。
「分かった!じゃあ、私のセンスで決めていい?」
「おっ!そうだと嬉しい!」
私が提案すると身体を揺らして、喜んでくれた。
澤ってほんと、可愛いやつだなあって心底思った。
「あ、オススメのアクセサリー屋さんあるけどそことか?」
「お!いいね!サナよくネックレスとかリング?ていうの?そういうの付けてる!」
「じゃあ、丁度いいね!行こう!」
「おう!」
私たちはこうして、澤の彼女のサナちゃんのプレゼントを買うために教室をあとにした。
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